ある読書好きの女子が綴るブック記録

このサイトは年間100冊の本を読む本の虫の女子がこれから読書をしたい人向けに役に立つ情報を提供できればなと思い、発信しているブログです。

エッセイ 人生 実用書

【型破りな生き方】250.『ヴィオラ母さん』著:ヤマザキマリ

投稿日:8月 2, 2020 更新日:

こんばんわ、トーコです。

今回は、ヤマザキマリの『ヴィオラ母さん』です。

ヴィオラ母さん ヤマザキマリを育てた破天荒母・リョウコ (文春e-book)

 

■あらすじ

ヤマザキ作品にしばしば登場する「リョウコ」なる人物は、ヤマザキの母のことである。

このお母さま、オーケストラのヴィオラ奏者になるために勘当同然に北海道に渡り、オーケストラの指揮者と結婚するも死別され、シングルマザーとなる。

それからは、育児、家事、仕事をすべて1人でこなしながら生きていく。

昭和8年生まれの女性が歩いた道を娘の視点で描いている作品です。

 

■作品を読んで

読み終わって一言いうなら、なんかすごくたくましすぎる。この時代にしてはぶっ飛んでる。ああびっくり。

母リョウコさんは、女学校から女子大に進み、会計事務所に勤めていました。

そんな時に、札幌で交響楽団ができるということを聞き、居ても立っても居られず、会計事務所を勝手に辞め、札幌に向かいました。

当然ですが、会計事務所を勝手に辞めたことは親も激怒し、半ば勘当状態で家を飛び出したそうです。

著者曰く、著者も17歳でイタリアに旅立ったのですが、その時の心境と同じだったのではないかと推測しています。

新しいオーケストラで1から作りだすという体験に心を躍らせ、不安はあるものの、自分で決めたことなのだからあとはなるようにしかならない。

そう思いながら知り合いのいない札幌に行ったのではないか、と。同じ経験をしているからこその考察です。

それにしても、リョウコさん波乱万丈です。札幌交響楽団で指揮者の男性に恋をし、結婚、その後著者が誕生します。

しかし、その旦那さんに死別し、その後別居前提の再婚をし、妹と再婚相手のお母さん(ハルさん)と一緒に暮らします。

ハルさんが亡くなると、母親不在の家族状態になります。リョウコさんは朝早く出発し、夜遅く帰宅するという生活を送っていたそうです。

なので、なかなか娘の相手をしている時間がなかったのです。それでも、母親の役割をきちんと果たしていた人だと著者は言います。

いつも一緒にいることが愛情をかけていることなのか、と言われればそれは違う。親はあくまで強く生きる人間の手本であるべきだし、手放しでも子供はしっかり育つし、生きていけることを信じていけばいいと思う。

大事なのは、時間的な制限がある中で子供にきちんと無償の愛を注ぐか、なのでしょう。

生まれてきた子供の命をいとおしみ、慈しみ、敬い続けた、それだけでいいようです。

リョウコさんはとにかくやりたいことに生きています。自分が生き甲斐とすることに真っ直ぐ生きた人なのでしょう。

おそらく、40年以上たちましたが、リョウコさんはだいぶ時代を先取りしたのだと思います。

今では働くお母さんが当たり前の世の中になりました。ですが、子育てと本当にやりたい仕事の両立をしながら生きている人って、そんなに多くないと思います。どこかで思いを押さえつけている部分があるのかもしれません。

もっと気楽に考えてもいいのでしょうね。なるようにしかならない。

最後に、すごいエピソードを。著者がフィレンツェで息子を出産し、未婚の母になって帰国したときに言った一言。

「孫の代まではアタシの責任だ」

普通の人じゃねぇ。一般的な家庭はまず、事情聴取からスタートですからね。とにかく、独特で衝撃的なお母さんです。

おしゃれなドレッサーやおいしそうなお弁当はなかったようです。お弁当はジャムサンドだったこともあったりしてます。

 

著者にとっての身近な大人は、母という前に1人の人間として毅然としていました。

なんだか凄い人です。

 

■最後に

著者自身も十分波乱万丈ですが、お母さんも負けておりません。

生きることは楽しいし、好きなことをやる、子供を育てると決めたら強くもなれます。

まるで「朝ドラ」のような人生と帯に書かれていますが、本当にその通りの生き方です。

 

-エッセイ, 人生, 実用書,

執筆者:


  1. […] のっけからまた母リョウコさんの登場です。リョウコさんについては、250.「ヴィオラ母さん」で書かれていますので、よかったらどうぞ。 […]

comment

関連記事

【一体何者?】380.『シンクタンクとは何か』著:船橋洋一

こんばんわ、トーコです。 今日は、船橋洋一の『シンクタンクとは何か』です。   ■あらすじ 日本には独立系のシンクタンクがほぼない。ひとえに、政策コミュニティのなさもある。 ですが、今後政策 …

【大切なこと】355.『いま君に伝えたいお金の話』著:村上世彰

こんばんわ、トーコです。 今日は、村上世彰の『いま君に伝えたいお金の話』です。     ■あらすじ 2022年度から、高校の家庭科の授業で金融教育が必須になります。それくらいお金の …

【環境について】374.『環境アセスメントとは何か』著:原科幸彦

こんばんわ、トーコです。 今日は、原科幸彦の『環境アセスメントとは何か』です。     ■あらすじ 突然ですが、環境アセスメントと言われて何と答えますか。よくわからないと思います。 法ができ …

【どこへ行くのか】198.『知の果てへの旅』著:マーカス・デュ・ソートイ

こんばんわ、トーコです。 今日は、マーカス・デュ・ソートイの『知の果てへの旅』です。 知の果てへの旅 (新潮クレスト・ブックス)   ■あらすじ 科学はいったいどこまで知りえてしまうのだろう …

【本屋の運営】392.『本屋、はじめました』著:辻山良雄

こんばんわ、トーコです。 今日は、辻山良雄の『本屋、はじめました』です。   ■あらすじ 荻窪に「Title」という本屋さんがあるのをご存知でしょうか。 「Title」を経営している著者は、 …