ある読書好きの女子が綴るブック記録

このサイトは年間100冊の本を読む本の虫の女子がこれから読書をしたい人向けに役に立つ情報を提供できればなと思い、発信しているブログです。

小説 男と女

【不思議な話】212.「森があふれる」著:彩瀬まる

投稿日:1月 14, 2020 更新日:

こんばんわ、トーコです。

今日は、彩瀬まるの「森があふれる」です。

森があふれる

 

■あらすじ

編集者は見た。

長年担当している埜渡徹也の妻琉生が植物の種を食べて倒れ、次の日には彼女の毛穴から植物の芽が出てきたことを。

様々な登場人物の視点から、この現象を見ていくという不思議な話。

 

■作品を読んで

このあらすじだけで、この作品が結構奇妙な話の部類に入りそうな予感がします。

けど、一気に読めます。おぞましいながらもなかなかに続きが気になる作品です。

とはいえ、トーコもちょうど移動中にこの作品を読んでおりまして、電車移動中に読み切ることができてしまいました。

小説家の妻琉生は、様々なものを夫から奪われ続けました。

夫の出世作「涙」は琉生とのSEXをあからさまに描いたもので、琉生はアルバイトをしていた親類の居酒屋でアルバイトができなくなりました。

また、夫の浮気や不穏な噂などに耐え忍び続けました。

そんな中、突然木の種を食べ、琉生は発芽しました。タイトルの通り、突如家に森があふれてしまいました。

そこから、様々な人物の視点から森にあふれている家について描きます。

作家を担当する男性編集者は、琉生の変化に大いに戸惑います。未知の物体を受け入れなければならないのですから。

しかし、そんな努力の甲斐はむなしく、作家の家に行った後の風俗通いがばれたのか、編集者の妻は子供を連れて家を出て行ってしまいました。

琉生の心の闇から生まれたと言っても過言ではない森が、こんなところにまで余波を及ぼしているようです。

というか、この男たちが地味ーにダメなのも原因かもしれませんが。

個人的には、編集者の男の後任の女性編集者に共感できるポイントが多かったです。

学生時代は一緒にいて面白かった恋人も、社会人になりいつのまにか嫌な仕事よりも大手企業にいるというステータスを守る方に必死になっていました。

埜渡の妻は、作家の出世欲のために、個人が分かる形で同意もなく作品になり、悪意なく行われていたことが。

女性の編集者はそれに気が付きます。

おぞましいことが起こっていて、それを女性だからと悪意を持つこともなく当たり前のように小説を読んでいたこと。

それは困ったことに現代社会でもたくさんあること。ちょうど今若干話題になっています。

もし、この小説の男と女が逆だったらどうでしょう。男が女に尽くす場合、きっと多くの人はこの男本当のところどうなんだろう、って思うはずです。

女性編集者の場合は、恋人、結婚しているので夫ですが、2人は2人の世界を見る決心をします。

最後は、小説家の妻琉生の視点です。

作家はこれまで妻と本気で向き合って来なかったに気が付きます。いや妻だけではなく、自分自身とも向き合って来なかったことに気が付きます。

ついに琉生と対話し、作家にも森が生えてきてそのまま森の状態でいることにしました。

最後は森が逆転しました。なんだそりゃ。現実がひっくり返る瞬間でもあります。

 

■最後に

設定はなかなか謎ですが、おぞましいのになぜか読み進められる不思議な小説です。

人の闇からできた森はやがてすべてをあたたかく包み込みます。

自分を見つめ直すきっかけになったことでしょう。

 

-小説, , 男と女

執筆者:


comment

関連記事

【山に登るということ】131.『バッグをザックに持ち替えて』著:唯川恵

こんばんわ、トーコです。 今日は、唯川恵の『バッグをザックに持ち替えて』です。 バッグをザックに持ち替えて   ■あらすじ ひょんなことがきっかけで山に登り始めた著者。 山との出会いから、登 …

【禁断の恋】213.『ゆらやみ』著:あさのあつこ

こんばんわ、トーコです。 今日は、あさのあつこの『ゆらやみ』です。 ゆらやみ (新潮文庫)   ■あらすじ 女人禁制の間歩と呼ばれる石見銀山の坑道で生まれたお登枝は、育ての親とともに置屋で生 …

【父のこと】249.「猫を棄てる」著:村上春樹

こんばんは、トーコです。 今日は、村上春樹の「猫を棄てる」です。 猫を棄てる 父親について語るとき (文春e-book)   ■あらすじ 中学生のころ、父親と一緒に猫を棄てに行ったことがある …

【新しい時代の法】265.『AIの時代と法』著:小塚荘一郎

こんばんわ、トーコです。 今日は、小塚荘一郎の『AIの時代と法』です。 AIの時代と法 (岩波新書)   ■あらすじ 自動運転、仮想通貨、シェアリングサービス、AI技術の普及など。現代社会で …

no image

【甘さと苦さが共存する本】12.『無伴奏』 著:小池真理子

こんにちは、トーコです。 今日は小池真理子の『無伴奏』です。 無伴奏 (新潮文庫) ■あらすじ 1960年代の学生紛争が盛んだった時代の仙台。主人公の響子も例にもれず、不良っぽくデモや集会に参加してい …