こんばんわ、トーコです。
今回は、ヤマザキマリの『ヴィオラ母さん』です。
ヴィオラ母さん ヤマザキマリを育てた破天荒母・リョウコ (文春e-book)
■あらすじ
ヤマザキ作品にしばしば登場する「リョウコ」なる人物は、ヤマザキの母のことである。
このお母さま、オーケストラのヴィオラ奏者になるために勘当同然に北海道に渡り、オーケストラの指揮者と結婚するも死別され、シングルマザーとなる。
それからは、育児、家事、仕事をすべて1人でこなしながら生きていく。
昭和8年生まれの女性が歩いた道を娘の視点で描いている作品です。
■作品を読んで
読み終わって一言いうなら、なんかすごくたくましすぎる。この時代にしてはぶっ飛んでる。ああびっくり。
母リョウコさんは、女学校から女子大に進み、会計事務所に勤めていました。
そんな時に、札幌で交響楽団ができるということを聞き、居ても立っても居られず、会計事務所を勝手に辞め、札幌に向かいました。
当然ですが、会計事務所を勝手に辞めたことは親も激怒し、半ば勘当状態で家を飛び出したそうです。
著者曰く、著者も17歳でイタリアに旅立ったのですが、その時の心境と同じだったのではないかと推測しています。
新しいオーケストラで1から作りだすという体験に心を躍らせ、不安はあるものの、自分で決めたことなのだからあとはなるようにしかならない。
そう思いながら知り合いのいない札幌に行ったのではないか、と。同じ経験をしているからこその考察です。
それにしても、リョウコさん波乱万丈です。札幌交響楽団で指揮者の男性に恋をし、結婚、その後著者が誕生します。
しかし、その旦那さんに死別し、その後別居前提の再婚をし、妹と再婚相手のお母さん(ハルさん)と一緒に暮らします。
ハルさんが亡くなると、母親不在の家族状態になります。リョウコさんは朝早く出発し、夜遅く帰宅するという生活を送っていたそうです。
なので、なかなか娘の相手をしている時間がなかったのです。それでも、母親の役割をきちんと果たしていた人だと著者は言います。
いつも一緒にいることが愛情をかけていることなのか、と言われればそれは違う。親はあくまで強く生きる人間の手本であるべきだし、手放しでも子供はしっかり育つし、生きていけることを信じていけばいいと思う。
大事なのは、時間的な制限がある中で子供にきちんと無償の愛を注ぐか、なのでしょう。
生まれてきた子供の命をいとおしみ、慈しみ、敬い続けた、それだけでいいようです。
リョウコさんはとにかくやりたいことに生きています。自分が生き甲斐とすることに真っ直ぐ生きた人なのでしょう。
おそらく、40年以上たちましたが、リョウコさんはだいぶ時代を先取りしたのだと思います。
今では働くお母さんが当たり前の世の中になりました。ですが、子育てと本当にやりたい仕事の両立をしながら生きている人って、そんなに多くないと思います。どこかで思いを押さえつけている部分があるのかもしれません。
もっと気楽に考えてもいいのでしょうね。なるようにしかならない。
最後に、すごいエピソードを。著者がフィレンツェで息子を出産し、未婚の母になって帰国したときに言った一言。
「孫の代まではアタシの責任だ」
普通の人じゃねぇ。一般的な家庭はまず、事情聴取からスタートですからね。とにかく、独特で衝撃的なお母さんです。
おしゃれなドレッサーやおいしそうなお弁当はなかったようです。お弁当はジャムサンドだったこともあったりしてます。
著者にとっての身近な大人は、母という前に1人の人間として毅然としていました。
なんだか凄い人です。
■最後に
著者自身も十分波乱万丈ですが、お母さんも負けておりません。
生きることは楽しいし、好きなことをやる、子供を育てると決めたら強くもなれます。
まるで「朝ドラ」のような人生と帯に書かれていますが、本当にその通りの生き方です。
[…] のっけからまた母リョウコさんの登場です。リョウコさんについては、250.「ヴィオラ母さん」で書かれていますので、よかったらどうぞ。 […]