こんばんわ、トーコです。
今日は、小池和子の『カエサル』です。
■あらすじ
カエサルは、古代ローマの内戦を終結させた英雄ですが、道半ばで暗殺された方でもあります。
彼が生きた時代背景や政治家として、「ガリア戦記」よりひもといて、新たにまとめています。
■作品を読んで
この作品を手に取ったのは、トーコが古代ローマ大好き人間だからです。教訓が多すぎる古代ローマ時代は、後世の人間から見ても非常に参考になります。
カエサルも非常に有能なモテ男で、しかもちゃんと武勇の面でも実績を残しています。すごい男ですね、タイムマシンがあったらこの人と話してみたい。
この作品は新書1冊で非常にコンパクトにまとめられています。塩野七生の「ローマ人の物語」では、カエサルの話だけで文庫本6冊程度ありましたからね…。
そんなカッコいい男の姿を描いていますので、見ていきましょう。以下は、この作品の構成です。
- 第1章 生い立ちから青年期まで
- 第2章 表舞台への登場
- 第3章 ガッリア総督カエサル
- 第4章 内戦と勝利
- 第5章 文人としてのカエサル
- 最終章 ローマ革命への道
第1章では、カエサル誕生から若年期(前74年頃)までを描いています。
とはいえ、公職についてからは記録がいろいろと残っていますが、若年期は叙述家が残した文章しか情報はありません。なので、歴史的背景と人間関係をもとにひもといていきます。
カエサルが幼年期を送っているころ、当時のローマは、マリウスとスッラという人物たちが抗争を繰り広げており、武力衝突もありました。
幼年期の終わりの16歳ごろに父親を亡くし、翌年にユピテル神官に定められ、4度の執政官を勤めたキンナの娘のコルネーリアを妻に迎えます。
また、同時にカエサルの弁論能力も開花していきます。とはいえ、弁論能力は、比較的若年期で政治家として売り出し中の時の頃についての記述が多いですが。
第2章では、カエサルはいよいよ政治の表舞台へと姿を現わし、執政官に就任するところまでを描いています。
カエサルは、公職歴を1つ1つ積み重ねていきます。まずは、神祇官に選ばれ、軍団副官に選ばれます。ここで、軍団副官は公職の序列としては、財務官の下ですので、意外と高い役職になります。
この間に聞いたことがある方もいらっしゃるかと思いますが、ポンペイユスとクラッススとの政治同盟、第1次三頭政治が結ばれます。
それから、財務官、同時に元老院議員にもなり、高等造営官に就任します。高等造営官は、主にインフラ管理・監督で、役所の土木課みたいなところです。
2年後、ついに大神祇官選挙に当選し、法務官職の選挙にも当選します。大神祇官は選挙で当選すれば、終身です。
さらに、属州での様々な実績を引っさげて執政官選挙に出馬します。本当は、凱旋式をしようとしましたが、敵の妨害に遭い、凱旋式か執政官選挙のどちらか1つを選ぶことを迫られます。結果的に、執政官選挙を選びました。
そうして無事に執政官選挙に当選し、2人選ばれるのですが、ポンペイユスとクラッススの支援のおかげでもう1人の影がかすむくらいの活躍をします。
農地法が制定されてから、ガッリアに進軍します。同時に、命令権という強大な権利を獲得します。
これによって、政治的敵対者から身を守ることができ、ガッリア進軍に集中できます。ガッリアは現在のフランスで、ローマから見ると近い国です。
さらに、ガッリア進軍により、カエサルの財政も安定します。これまでは借金まみれだったからです。
なにより、長期の軍事活動と成功は、武名と忠実な軍隊をもたらします。
第3章は、属州ガッリアに赴任し、将軍としての能力を大いに発揮します。広範囲に遠征をおこなって、ついにはガッリア全土を制覇します。また、成果は伴わなかったが、ゲルマーニア(現ドイツ)、ブリタンニア(現イギリス)にも侵攻しています。
ガッリア制服は7年かかりました。政治的敵対者対策をしなくても権力が保持される命令権があったからこそできた話です。
7年もローマにいなかったら(確か時々ローマには帰ってましたけど)、政治の表舞台から引きづり降ろされていること間違いなしです。
カエサルは、このガッリア進軍を『ガリア戦記』という本にまとめています。この作品は、文学的にもかなり優れています。この作品をもとに、ガッリア進軍をまとめています。
第4章は、内戦についてまとめています。
ガッリア総督として成果を収めたカエサルは、軍隊の支持をバックにした指導者となり、いつの間にかポンペイユスと並ぶ権力者となりました。
そしてつきものの、期限付きの命令権を手放す時には必ず戦いが伴います。そう、それが内戦の原因です。
ポンペイユスと門閥派というカエサルと対立していたグループが手を組みます。しかも、前52年は無政府状態になっていました。政治的闘争から暴力行為に発展し、ついには内戦に突入します。
そう、ルビコン川を渡り、賽は投げられたのです。結果的に、カエサルが勝者となりました。
第5章は、文人としてのカエサルです。有名なところでは、『ガリア戦記』、『内乱記』です。
『ガリア戦記』は全8巻構成で、ガッリア総督の期間を描いています。内容は、基本的に地理的な記述や民族誌的な記述を含んだ、戦争に関する記述が中心で、これが後世にとっても貴重な記録となっています。
カエサルの描き方もかなりうまいので、文学的な価値も非常に高い作品になっています。
『内乱記』は未完の作品です。おそらく、敵も味方も描き方を間違えれば大変なことになると感じたんでしょうね、きっと。
最終章で、カエサルは暗殺されます。実は、内戦終了からわずか1年経過していない頃に暗殺されます。
カエサルの後継者としてオクターウィア―ヌスが指名され、やがてアウグストゥスとして初代ローマ皇帝に就任します。
そこから先は別の物語ですね。
■最後に
新書1冊にカエサルの生涯が描かれています。おそらく、1番コンパクトな本です。
激動の古代ローマ史のターニングポイントが、カエサルの生涯を通してまとめられています。