こんばんわ、トーコです。
今日は、赤川次郎の『ふたり』です。
■あらすじ
実加には姉がいた。姉は高校2年生の時に事故で亡くなりました。しかし、なぜか姉の声が実加だけには聞こえていました。
だんだん姉の年齢に近づき、追い越してしまう。そうなったら、一体どうなるんだろう…。
■作品を読んで
赤川次郎作品を紹介するのは、これが初です。400冊までたどり着いてやっとかよ、って言われそうですが。
トーコの母曰く、「赤川次郎作品は割と簡単に気軽に読めるんだよね。三毛猫ホームズとか」と評しております。
おそらく、トーコの母は、出版された当時ちょうど中学生か高校生くらいでどストライクの世代だからでしょうね。今でいうところのラノベ感覚で読んでいたのだと思います。
赤川次郎は、「三毛猫ホームズシリーズ」はもちろん、「ふたり」、「セーラー服と機関銃」やちょっと前に話題になった「午前0時の忘れもの」などなど、著作はかなり多いです。
というのも、Wikipediaの情報だと、多い年で年に20作以上執筆していたようで、作家生活30年を迎えるころには480作品生み出されていたとか。年平均16作生み出されています。どうなってんの…。
本作品は大林宣彦監督により映像化されています。なんでもドラマを作ってから映画も作ったとか。
ドラマに大林宣彦監督、キャストもすごく豪華で、音楽はまさかの久石譲。気合の入れ方が違う…。さらにのちにテレビ朝日でもドラマ化されています。キャストのなかに麻薬取締法違反で逮捕されていた方いましたけどね…。
長く語り過ぎたので、中身に行きましょう。
3歳年上の姉の千津子は、勉強も運動もでき、演劇部の発表ではいつも主役で美人という、家族も自慢の娘でした。
対して中学2年生の実加は姉の優秀さを恨んだことはないですが、何かと比較されるのはちょっと気になるお年頃です。
とまあ、姉妹仲良くやっていました。しかも2人とも同じ学校に通っていました。複雑ですわね、優秀なお姉さんがいると。
ある日、いつも通り2人仲良く投稿していた時のこと。千津子は「忘れ物をしたから家戻る」と言って、実加と別れます。
ところが、猛スピードで走るオートバイを避けようとしたトレーラーが横転し、すごい音を立てます。実加が駆けつけると、千津子は下敷きになっていました。
死を悟った千津子は実加にこういいます。
私がいなくなったら、きっとお母さん、しばらくは立ち直れないわ。あんたが、しっかりしなきゃだめ。分った?ーあんたはね、私なんかより、ずっとずっと才能のある子なのよ。本当よ。私はただ、器用で、目立つだけ。でもあんたは、もっともっと底のほうで光ってるものを持ってる…
(中略)
いい?自信を持つのよ。自分の生き方に。あんたの人生なのよ。先生や、お父さんやお母さんが何と言っても。迷ってはだめ。ーしくじることを怖がらないで。あんたが、自信を持っていれば、誰が笑ったって、構やしないわ。
死期が近い高校生が妹に言うセリフなのだろうか、という疑問はありますが。
とはいえ、千津子姉さんは妹の本来の姿を妹以上に見抜いていたようです。さらに、お母さんはしばらくは立ち直れないことも予見しています。
この後、お母さんはもともと低血圧で丈夫な体質ではないようですが、千津子が亡くなったことで精神的にもさらに弱ってしまいます。
実加は親友の長谷部真子の支えや助けを得ながら、なんとか日常に戻っていきます。
そんなある日、ピアノの先生の所へ行く途中に男に襲われます。間一髪のところで、助かります。
男に殴られそうになった時に、姉千津子の声が聞こえてきます。石をとって殴りなさい、と導かれます。それから、守護霊のごとく千津子は実加のもとに居続けます。
姉の初恋を知ったり、親友真子のお父さんがなくなったり、実加の初恋、クラスメートの父が蒸発してしまい学校に通えなくかもしれない事態に陥った子…。実加の中学校卒業までには様々な事件が続きましたが、卒業証書をもらった時、親子ともども無事に迎えられ、ほっとします。
高校生になり、実加も演劇部に入部します。部長からは、秋の文化祭のミュージカルの主役に実加を抜擢します。実加は演劇経験がないため、非常に戸惑うも、引き受けます。
両親も大喜びです。しかし、同時に父が札幌に2年ほど単身赴任することになっていました。母と実加の2人暮らし(幽霊千津子はいますけど)です。
実加もミュージカルの主役のため猛練習していますが、留守中の母親に嫌がらせの電話をかけた演劇部員がおり、そのせいで母親が入院し、実加も泣く泣く主役を降りることにしました。
文化祭は道具係を引き受けるも、母親は入院し、1人で暮らさないといけないので、慣れない家事に大忙しの状態でした。
その部員は、2年生で実加の代役をした人間だったことが判明しますが、とんでもないやつはいつの世にもいますね…。
しかし、とりあえずのバランスをとっていた家族関係もここで亀裂が入ります。
なんと、札幌に単身赴任中の父親が内田祐子という会社の同僚と浮気をしていたことが発覚し、家にまで押しかけられてしまいます。
実加はそんな父を許すことができず、言い争いになり、カッとなって包丁で父を刺そうとします。姉の千津子は必死に止めようとしますが、聞きません。あげくには、「お姉ちゃんなんか、どこかへいっちゃえ!」と言ってしまいました。
実加は結局父を刺さずに済みました。母が父と無事に仲直りしたように見えたからです。
けれども、姉千津子は実加のもとには戻ってきませんでした。「どこかへいっちゃえ」といったのがまずかったのか、それとも実加の成長を見届けたのか、そこらの描写ははっきりしていませんが。
そりゃ、姉は父親が浮気したという問題を通りぬけずに済みましたからね。
物語の最後は、実加が姉の千津子とともに過ごした日々を回想する形で日記帳に記し始めます。これで、この物語は終了します。
この作品には続きがあります。しかも2022年に続編の文庫本が出ました。
なんと、実加はこの後かなり大変な状況になっています。気になる方はぜひ読んでみてください。トーコも必ず読みます。
■最後に
事故で亡くなった姉と一緒に過ごす奇妙な同居生活の日々を描いています。
その中で学校生活や家庭内のごたごたなど、実加も少しずつ成長していきます。