ある読書好きの女子が綴るブック記録

このサイトは年間100冊の本を読む本の虫の女子がこれから読書をしたい人向けに役に立つ情報を提供できればなと思い、発信しているブログです。

古典 外国小説 小説 文庫本

【勇気が持てる本】51.『夜間飛行』著:サン・テグジュペリ

投稿日:5月 23, 2017 更新日:

こんばんわ、トーコです。

今日はサン・テグジュペリの『夜間飛行』です。

夜間飛行 (新潮文庫)

■あらすじ

この本には「夜間飛行」と「南方郵便機」という2つの作品が収録されています。

「夜間飛行」は、飛行機による郵便事業がまだまだ危険だったころに夜間飛行のパイロットとして命を懸けて飛行に挑む男たちの姿を描いています。

「南方郵便機」はサン・テグジュペリの処女作です。

ストーリーは、ベルニスという男は飛行士でした。

彼にはエルランとその妻ジュヌヴィエーヴという友人がいた。

また、ジュヌヴィエーヴはベルニスにとって初恋の人で、彼女に対する想いはいまだに胸に秘めていました。かなうことはないのですが。

でも結末はどちらの作品も衝撃的です。

■作品を読んで

この作品を手に取ったのは10年以上前、当時トーコは中学生でした。

なぜ手に取ったか。

それは中学校の調べもののテーマが確か「郵便の歴史」で、この「夜間飛行」という作品は郵便の歴史において重要な証言をしているということを知ったからです。

ですが、中学生には飛行機による郵便事業が恐ろしく命がけの大事業だったことと、この業務に従事する男たちの姿がとてもかっこよかったことしかわかりませんでした。

 

時は流れ、就職してから再び手に取りました。

すると、昔わからなかったことも少しはわかるようになったみたいです。

それと同時に、中学生のときに思った漠然とした感想は正しいことがわかりました。

「夜間飛行」では、リヴィエールという上司がとにかくかっこいいです。

飛行機で飛ぶことそのものが命がけだった時代、優しく部下に接することもできましたが、自分にも他人にも厳しく律することで、死が間近に迫っているという現実に立ち向かっていたんだと思います。

部下にどこへ飛べと命令しているだけかと思いますが、彼も自分の命と部下の命を預かっているのですから。

1人でけっこう葛藤しています。

そんな中、ファビアンという部下が飛行中に悪天候に遭遇し、命を落としてしまいます。

彼は新婚1か月でした。なんと容赦ない…。

妻にとっては怖いものは彼を奪う「夜」です。つまり、夫の夜間飛行でした。

妻はわかっていました。夫が重要な任務に就いていること、そして家を出るころには夫の心は空に向かっていたことを。

夫婦の描写が終わるときの残された妻の描写は、すでに夫が空に向かっていることと夫の無事を祈っていました。

すごく印象的です。なんとなく妻の思いがひしひしと伝わるような気がします。

ファビアンが死んだと知った時、リヴィエールは「1人にしてほしい」と部下に言います。

何というか、これは推測ですが感情を見られたくなかったし、共有したくもなかったのでしょう。

そして、郵便事業をやめないためにまた前に進むのです。

「南方郵便機」では初恋を忘れなかったベルニスが、その相手であるジュヌヴィエーヴを恋慕っていました。

アフリカに行こうと忘れなかったのですから。

だが、2人でひょんなことから旅行に出かけたときベルニスは気が付いてしまったのです。

ジュヌヴィエーヴは夫であるエルランを愛している。たとえ息子を亡くして悲しみのどん底にいたとしても。

著者の言葉を借りれば、二人がお互いのために作られた二人ではない、ということに気が付いてしまいました。

そんな想いを整理してフライトに臨みます。

でもその前にジュヌヴィエーヴに逢いました。だけど、もうジュヌヴィエーヴの中にはベルニスは見知らぬ男となっていました。

お互いの世界をともに見ることができないと分かったからです。

このフライトでは勇気をもって立ち向かおうとします。ちょっと油断して、心に持たない恐怖が思い浮かぶと勇気を追い出してしまう、と描写します。

ものすごくぎりぎりの場面であることが想像できます。すごく紙一重の場面です。

この物語でもベルニスは飛行機事故で亡くなります。

ただ搭乗者は死に、機体は大破したにもかかわらず、郵便物は無事だったそうです。

なんだろう、この職業意識の高さは…、って関係ないか。

■最後に

この作品の表紙は新潮文庫版だと宮崎駿のによるイラストが描かれています。

トーコ自身はこれがツボだったりします。

飛行機による郵便事業に従事する人の姿を映し出す数少ない本です。

また作品自体はかなりじっくり読む必要があると思います。

人が生死をかけている中で勇気をもって立ち向かうとはどういうことかを熱く、静かに語る作品です。

 

-古典, 外国小説, 小説, 文庫本, ,

執筆者:


comment

関連記事

【効率の良い時間の使い方】255.「なまけもの時間術」著:ひろゆき

こんばんわ、トーコです。 今日は、ひろゆきの「なまけもの時間術」です。 なまけもの時間術 管理社会を生き抜く無敵のセオリー23   ■あらすじ これから世の中少しずつですが、仕事面では成果主 …

【ある男の一生】332.『あの春がゆき この夏がきて』著:乙川優三郎

こんばんわ、トーコです。 今日は、乙川優三郎の『あの春がゆき この夏がきて』です。 あの春がゆき この夏がきて (文芸書)   ■あらすじ 神木は美大生のときに養父が倒れ、再び孤独になった。 …

no image

【開国黎明記】102.『海の祭礼』著:吉村昭

こんばんわ、トーコです。 今日は、吉村昭の『海の祭礼』です。 新装版 海の祭礼 (文春文庫)   ■あらすじ ペリーの来航前、日本に憧れたラナルド・マクドナルドはボートで利尻島に上陸した。 …

【帰ってきたBookガイド】473.『BOOKMARK2』編:金原瑞人、三辺律子

こんばんは、トーコです。 今日は、金原瑞人、三辺律子編集の『BOOKMARK2』です。   ■あらすじ 以前紹介した『BOOKMARK』の完結版です。 今回も翻訳者自ら紹介文を書き、著名な作 …

【大事な話】314.「これからの投資の思考法」著:柴山和久

こんばんわ、トーコです。 今日は、柴山和久の「これからの投資の思考法」です。 元財務官僚が5つの失敗をしてたどり着いた これからの投資の思考法   ■あらすじ 日米の親の総資産額が10倍違う …