こんばんわ、トーコです。
今日は、中村文則の『惑いの森』です。
■あらすじ
この作品は、連作短編集です。なのか、様々な事情を持つ登場人物がたくさん登場します。
タクシーに乗って毎日午前一時に現れる男、黒子の女、郵便局で待つ女。
何か満たされずに生きる人々に現れる小さな奇跡を描いた作品です。
■作品を読んで
この作品は、もともとアマゾンのweb文芸誌で連載された作品28話プラス22話で構成されています。
しっかしまあ、ボーナストラック22話ってだいぶサービスのいい作品ですなあ。
1編はだいたい平均3ページで、短い作品は1ページ程度と、非常に読みやすい作品です。
しかも、トーコの個人的な意見ですが、この著者の作品って長編で読むと結構重めな作品が多いので、もしこの著者の作品を初めて読むならこの作品を是非おススメします。
トーコがいいなと思ったのは、ココ。
重い重い苦しみに陥った時、ひとは周りの苦しみよりも、自分の苦しみのほうがつらいと考える。‥ひとを羨ましく見る。なぜ自分はこんなにも。
‥苦しみが比較できないとわかった時、この風景に道が見え、建物が見える。あなたの日常の風景が現れます。
この感情は、結構頻繁に発生する感情です、トーコにとっては。
なんで、私だけこげな目に遭わなあかんのや、と思うこと多々あるかと思います。
でも、「あ、この人もこの人なりに苦しいんだな」とわかったとき、自分は自分の中の苦しみを、他人は他人の苦しみを生きていることを知ります。
そうすることができて初めて違う風景が見えてきます。
なんだか、ずっと苦しみの中にいたので、結構救われました。
苦しみはいつか消えます。苦しみの概念はそのままだけど。
また、最後にはこんな作品があります。
少年は転校生で学校に行きたくない。少年を支えているのは、部屋で一緒に遊ぶ動物たち。
しかし、その動物たちに「もうここに来てはいけないよ。君は大人にならなければいけないから」といわれてしまう。
あるとき、少年は通学途中で女のひとから黄色いマフラーをもらう。その時に女のひとはこういいます。
あなたはこれから、必要になるかもしれない。…世界と一人で対峙しなければいけないから
…頑張り過ぎないように、…頑張って。
ずいぶんとまあ、勇気をくれる言葉です。同時に優しくなれそうな気がします。
誰もが世界と対峙しています。時には心が折れそうなこともたくさんあるかと思いますが。
そんなときに必要な言葉です。楽になってください。
短編集全体は同じ登場人物が再び現れたり、宗教団体がつぶれた話などいろいろな要素満載です。
宗教団体が出てくるって、「教団X」みたいなことになっているような気がする…。
何となくですが、中村文則的な要素も隠されています。短編なのに。
そういう意味では、冒頭でも書いたとおり、この著者の作品を初めて読む方にうってつけの作品かもしれません。
■最後に
優しい言葉で彩られた短編集です。また、Nという名で著者も作品に登場します。
自分の作品のこともなぜか書いています。
でも、著者の他の作品を感じさせる要素も詰まっていますので、著者の作品を読んだことのない人にもおススメです。
■その他作品
以下は紹介した中村文則作品です。
220.『私の消滅』、244.『逃亡者』、341.『カード師』、365.『土の中の子供』
[…] 220.「私の消滅」、174.「惑いの森」。逆順ですみません。 […]
[…] 174.『惑いの森』、220.『私の消滅』、244.『逃亡者』 […]
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