こんにちは、トーコです。
今日は、辻村深月の『東京會舘とわたし』です。
■あらすじ
東京會舘という建物はご存知でしょうか。
この建物は大正11年に創業し、その翌年の関東大震災に耐え、戦時中は大政翼賛会の本部、戦後はGHQに接収され、戦後しばらくしてから返還されと様々な歴史を刻んだ建物です。
昭和46年に1度目の建て替えを行うも、建物の老朽化に伴い平成27年で営業は終了し、現在建て替え工事が進んでいます。
ここではやってくる人も、働く人も様々な思いをもっています。
東京會舘のもつ建物の記憶を描いています。
■作品を読んで
なんというか、優しさであふれている作品です。
この作品の真の主人公は建物なんだなと最後になって思いました。
東京會舘とそれにゆかりのある人たちの思い出や想いがあふれています。
中には家族4世代で結婚式を行った人、夫婦それぞれクッキングスクールに通ったり、旅行や記念日に訪れたり。
訪れる人の大切な日を東京會舘は見守っていたんだなと思います。
また、東京會舘で働く従業員たちも様々なドラマを持っています。
さらに言うと、登場する従業員たちも年月を飛び越えて登場します。
なんだか、「あらこの方偉くなったんだね、年取ったのね」と心の中でつぶやくトーコがいます。
直木賞の受賞の章はきっと著者の経験が投影されているんだと思います。
けっこうリアルに伝わってきます。それから東京會舘について書きたいと話すところもおそらく著者の想いを投影していると思います。
90年以上の歴史がある建物でたくさんのドラマが繰り広げられていたようです。
また、東京會舘の従業員たちの言葉もなかなかです。
客が何を必要としているのか、そのためには何が必要かをとことん考え抜く、伝説のバーテンダーの若かりし頃。
あがり症の新人ボーイがある大物歌手の普段の姿を見て、決してお客様やサービスの仕事に”慣れる”ことをやめようと。
仕事への姿勢に純粋に尊敬します。なんというか、見習いたいです。
長年仕事をしているせいか慣れ切ってしまってただぼーっと仕事をしてもこなせるかもしれません。
けれど、ただ漫然とこなすのではなく、どうすれは客の要求にこたえられるのかを徹底的に考え抜くというのはなかなかできないことですが、トーコもそんなプロになりたいなと思うのでした。
■最後に
東京會舘は、その長い歴史のなかで、訪れる人の、従業員の様々な出来事や想いを優しく見守っていました。
この作品はあくまで建物が主人公です。東京會舘が人々の思い出を優しく、いつくしむように見守っていました。
それが建物の持つ歴史でもあります。
すごく優しい気持ちになる本です。
ちなみにですが、東京會舘は平成30年にリニューアルオープンされるそうです。
これからも様々な人を優しく見守ってほしいなと思いました。