こんばんは、トーコです。
今日の本は『勝者に報酬はない キリマンジャロの雪』というヘミングウェイ全短編の2巻です。
勝者に報酬はない・キリマンジャロの雪―ヘミングウェイ全短編〈2〉 (新潮文庫) –
■時代背景
この短編が書かれたのは、パリから戻ってきた後の主にキーウエスト時代と呼ばれる1928年から1936年の間です。
ヘミングウェイは釣りに出たり、雨が降ると自宅のプールで泳いで、夜になるとバーで飲んでいたという暮らしだったらしいです。
1933年にはヘミングウェイと当時の妻、親友と一緒にアフリカにサファリに出かけます。
しかし片や世の中は未曾有の世界恐慌。キーウエスト市も破産宣言しているくらい貧しい状態でした。
そんな状態を目の当たりにしたヘミングウェイは苦しかったでしょうね。
サファリに行けたのも、家をかえたのも、当時の妻の叔父が大富豪で、援助してくれたのだからかもしれないのですから。
行動は豪快かもしれないが、繊細なヘミングウェイの心に悪影響を与えてたとトーコは考えてます。
なぜ前段でヘミングウェイについて語ったのかというと、サファリに行った後発表された「キリマンジャロの雪」と一緒に収録されている「フランシス・マカンバーの短い幸福な生涯」という作品を読み解くに当たってかなり鍵を握る話かと思うからです。
■取り上げる作品
「キリマンジャロの雪」は、屈折した愛情表現をするしがない作家の男とそんな男を愛するお金持ちの女がアフリカに行くも、男の怪我から一気に死が近づき、やがて男は死ぬという作品です。
男は精一杯の強がりをしています。怪我に、女に、過去に。
なんとなくですが、ヘミングウェイの当時の状況を暗に表しているのかも。
お金持ちの世界に入ることでだんだん自分が作家として書けなくなったりというくだりは本人の思い込みのような気がしてならないのですが。この先もまだまだ書いてますし。
で、「フランシス・マカンバー」は、これもサファリに帰ってきてから発表された作品。
やはり、ヘミングウェイの旅のように男、妻、ガイドたちを軸に展開されていく。
特にラストで「俺は勇敢になったんだ。」という男に、妻がなにを今更というセリフは痛快です。男と女の違いをまざまざと見せつけてきます。
同時に、勇気は一体どういうふうに生まれるのかも分かります。
本当のラストで一体何が原因でマカンバーは死ぬのか、解釈はそれぞれなため様々な憶測が飛び交っています。
他にもおもしろく、奥の深い短編がたくさんあります。
長くなりました。ここまでにします。
■最後に
ヘミングウェイの書いた短編小説がまとめられた作品です。
長編とは違った姿が若干垣間見ることができるかもしれません。
なんといっても、この作品からは作者の姿が1番見えてきます。