ある読書好きの女子が綴るブック記録

このサイトは年間100冊の本を読む本の虫の女子がこれから読書をしたい人向けに役に立つ情報を提供できればなと思い、発信しているブログです。

外国小説

【作家の軌跡】230.『タブッキをめぐる九つの断章』著:和田忠彦

投稿日:4月 25, 2020 更新日:

こんばんわ、トーコです。

今日は、和田忠彦の『タブッキをめぐる九つの断章』です。

タブッキをめぐる九つの断章 (境界の文学)

 

■あらすじ

アントニオ・タブッキを巡る旅を翻訳者である著者とともに歩く。

たどり着くのはいつも同じ場所なのかもしれないのだけど。

著者がタブッキについて書いた文書をまとめた作品集。

 

■作品を読んで

本編のまえにアントニオ・タブッキについて。

このブログでも紹介しています。確か、これ。169.「とるにたらないちいさないきちがい」

ちいさないきちがいを巧みに描いています。他にも「インド夜想曲」や「レクイエム」があります。

「インド夜想曲」の翻訳は須賀敦子で、彼女は生前に何冊かのタブッキの著作を訳しています。

須賀敦子が亡くなると本格的にタブッキの作品をほぼ著者が翻訳しています。

とはいえ、須賀敦子が亡くなる以前からタブッキの作品は訳しているようですが。

なので、今日本でタブッキに親しかった人の最たる方といっても過言ではないようです。

 

本編に戻ります。

タブッキと著者の物語は1999年に始まります。著者がポルトガルに行くところからです。

なぜイタリア人であるタブッキが故郷から離れたポルトガルで評価をもらっているのか、を知りたくなったからだそうです。

タブッキはイタリア出身ですが、ポルトガル文学研究者としての顔も持っており、やがてポルトガルに移住します。

しかも、タブッキはポルトガル語で小説を書き綴ります。ポルトガルの詩人ペソアについての作品です。

まさに「越境」の体現者に他ならない、と著者はタブッキを表します。

最初の第一章で述べますが、読者にはなんのこっちゃの方が多い気がします。

これがタブッキの風景の旅へのいざないです。

読み進めるとタブッキとペソアの関係性が随所に現れてきます。

主にタブッキの作品の解説、あとがきをまとめた作品のせいもあるのでしょうか、ペソアの影響が感じられる記述も多いです。

というか、現代小説が一種のプリズムだと評したうえで、プリズム=様々な視点から接近を試みています。タブッキ自身も著者との対談でペソアの視点で見ていることを認めています。

ここにペソアとの関係性の究極性が見て取れます。うむ、すごいな、こりゃ。

また、1つ意味深なことを言ってます。

「小説は自分の思うところに行く。批評家が期待するところにも、作家が望むところにも行かない」

タブッキの作品ってその通りです。これは一体どこに行くのだろうか、つかみどころのない。おそらくですが、読み手によって解釈が変わる作家に入ると思います。

 

1番なるほどな、と思ったのは「島とクジラと女をめぐる断片」という小説のこと。

「島とクジラと女をめぐる断片」の翻訳者は須賀敦子で、小説の解説は著者です。

そこで、須賀は「ピム港の女」とタイトルを訳しています。

著者は「ポルト・ピムの女」と訳すべきだと主張しています。そこまで強い口調ではないですけどね。

著者曰く、ポルトまでが地名のためポルト・ピムとすべきで、英語も仏語もポルト・ピムで訳しているが、と意見を述べます。

おそらく、大部分の人が一緒じゃん、と突っ込みたくなりますが、翻訳者がとらえるニュアンスの違いなんだな、と思いました。

 

■最後に

アントニオ・タブッキを良く知りたい方におススメです。

人となりやペソアの影響やタブッキを巡る事象に思いを寄せることができます。

たどり着くのは一体どこでしょうかね。

 

-外国小説, ,

執筆者:


comment

関連記事

【どこに住む】289.『あなたにいちばん似合う街』著:三浦展

こんばんわ、トーコです。 今日は、三浦展の『あなたにいちばん似合う街』です。 人生を変えたいなら、住む街を変えよう あなたにいちばん似合う街   ■あらすじ 突然ですが、あなたが「住みたい街 …

【面白本屋】184.『すごい古書店 変な図書館』著:井上理津子

こんばんわ、トーコです。 今日は、井上理津子の『すごい古書店 変な図書館』です。 すごい古書店 変な図書館 (祥伝社新書)   ■あらすじ ある本屋に行けば珍しいお宝本に出会え、またある本屋 …

【心温まる本】74.『ツバキ文具店』著:小川糸

こんばんわ、トーコです。 今日は、小川糸の『ツバキ文具店』です。 ツバキ文具店   ■あらすじ 鳩子は鎌倉で先代(鳩子のおばあちゃん)から受けついだツバキ文具店を営んでいる。 そこでは文房具 …

【コロナ時代の小説】299.『十年後の恋』著:辻仁成

こんばんわ、トーコです。 今日は、辻仁成の『十年後の恋』です。 十年後の恋   ■あらすじ パリに住む日本人のマリエ・サワダは2人の娘を抱えているシングルマザー。映画関係の仕事に従事し、忙し …

【報道の裏側】400.『ラジオ報道の現場から声を上げる、声を届ける』著:澤田大樹

こんばんわ、トーコです。やっと400冊まで来ました。ありがとうございます。 今回は、澤田大樹の『ラジオ報道の現場から声を上げる、声を届ける』です。   ■あらすじ 2021年2月、森元オリン …