こんばんわ、トーコです。
今日は、中島京子の「小さいおうち」です。
■あらすじ
タキは山形から上京し、東京で女中として働いていた。
タキはしばらくして、平井家に奉公することになる。
平井家には赤い屋根のモダンな家と、旦那さんと若く美しい奥様と息子さんが
いました。
時は昭和のはじめですが、次第に戦争の色が濃くなったり、ちょっとした恋愛事件が起こりそうになったりします。
最終章はタキが亡くなったあとの現代につながっていきます。
■作品を読んで
この本を読むと、昭和初期サラリーマンが女中を雇えるほどの金持ちだという身分だということに驚きます。
けっこう、当時のサラリーマンって裕福ですね。
この本を読むと昭和初期から戦後までのごく平凡な家庭の暮らしぶりがわかります。
また、後世の人間から見れば、あの戦いでは負けているのにと思うことも、情報統制が行われていたせいか、当時生きていた市井の人々には伝わっていないことがたくさんあるのだなと思いました。
女中だったタキが少しずつ自分の記憶をノートに綴っていく中でジープの話で止まってしまいます。
戦後タキが東京に出ると、赤い屋根の家は戦争で無くなってしまい、空襲により平井夫婦は防空壕の中で亡くなっていました。さらに坊ちゃんの行方は分からぬままでした。
やがてタキが亡くなり、孫にあたる健史がノートを引き継ぎます。
健史は、それから平井家の赤い屋根の家をそのまま模したイタクラ・ショージ記念館を訪ね、そこで坊ちゃんこと平井恭一が存命であることを知ります。
すごい縁ですね。つながりってすごい。
健史は平井恭一に会いに行くために、石川県へと向かいます。
そこで、宛名のない手紙を平井恭一に渡します。が、平井恭一は目が見えないので健史に開封し、読むことを頼みます。
読者が1番わかると思います。ここまで来れば何が書いてあるかということが。
平井恭一にとっての母は、反抗期真っ只中に亡くなってしまったせいか、そこまでの印象はなかったのかもしれません。
さらに母の恋愛事件もひょっとすると勘付いていたのだと思います。
それも良い印象を持てなかった原因の1つかもしれません。
それにしても、このシーンほど健史と恭一という当事者たちよりも、読者の方が事情を知っているので、なんだか不思議な気分になります。
あとがきにも書かれているのですが、実は書いた本人以外誰も文字を見ていないというもう1つの不思議もあります。
■最後に
昭和初期から戦中の一般家庭の風景が見れます。戦中もけっこう平和な風景があったんだなと思えます。
タキにとっての東京は戦前の平井家で過ごした日々でした。
おそらく戦後にはなかったし、2度とあり得ないものだったのでしょう。
ちょっと謎を残す作品です。