こんばんわ、トーコです。
今日は、中村文則の『私の消滅』です。
■あらすじ
「このページをめくれば、あなたはこれまでの人生の全てを失うかもしれない」
そんな衝撃な1文からスタートします。きっと結構な割合で「何だ、何だ」と思うでしょう。
中間部にはどんでん返しが待っていますよ。
■作品を読んで
読後の感想は何と表現すればいいのだろう。
この小説のもつ毒気でちょっと小休止を挟みたくなるシーンも多々あります。
でも、読み進めたくてまた戻る。そんな作品です。
この内容なら正直なことを言えば、この薄さが限界です。それだけ重いし、深い。
ストーリーの展開は、のっけから?が3つ、4つ並びます。
表紙の後ろのあらすじにゆかりと言った女が心療内科を訪れて…というくだりがありますが、そんなかけらもなく黙々と進みます。
ある男が小塚亮太という男の手記を読み、男の中で徐々に歯車が狂わされます。
ネタバレに近いかもですが、中盤になって、物語がひっくり返ります。
小塚亮太の正体と目的が分かり、さらには手記を読んでいた男の正体も明らかになります。
小塚亮太は精神科の医師となり、ゆかりと出会います。
このくだり中盤にならないと本当に出てきません。ミステリーを読んでるのではという気分になります。
小塚はゆかりを愛しますが、性的な部分でトラウマがあり、ゆかりを抱けません。
一方でゆかりは義父に強姦され、家出し、男のもとに身を寄せながら売春を繰り返し、自殺未遂も幾度となく起こしているという、なかなかのキワモノ。
やがて必要に迫られゆかりの重すぎる過去を消すが、その行動が小塚の苦しみとなります。
物語の本質はここにあります。これを捉えないとただ精神異常者のグロい分析を読まされるだけの苦行となりかねないからです。
小塚の苦しみと引き換えにゆかりは全ての過去を忘れゼロからのスタートとなりました。
程なくしてゆかりは和久井という男を好きになり、一緒に暮らし始めます。
しかし、ゆかりは過去を思い出し、発作的に自殺します。
そこから小塚の復讐劇が始まります。
ただ、小塚は最後まで悪者にはなれなかったんだと思います。
手記を読ませていた男に自分を投影したんだと思うのです。はっきり言えば自分自身の身代わりに罰するのですから。
良心の欠片はあったのでしょう。最後は自分の記憶を消そうとするのですから。
なんというか、蜘蛛の糸にからめとられた感はあります。気が付けば身動きの取れない感じ。物語が付いて回るような感じ。
限りなくダーク側の物語ですが、不思議と読めてしまいます。
■最後に
ストーリー自体はかなり重いですが、不思議と読めてしまいますし、1度読み始めると止まらなくなります。
中間部になるとストーリーがいきなり反転します。なんかミステリーのようです。
[…] 220.「私の消滅」、174.「惑いの森」。逆順ですみません。 […]
[…] 220.『私の消滅』、174.「惑いの森」。逆順ですみません。 […]
[…] 1位 220.『私の消滅』著:中村文則 […]
[…] 220.『私の消滅』、244.『逃亡者』、341.『カード師』、365.『土の中の子供』 […]