こんばんわ、トーコです。
100冊までやってきました。まだまだ続きます。今後ともよろしくお願いいたします。
今日は、桜木紫乃の『砂上』です。
■あらすじ
令央は作家を目指しているも、それだけでは全く生活できず、元夫からの慰謝料とビストロのアルバイトで食いつないでいた。
そんなある日、編集者の小川乙三に出会う。彼女は令央に問います。何をしたいのかと。
それから令央は長編小説を書くため、蓋をしていた過去を直視する。
■作品を読んで
この本を読んでわかったことは、小説の書き方がなんとなくわかります。
なんとなくという言葉を入れたのは、おそらく小説の書き方はこれがすべてではないからです。
例えば、1つの小説での視点の数。50枚なら視点が2つだとダメらしい。プラス3人称で書くこと。物語は安定しないそうです。
そして、文章で景色を動かすこと。確かに、この力の差が小説の色をより一層変えていきます。表現とともに、登場人物の心情も描いたら、なおのことすごい。
なるほどな、と感心してしまいます。
それにしても、のっけから乙三の指摘は令央にグサッと刺すものがあります。同時に乙三がきちんと令央の投稿した原稿にきちんと目を通していたことに驚きですが。
この出会いをきっかけに令央はきちんと小説を書くことを決心しますが、乙三との出会いは最初から何かに向き合わないといけないという一種の脅迫に近い圧迫感があります。
その雰囲気が読者にも伝わるのですから、相当の表現力。
令央の書く小説のテーマは母と娘、その娘が産んだ娘を母の娘として育てるという話。
実はこれ、令央の実話。母が死んで、その秘密を墓場まで持って行ったが、小説を書くにあたって現実に向き合わなければならなりません。令央の人生、他人任せでした。
嘘をつくためには、真実と現実が必要で、書き手が傷つかない小説はないのだ、と乙三に突き付けられたのですから。
それにしてもすごいのは、令央の娘の父親の話はたったの2行で済んでいます。
びっくりするほどあっさり。それもそのはず、本筋とは関係ないですからね。
たったの2行でも別な話が書けそうですが。
令央は小説を書きながらも、元夫からの慰謝料が減り生活が苦しくなっていきます。
過去と現在、ともに事実に向き合わなければならない状況です。
が、令央は両方とも乗り越え、小説を書くネタを仕入れていきます。
強くなりましたねえ。覚悟がどんどん磨かれてきました。
■最後に
小説ってこんな風に書かれているんだな、となんとなくわかります。
すごく難しい作業なんだなということが、よくわかります。
1人の女が事実に向き合いながら覚悟を決めていく過程は、鬼気迫るものがあります。
この本、けっこう迫力があります。
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