こんばんわ、トーコです。
■あらすじ
この本には「夜間飛行」と「南方郵便機」という2つの作品が収録されています。
「夜間飛行」は、飛行機による郵便事業がまだまだ危険だったころに夜間飛行のパイロットとして命を懸けて飛行に挑む男たちの姿を描いています。
「南方郵便機」はサン・テグジュペリの処女作です。
ストーリーは、ベルニスという男は飛行士でした。
彼にはエルランとその妻ジュヌヴィエーヴという友人がいた。
また、ジュヌヴィエーヴはベルニスにとって初恋の人で、彼女に対する想いはいまだに胸に秘めていました。かなうことはないのですが。
でも結末はどちらの作品も衝撃的です。
■作品を読んで
この作品を手に取ったのは10年以上前、当時トーコは中学生でした。
なぜ手に取ったか。
それは中学校の調べもののテーマが確か「郵便の歴史」で、この「夜間飛行」という作品は郵便の歴史において重要な証言をしているということを知ったからです。
ですが、中学生には飛行機による郵便事業が恐ろしく命がけの大事業だったことと、この業務に従事する男たちの姿がとてもかっこよかったことしかわかりませんでした。
時は流れ、就職してから再び手に取りました。
すると、昔わからなかったことも少しはわかるようになったみたいです。
それと同時に、中学生のときに思った漠然とした感想は正しいことがわかりました。
「夜間飛行」では、リヴィエールという上司がとにかくかっこいいです。
飛行機で飛ぶことそのものが命がけだった時代、優しく部下に接することもできましたが、自分にも他人にも厳しく律することで、死が間近に迫っているという現実に立ち向かっていたんだと思います。
部下にどこへ飛べと命令しているだけかと思いますが、彼も自分の命と部下の命を預かっているのですから。
1人でけっこう葛藤しています。
そんな中、ファビアンという部下が飛行中に悪天候に遭遇し、命を落としてしまいます。
彼は新婚1か月でした。なんと容赦ない…。
妻にとっては怖いものは彼を奪う「夜」です。つまり、夫の夜間飛行でした。
妻はわかっていました。夫が重要な任務に就いていること、そして家を出るころには夫の心は空に向かっていたことを。
夫婦の描写が終わるときの残された妻の描写は、すでに夫が空に向かっていることと夫の無事を祈っていました。
すごく印象的です。なんとなく妻の思いがひしひしと伝わるような気がします。
ファビアンが死んだと知った時、リヴィエールは「1人にしてほしい」と部下に言います。
何というか、これは推測ですが感情を見られたくなかったし、共有したくもなかったのでしょう。
そして、郵便事業をやめないためにまた前に進むのです。
「南方郵便機」では初恋を忘れなかったベルニスが、その相手であるジュヌヴィエーヴを恋慕っていました。
アフリカに行こうと忘れなかったのですから。
だが、2人でひょんなことから旅行に出かけたときベルニスは気が付いてしまったのです。
ジュヌヴィエーヴは夫であるエルランを愛している。たとえ息子を亡くして悲しみのどん底にいたとしても。
著者の言葉を借りれば、二人がお互いのために作られた二人ではない、ということに気が付いてしまいました。
そんな想いを整理してフライトに臨みます。
でもその前にジュヌヴィエーヴに逢いました。だけど、もうジュヌヴィエーヴの中にはベルニスは見知らぬ男となっていました。
お互いの世界をともに見ることができないと分かったからです。
このフライトでは勇気をもって立ち向かおうとします。ちょっと油断して、心に持たない恐怖が思い浮かぶと勇気を追い出してしまう、と描写します。
ものすごくぎりぎりの場面であることが想像できます。すごく紙一重の場面です。
この物語でもベルニスは飛行機事故で亡くなります。
ただ搭乗者は死に、機体は大破したにもかかわらず、郵便物は無事だったそうです。
なんだろう、この職業意識の高さは…、って関係ないか。
■最後に
この作品の表紙は新潮文庫版だと宮崎駿のによるイラストが描かれています。
トーコ自身はこれがツボだったりします。
飛行機による郵便事業に従事する人の姿を映し出す数少ない本です。
また作品自体はかなりじっくり読む必要があると思います。
人が生死をかけている中で勇気をもって立ち向かうとはどういうことかを熱く、静かに語る作品です。