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【愛のカタチ】377.『1ポンドの悲しみ』著:石田衣良

投稿日:4月 25, 2022 更新日:

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こんばんわ、トーコです。

今日は、石田衣良の『1ポンドの悲しみ』です。

 

■あらすじ

ここには、10作の恋愛小説が詰まっています。それぞれの愛のカタチ、時には裏切り等々あることでしょう。

さて、いい話を見つけることができるでしょうかね。

 

■作品を読んで

意外や意外なのですが、石田衣良作品当ブログで紹介するのは初めてです。350冊オーバーでそれ言うか、と思いますが。

しかも、まさかの恋愛小説と来ましたか…。他のジャンルの作品もあるのに…。

それは、置いといて。作品紹介に移りましょう。

2本目の「誰かのウエディング」。

中台歩は32歳の独身男性。男性の初婚年齢をわずかに超えたところで、今のところ結婚願望はゼロ。

ある休日、同僚の結婚式に呼ばれ、退屈そうにしていました。結婚式の値段を聞いたらますますげんなりしていました。

そんな時に、黒のタイトスカートのスーツを着た小柄の女性が、マイクを使ってキビキビと動いてました。

歩は彼女の様子を見て気になります。披露宴の余興が下品ですみませんと彼女に言うと、「いえ。」と彼女の意志で笑う笑顔に惹かれます。

さらに、歩の後輩がウエイトレスをナンパし、スーツの女性に迷惑をかけたことをお詫びします。その時に連絡先を書いた名刺を彼女に渡します。

しばらくして、女性の方から歩に連絡が来ます。女の名前は染谷由紀で、夜に西新宿で待ち合わせます。まずは和食店でいただきます。

由紀は事務職だったけど、転職し悲願のウエディングプランナーとして働いています。

仕事もすごくやりがいがあるのですが、土日に休みが取れず、仕事中もしゃべるなと言われていることから、男性と全く縁がない状態が続いてしまいます。

実際に由紀も仕事は好きだけど、先輩たちのようにきつい化粧で、女子校の校長先生のように顔が険しくなるのは嫌だと言います。

というか、誰かのウエディングの引き換えに、自分の幸せに使う時間がないという結構矛盾した状況を歩に吐露します。

歩はまず夢見ていた仕事につくことの意味がよくわかりません。思い返してみれば、流れるままにいつの間にやら営業の仕事している。

さらに、ウエディングプランナーの世界が全く想像できません。てきぱき動く女性たちにこんな悩みがあったのか…、と驚きます。

というのも、歩は5年前に結婚式を挙げそうになったからで、現実には相手に逃げられたので、結婚式はキャンセルになり、その後の処理も大変でした、という苦い思い出がありました。

歩にとっての結婚式は、その間にベルトコンベアに乗って夫婦ができあがると思っていましたが、由紀の話を聞いて結婚式の中にたくさんの気持ちが込められていることを理解します。

既に2人とも酔いが回り始めていますが、歩は「これからも会わないか」と由紀に言います。

由紀は会うのは暗くなってからで、土日には会えないけどいいかと歩に尋ねます。歩はそれでも大丈夫と言います。

西新宿の高層ビルの間で、2人はちょっとロマンティックな話をしています。星はあんまり見えないけど、なにやら恋の予感がしてきます。

今では30歳を超えても普通にあるぞ、という感覚ですが、書かれた当時はそんなに多くはないのでしょうかね。

とはいえ、この作品は30歳をちょっと超えた主人公たちが登場します。先ほどの由紀も30歳になりました。

仕事もそれなりに面白く、自分の生活やリズムがあり、何より相手にすべてを合わせることは出来ない、という譲れないものはある。

なんだか劇的にロマンティックな現場ではない。いたって普通の日常の一コマの恋愛。

いいな、そんなものがあってほしいわ。恋愛って、きっとそれくらいでいいはずだから。

というか、著者もあとがきでこう書いています。

さすがに両手の指の倍というと、ぼくのとぼしい実体験ではまかないきれるものではありません。

そこで、どこかで女性と相席するたびに、こうたずねることになりました。

「あの、今までの恋のなかで、これはおもしろいということはありませんでしたか」

そういう場合、反応は決まっています。自分にはドラマみたいな劇的な経験はない。最初は必ず否定するのです。でも、すこししゃべって、ほぐれてくると決まってこう続けます。ぜんぜん普通でつまらない話だけど、実はこんな恋がしたことがある。

ぼくは万年筆で紙ナプキンにメモをとりながら、心のなかでは考えています。その「普通」が一番おもしろいんだ。劇的な恋なんて、つまらない。

意外や意外なコメント。ですが、前作『スローグッドバイ』と合わせると20作の恋愛小説を書いています。なので、両手の倍。

まあ、冷静に考えると20作すべて実体験なら、どんだけ恋愛してんだこの人というツッコミも出来なくはない。

出版当時高校生で、妙にモテる高校生の同期が読んでいるのを見て覚えていました。

それから約15年。「普通」の恋愛を描いているから、今でもあり続けるのかな、と思います。

劇的な恋がないからこそ肩ひじ張らずに読めるし、これは意外と男性でも読んでほしいな、と思います。どんな感想が聞けるんだろう。

この作品は、30代前半の恋を主に描いています。当時はまだ30代後半の恋を書く準備ができていない、と書かれていますが、現在に至るまでにもっと上の年代の恋を描いたいくつか作品を残しています。

最後に本編に戻ります。トーコの1番のおすすめは「1ポンドの悲しみ」です。

この作品は、遠距離恋愛をする男女が1か月ぶりの逢瀬を楽しみ、味わいます。会いたかったとお互いの気持ちが昂り、興奮しベッドでお互いを味わいます。

それから別れの時間を惜しむようになり、別れの瞬間の悲しみを想います。会えた時の喜びや快楽と同じ大きさの悲しみがあると2人は想います。

恋愛の喜びと切なさが1番わかる作品な気がします。なんだか、恋愛っていいんだなという気持ちにさせてくれる作品でもあります。

 

■最後に

ドラマチックではない「普通」の恋が詰まっています。

30代前半という恋をするには中途半端な年齢ですが、恋愛っていいもんだなと思わせてくれる恋があります。

 

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