こんばんわ、トーコです。
今日は、小長谷正明の「世界を変えたパンデミック」です。
■あらすじ
2020年は新型コロナウイルスとの闘いの1年でした。そして、未だに収束の見通しが立たないまま過ぎています。
しかし、人類の歴史は感染症との闘いの歴史でもありました。さて、一体どんなヒントがあるのでしょうか。
■作品を読んで
これまでにコロナについて様々な観点から論じた本を何冊が紹介していますので、よかったらどうぞ。
268.「パンデミック後、新しい世界が始まる」著:ジャック・アタリ
こちらは、感染症の歴史を紐解きながら今後の経済、医療等についての方策を述べています。
こちらの作品は、パンデミック後の世界の生き方を哲学の観点から紐解き、著者なりの意見を述べています。
さて、本題に戻ります。
人類はこれまでに幾度となく疫病に襲われ、大量の市民が亡くなるなど社会を一変させました。まあ、2021年現在もその渦中でありますが。
まずは、世界史の教科書でも同じみ「黒死病(通称ペスト)」。ペストについてはカミュの「ペスト」が流行りましたね、そういえば。
中世のイタリアはヴェネツィアが最大の交易地でした。交易地ということは、金、銀、財宝や香辛料などの珍しいものとともに、感染症も伝搬しました。
ちなみに、新型コロナウイルスのときはヨーロッパでは北イタリアが最初の感染爆発の地になりましたが。ヴェネツィアも北イタリアですが、少しずれるような気がしますがね。
この黒死病が流行った時、医者という職業が今ほどしっかりとした地位のものではなく、医学の勉強していない人まで医療活動に従事していたので、明確な処置が分からず、助かる人もわずかでした。それゆえ、黒死病=死の病気と言われ続けてきたのでした。
その結果、家族の中で黒死病患者が発生するや初めから家族ではないと言わんばかりに病人の世話をしなくなり、逃げます。
これはボッカッチョの書いた『デカメロン』という作品に記載されています。ちなみに、世界史の授業でおなじみ『デカメロン』の中身は、黒死病を恐れ、別荘に引きこもる貴族が退屈しのぎに語る小噺集なのだそうです。
わー、どんな時代もそんな感じの物語が生み出されているのですね。これ、たまたまですが世界史の教科書に載るくらい有名ですけど。
さらに、ボッカッチョは、街に死体があふれ、人々は働かなくなり、貧乏人が増えた一方で、これを機に儲けた人間もいると非難します。風紀も乱れ、聖職者も酒を飲んだり、色ごとに溺れたのだとか。
社会が非常に荒廃していきます。幸い、現代はまだそこまでの域にはたどりついていません。ふう、良かった。
そして、14世紀でもインフォデミックはありました。当時は罪なきユダヤ人が井戸に投げ込まれたり、怪しいカルト集団が出てきたりということがありました。これは現代と一緒ですね。新型コロナの流行り出したころ、トイレットペーパーがなぜか消えたりしましたしね。
現在でもおなじみの対策である都市封鎖や検疫は黒死病対策の一環として行われたことから来ています。
なんというか、感染症対策の基本は黒死病対策から来ています。しかも基本原理はほぼ一緒。
進化していないあ、という印象があるかもしれませんが、どっちかというと14世紀にはすでに完成していたのですからまあ驚きます。
ただ、ペストの場合は医学があまりにも発達していないので、犠牲者は現代の比ではないくらい多いのですが。
他にも、マラリア、チフス、スペイン風邪、エイズが世界史を変えた感染症として取り上げられています。
マラリアは古代ローマ時代からある病気で、歴代のローマ教皇も罹患し、死に至ることもありました。そして、治療法が見つかった今でも保健医療が整わない、新たなマラリア原虫が見つかるなどの要因で発展途上国を中心に流行しています。
マラリアは年間2億人が感染し、45万人が亡くなる病気です。新型コロナウイルスよりはまだ亡くなる人数が少ないのですが、いずれにしても大変な感染症です。
冷静に考えるとそうなのですが、改めてマラリアについて知ると、そういえばこの病気も日本ではあまり騒がれていないだけであって、まだまだ流行しているんだったなあ、と思わずにはいられません。
スペイン風邪も当時ものすごく猛威を振るっています。当時の人口は約5600万人だったそうですが、その半分の2380万人がスペイン風邪に罹り、38万人が亡くなっています。
2人に1人が罹るって恐ろしや…。みんな寝込んでしまい、学校や軍隊はおろか鉄道も動かず、経済が全く回らなかったそうです。そうでしょうね、こりゃ。繁盛していたのは、火葬場だけだったとか。いやな話ですね。
しかし、一方で感染症に立ち向かった人々が数多くいます。後半の第2部は、感染症へ立ち向かった偉人たちについてまとめています。
例えば、天然痘。日本でも奈良時代からある病気でしたが、種痘をすることで防ぐことができることがわかってからは積極的に種痘を行い、ついには根絶しました。
なお、今でも天然痘ウイルスを使った生物兵器があるとか、ないとかが噂されています。一応天然痘ワクチンが備蓄されているらしいのですが、果たして万が一流行した時にきちんとワクチンはいきわたるのやら。
今回の1件で思ったのですが、医学の基礎研究に対して予算をつけなさ過ぎた気がします。国産のワクチンが未だになく、外国製のワクチンを輸入するしか道がないのですから。
しかも、このワクチンは全世界から購入希望が殺到しているのです。ワクチンも培養に失敗したりすることがままあるらしいので、供給は遅れ気味なのだとか。天然痘が日本で流行らないことと、天然痘ワクチンが日本にあることを心から祈ります。
他にも、壊血病、脚気、ペニシリンの誕生など、病気の解決に向かう偉大な歴史が綴られます。
感染症との闘いはこれまで幾度となく繰り広げられました。私たちは心の底からこう思っています。
新型コロナウイルスに効く有効なワクチンの登場と罹患した時の特効薬があれば、きっと世界は落ち着くさ、と。
それは、歴史上幾度となく感染症との闘いが繰り広げられましたが、どの感染症もやがてワクチンや有効な薬が開発され、普及することで克服することができたからです。
黒死病や天然痘、スペイン風邪と比べてしまえば、新型コロナウイルスはまだかわいいものかもしれません。罹患者の数からみるとですが。
けど、やがて解決します。今世界中の専門の医学者がワクチンや特効薬の研究開発に追われています。
聖武天皇が疫病の撲滅のため奈良に大仏を建立したように、東京に大仏が建立されることはきっとないはずです。
本書で触れられている知識をこのようにして得ることで、解決への一助につながるのです。希望はある。そう思いました。
■最後に
まだまだ猛威を振るっている新型コロナウイルスですが、感染症の歴史を見ても明らかなように、やがて解決策が出てきて、収束します。
そこまでの道のりは長いですが、歴史的な動きを頭に入れておくことで何か私たちを助けてくれる気がします。
感染症もいつかは終わる、と思わずにはいられません。