こんばんわ、トーコです。
今日は、朝井リョウの『何様』です。
■あらすじ
「何者」で出てきたあの登場人物は、今どうしているのだろう。
あの登場人物の過去は、出会いは、なぜこうなったのか。
「何者」から発生したスピンオフ作品です。
■作品を読んで
はっきり言いますと、トーコはまだ「何者」を読んだことがありません。
就活を体験したことのある世代なのか、あまりにも生々しい感じを小説を通して思い出したくないので。
いつか自分と向き合う覚悟ができた時に読もうかと思います。
しかしまあ、文庫版の解説にも書かれていたのですが、この作品に登場する人物たちを笑うことができないです。
こうやってみんなみんな生きている。必死にもがいている。
それは私たち自身の姿にも重なるから、登場人物たちを笑ってしまったら自分を否定してしまうことになるんだろうな、と。
一番登場人物の中で近さを感じたのは、夕子という女子生徒ですかね。
彼女は神谷光太郎の高校時代の同級生です。おそらくですが、「何者」を読んでいる方は光太郎についてよりわかっているかと思います。
トーコはこの短編を読んで、夕子という女の子が1番強いなぁと思います。
彼女は、高校卒業後、学校で1人受かるかどうかというアメリカの大学で勉強することを目標としていました。
でも、彼女は光太郎のように夢を公言しませんでした。たった「ひとり」になれなかったときのかっこ悪さや恥ずかしさがあり、誰にも言わず1人で黙々と勉強していました。
その気持ちよくわかります。
実は結果なんて他人はどうでもいいけど、本人にとっては言った手前叶えられなかったという思いがあるわけです。
しかも他人が思いのほか気にしていないことを理解するまでに、10代のころから5年以上かかるのですがね。
光太郎はこう思います。
夕子さんの夢だけが、本物だと思った。
誰にも言わないで、自分の中で大切に育て上げて、努力を続けた夕子さんの夢が本物だと思った。
あまりにも本気の夢を、夕子はかなえようと努力し続けていたことを、光太郎は夕子の卒業文集から知ります。
その姿は、光太郎の夢や未来よりも圧倒するものがありました。
夕子は叶わないかもしれないけど、どうしても叶えたい夢に向かって歩いていたのです。
その姿は、まぶしく映ります。さて、この夕子さん無事に夢がかなったのでしょうか。
なんだか、はっとしたのがこの言葉。
仕事ができる能力は、決して、わかりやすいくない。だけど、採用ホームページやあらゆる雑誌などでわかりやすく表現されている社会人に就活生は皆、わかりやすい言葉を纏うようになる。
なんか、これ懐かしいです。
履歴書に何とかして、自分はこんなことができるということを書き連ねないといけなくて、どんなことができるかをひねり出す作業をやってましたわ。
でも、今でも仕事ができる能力の明確な定義は見つけていないです。
やっぱり、わからないんですよね。明確な基準はないし。どんなに努力してもできているかなんてわかりはしないんです。
ひょっとしたら、履歴書に書けるほどではない地味ーな部分だったりするのかもしれません。
それでも、信じてくれる人がいること、自分の生み出すものが誰か人届いてくれること。
できる能力なんてものに社会人になってから踊らされてないし、就活生も職が決まったらきっと忘れることでしょう。
ま、ひょっとするとそんな程度のものかもしれないですね。
■最後に
映画にもなった「何者」のスピンオフ作品です。
とはいえ、あまり「何者」の話を分かっていない人も十分楽しめます。
はっとするような言葉や、就活を経験した世代ではよくある話などが書かれています。
みんな必死にもがいています。
[…] 15.『少女たちは卒業しない』、179.『何様』、224.『死にがいを求めて生きているの』 […]