こんばんわ、トーコです。
今日は、中野信子の『シャーデンフロイデ』です。
シャーデンフロイデ 他人を引きずり下ろす快感 (幻冬舎新書)
■あらすじ
あなたもきっと感じることがあるでしょう。他人の不幸を笑ってしまうことを。そして、そこで快感を感じてしまうこと。
その快感には「シャーデンフロイデ」という名前があるのです。
さて、そのシャーデンフロイデをのぞいてみましょう。
■作品を読んで
いうなれば、「なんか、すごい横文字が並んでいる、1回じゃ覚えられない単語だな」と思い、手に取りました。
幻冬舎新書は、後ろにあらすじが小説かというくらいに書かれているので、読んでみると「まさかこの感情にこんな名前がついてるんか」と突っ込んでました。
まず、「シャーデンフロイデ」とは何でしょうか。作品を開くと最初に書かれています。
誰かが失敗した時に、思わず沸き起こってしまう喜びの感情のことです
これを感じたことのない人はおそらくいないと思います。いたら教えてください。あなたは聖人君子ですか、と叫ばせてください。
「シャーデンフロイデ」と密接にかかわる物質があります。「オキシトシン」という物質です。
「オキシトシン」は俗に言う愛情ホルモンの一種です。ですが、ここ最近の研究で「オキシトシン」は愛情を出す一方、妬み感情も強めてしまう働きがあることが分かってきています。
この時点で、察しの良い方なら気が付くでしょう。なんか、現代社会にある様々な問題が、シャーデンフロイデとオキシトシンで説明できそうなことに。まあ、それは別の話として、先に進みましょう。
オキシトシンはいうなれば、人と人とのつながりを強める物質です。専門的に言うと「愛着を形成する」というもの。
ちなみにですが、愛情がないとヒトは育ちません。ある実験で抱きしめる、撫でる等の愛情に基づく養育行動による刺激を完全に剥奪されて育照られた場合、ヒトでは半数以上の子どもが成人を迎える前に死ぬそうです。
えげつない実験です。ですが、この本の中で登場する実験はかなりえげつないです。まあ、それでいろいろ証明するのだから、ある意味すごい。
実は、毒親のできる仕組みもこれで説明が付きます。察しの良い方なら気が付くという言い方をしたのはこのためです。
母親は子に対する愛着が形成されます。子どもが成長し、だんだん自立していくと同時に親を離れていきます。
そこで、親は時間をかけて成長した喜びを感じ、きちんと受容していけばいいのですが、問題は子どもが成長しても愛着が残り続ける場合です。
原因の一例は、親自体が愛着スタイルが不安定で、ストレスを感じやすく、不安感情を抱えていることにあります。そのため、心の空洞を埋めるために子ども必要としている。
なんだか、ぞっとします。まあ、ありがたいことにトーコの母は毒親ではないので、正常なメカニズムが働いているんだな、と思うのです。
毒親を持ってしまった方へのメッセージもありますので、読んでみてください。なんとなく、展開がわかると思いますので割愛します。
ちなみにですが、嫉妬と妬みは厳密には違いがあるようです。引用します。
嫉妬が、自分が持っている何かを奪いにやってくるかもしれない可能性を持つ人を排除したい、というネガティブ感情であるのに対し、妬みは、自分よりも上位の何かを持っている人に対して、その差異を解消したいというネガティブ感情です。
どうやら、差異のことを妬みというようです。しかも、差異の解消法によって、良性妬みと悪性妬みと分けられます。
良性妬みは、自分が成長する原動力となるので、むしろプラスです。悪性妬みは、相手を引きずり降ろして、自分以下にしてやれという感情です。
さらに言えば、憧れは、妬みを感じた相手が実は相当の努力家だったと感じるときに出てくる感情のようです。
うわー、つながった。憧れとシャーデンフロイデは紙一重。
でも、負の感情であるシャーデンフロイデをできることなら感じずにいたい。ですが、人類の有史以降ずーっとあり続けています。けど、そこになんか意味がある。
しかも、この感情から芸能人の不倫ニュースのバッシング、Twitterでの炎上、成功者へのバッシングなど様々な出来事が引き起こされています。芸能人の不倫に至っては、1たび報道されるや、シャーデンフロイデが爆発炎上し、とどまることを知りません。
そこには、不謹慎というお題目の元攻撃をしていたり、そこからシャーデンフロイデが出ているのだろうと分析します。
これを証明するべく、有名な実験例が示されます。なんというか、脳科学って心理学と結構つながっていたりするのでしょうか。
驚きなのは、日本人はセロトニンが少ない国民性のようです。セロトニンが少ない=不安を抱きやすいことを表します。
これは、先祖代々受け継がれたものなので、どうしようもないのですが。これでは、この先の世の中生きられるのやら。
最終章で愛と正義のためにリンチ事件やはてまた戦争が起こった歴史とその時の心理状態を論じていきます。
そこで、不寛容性が遠い祖先の時代から脈々と受け継がれている生存戦略で、オキシトシンによって不寛容性が保持されています。
つまり、愛が不寛容を裏打ちし、不寛容が人間社会を強固にしているのです。良かれと思ってやっている行為が、受け取られ方によっては制裁を受けている状態になっているのです。
愛にはよい部分もあるのですが、闇の部分もあるようです。このメカニズムは知っておいたほうがいいです。
ものすごく駆け足で説明させていただきました。
■最後に
人類の有史以来保持しているシャーデンフロイデという感情から、最近の不倫バッシング、Twitter炎上を引き合いに、シャーデンフロイデをわかりやすく解説しています。
かなり表現も柔らかいため、非常に理解しやすいです。これは、本当に知っておいて損はないです。
感情との付き合い方が変わります。
[…] あの、1つ前に紹介した275.「シャーデンフロイデ」でも触れましたが、確かに愛情がなければ子供は育ちませんよ。でも、それってちゃんとオキシトシン出てますかね…。 […]