こんばんわ、トーコです。
今日は、司馬遼太郎の『胡蝶の夢』です。
■あらすじ
松本良順は徳川幕府の奥医者の家に養子になった。そこへ佐渡から書生として島倉伊之助が松本家にやってくる。
やがて、良順は長崎にあるポンぺの医学所に入塾し、伊之助とともに長崎へ行く。
長崎で医学を学び終えた良順は、江戸に戻り、幕府の医学所のトップになる。同時に徳川慶喜の主治医になり、不眠に悩んでいた慶喜を救う。
一方、伊之助は学び終える前に事件を起こし、ポンぺの医学所を追い出され、平戸から佐渡へ移動する。
幕末になり、幕府に仕えていた良順は会津にゆき、伊之助は語学塾を開くも、若くして死ぬ。
■作品を読んで
幕末ものって本当に激動ですが、この話は登場人物たちが見事に敵味方に分かれてしまう非常に珍しい物語だなと思います。
良順は幕府の金でポンぺの医学所で修業した身であること、新選組にほれ込み、しまいには総長の近藤勇と義兄弟の仲をもったことから、戊辰戦争では幕府方につきます。
実家の佐藤家や友人の関寛斎も新政府につくなかで、です。
良順自身は新政府にとらえられ、放免ののち、開業医になるも、やがて官に仕え、亡くなります。
この作品で最大の問題児(?)は、伊之助でしょう。
記憶力に関しては悪魔のような男ですが、正直生活力はなく、いじめられ、そのくせ性欲に関してはなかなかの深さと、なんというか物語に出てくるサブキャラとしては、眉唾ものの人物です。
ですが、この話の真の主人公は伊之助だと思います。
書き方に力がこもっています。正直松本良順よりもです。
最後のころけっこう松本良順の書き方がテキトーです。
また、途中から伊之助の才能を認めた男という意味なのか、関寛斎という男も登場します。
彼は明治になると、医者を捨て、北海道の奥地で開拓民になってしまうのですが。
この作品のテーマは、蘭学を学び、医術を学ぶことでもあります。
江戸時代は身分制度により、身分が固定されていました。
身分制の欠点は、身分が固定されることで、特に上位階級に顕著ですが、努力をしなくなることです。
幕末の良順は幕府の中で、医術の世界でたくさんの身分制による弊害を見てきました。
オランダをはじめとした西洋の学問に接する中、平等という概念が広まれば、身分制度が破壊されることをいち早く見抜きました。
また、身分が低いというだけで、優秀な人材が登用されないという現実もありました。
実際にその通りになり、幕府は瓦解し、やがて明治時代が訪れます。
■最後に
時代の閉そく感が漂う中で、精一杯生きてきた男たちの姿があります。
そんな時代に何をなすべきかを常に考え、行動する人たちがたくさんいます。
熱い男たちを描いています。