こんばんは、トーコです。
今日は、柚木麻子の『ナイルパーチの女子会』です。
■あらすじ
栄利子は商社に正社員として勤めるOLである。彼女の日課はおひょうという女性の書くブログを見ること。
翔子はブログを書く平凡な主婦。そんなある日翔子は栄利子と出会う。
■作品を読んで
一言で言うなら、読み進めるのが怖くなる作品です。
トーコはちょうど電車移動の最中に読んでいましたが、作品の中盤で読むのを断念しようとし、もう1度考えて再び読み始めました。
女子同士の人間関係に苦しんだ方ならけっこう身につまされます。というか心理的に結構来ます。
それはさておいて、タイトルにあるナイルパーチとは食用魚だそうですが、生態系を壊してしまうほどの凶暴性を持つ魚です。
栄利子は表面上は問題のないように見えますが、同僚の男と寝たことからその婚約者の派遣社員にとんでもない約束をさせられます。
そこからおかしくなったかのように見えますが、家庭や栄利子自身にも問題があったので、なんというか、栄利子自身が精神的に変調をきたします。
その栄利子の変調の影響を受けたのが翔子でした。友達といいつつも翔子は栄利子との距離を取れないまま翔子は栄利子から離れます。
翔子も有名ブロガーに同じことをするのだから何の輪廻?と突っ込みたくなります。
女同士の友情って正直に言えば、まあめんどくさいです。
余談ですがトーコは、小学生のころからあの女子同士のめんどくさいのが無理で適応ができなかったので。中学生からは逆にまあ1人でもいいか、と思っていたら友人ができました。
大人になってまで女子会だとか言うなら、付き合いが嫌いなので、お金を払いたくないし、そんな時間があるなら本読みたい。
女子会が開かれる様を見て、栄利子の同僚の男はめんどくさいと言います。その通りと児玉清さん風に言いたいです。
まあ、1言で言うなら皆さん承認されたいんでしょうね。栄利子も翔子も。ブログというツールを通して。なんか、現代社会の闇を突っついています。
でも、承認するのは友情ではなくて自分自身。居場所は自分で作り、自分で守るもの。
友達の作り方は誰も教えません。私も友達との距離が取れなくて苦しんだ一人。
でも、翔子は終盤で気が付きます。
仕掛けられた競争から逃げることは可能なのだ。挑発されても、くるりと背中を向けて、目の前の作業に没頭することはいつだって出来るのだ。どんなに弱くても、何も持たなくても、たとえたった一人でも。
多分翔子の思ったことを中学生のトーコは実行できたから、今がきっとあるのでしょう。
ああ、よかった。
それよりも、1番ナイルバーチというなら男を寝取られた派遣社員の真織という女性でしょうか。
女子としても華やかな一面を持ちつつ、嫌いなやつには徹底的に攻撃するまさにナイルバーチのような方。うん、職場にそんなのがいたらさっさと手懐けたいところ。
こんなの攻撃側に立たれたらトーコはやってられません。職場からうまいこと追い出してもらわなきゃ。
結婚というカードがあっても、結局気に入らないやつは追い出そうとするのですから、豹変ぶりはまあすごい。というか、引く。
この人間的なリアリティもさることながら、登場人物たちの背負う事情が現代の日本によくあることなので、またリアリティ度が高くなる。
そんな怖さを持つ作品ですが、読んだ後は読み切ってよかったです。少しは希望の片鱗が見えてきたので。
友達ができなくても、ぬくもりのある場所を見つけられたのがせめてものの救いです。
■最後に
女子の友情の闇を現代社会でもある問題と合わせて描いているので、かなりリアリティがあります。
かつて苦しんだ人も今苦しんでいる人もきっと読めば共感か怖さを感じます。
また女子について知りたい方もこれがすべてではないですが、一読をおススメします。
[…] 1位 141.「ナイルパーチの女子会」著:柚木麻子 […]