こんばんわ、トーコです。
今日は、柚木麻子の『私にふさわしいホテル』です。
■あらすじ
加代子は文学賞を受賞するも、文学賞の同時受賞者の元アイドルに注目を持っていかれ、作家といっても鳴かず飛ばずの状況が続いていた。
新人賞受賞から2年後、山の上ホテルにカンズメになって小説を書いていた。
そんな時、出版社に勤める大学時代の先輩遠藤がやってきて、加代子にある情報を教える…。
■作品を読んで
このあらすじだと、まあ、なんて運のない主人公…。ずいぶん哀れだね、と思うことでしょう。
しかし、このホテルには超売れっ子作家の東十条が滞在していました。
加代子はどうしたのかというと、ホテルのメイドとなって東十条の部屋に行き、シャンパンを開けたら東十条のパソコンにコルクをぶち当てるということをし、それを小説のネタにします。
ここから、加代子の小説家として脚光を浴びるための戦いが始まります。
まず、もう少しネームバリューのある新人文学賞を取ります。しかし、受賞したからと言ってすぐに売れる世界ではないのが、出版の世界。
それから、加代子が有頂天になったり、なかなか売れずに先輩作家先生たちに慰められたり、朝井リョウが実名で登場したり。
ライバルの女子高生の新人作家が登場し、遠藤が彼女の担当になり、ぞっこんになります。
おもしろく思わない加代子が永遠のライバル(?)東十条と団結し、遠藤を成敗します。
かと思えば、東十条の家族の間を加代子が取り持ったりと結構怒涛の展開です。
最後は、物語の最初から9年が経過し、やっと加代子の作品の映画化オーデションなるものを開催するということで、最初の文学賞の同時受賞者の元アイドル島田かれんに復讐を果します。
かれんに主役を与えるも、有名な映画祭で注目を集めたのは、加代子の学生時代の親友の素晴らしい演技だったというオチ。
なんというか、復讐をするには完璧すぎて、もはや鬼…。
復讐を終えた加代子は遭遇した東十条にこう言います。
死にもの狂いで掴んだ晴れの舞台で、誰からも見向きもされない理不尽さを。名前を覚えてもらえない悲しさを。自分になんの落ち度もないのに、脇役に押しやられる悔しさを。
なんか、作家って大変だなと思ってしまいます。柚木さんがどんな苦労をしている方なのかわかりませんが、このセリフは凄みがあります。
それにしても、ここまで作家の裏側を書いていいものでしょうかね。どこまでが実話で、どこまでがフィクションなのかわからなくなってしまいます。
出てくる作家や文芸誌の名前が結構わかりやすいし…。よくこれが世に出たなあ。
最後の解説を石田衣良が書いています。怖いもの見たさで読み始めて、小説へのゆるぎない信仰があると書いていますが、最後の最後それ言うかと突っ込みたくなります。
最後まで笑わせてくれます。
■最後に
作家の裏側がよくわかる本です。というか、これはここまでぶっちゃけていいのかと突っ込みどころ満載です。
笑ったり、感心したり、アッと驚いたり。面白い本です。