こんにちは、トーコです。
今日は小川洋子の「不時着する流星たち」です。
■あらすじ
グレン・グールドやエリザベス・テイラーなどの影響やインスパイアされた短編が収録されている。
とても静かな筆致で書かれているけど、突然アッと驚くような展開が待っていたり…。
静かで、不思議な音楽を奏でる短編集です。
ちなみにアマゾンの紹介文では「10の変奏曲」と書かれていました。
■作品を読んで
最初の作品を読むと、なんだか不思議なお姉さんだな、何かにとりつかれているんじゃないか、と思いました。
けど、最後のページのモチーフになった人物の解説を読むと理由がわかりました。
ああ、ここからきているんだなと妙に納得してしまいました。
それにしても、短編のタイトルから全く想像のつかないモチーフなのでけっこう驚くし、物語の幻想的な世界を壊さず、静かにうまく物語をまとめてしまう小川洋子さんもすごいなと感心してしまいます。
ただ、かなり抽象的でつかみどころがない短編もありました。
そんな時は最後のページのモチーフについての解説を読むとけっこうつかめます。
そのうえでもう1度読み進めると、何か見えてきます。
焦らず、ゆっくり腰を落ち着けて集中して読むといいと思います。
スピード重視の読書をする方には薦めません。逆に物語の世界をきちんと味わいたい方にはすごくおススメです。
個人的には、グレン・グールドをモチーフにした短編がいいです。
盲目の祖父と一緒に思い出の土地をめぐっては、歩数と距離を測って記録する。
この作業はものすごく規則正しく、同じくらいの規則正しいリズムを刻んでいました。
それはまるで何かの音楽のようでした…。
やがて、祖父が亡くなり葬儀が終わった後、僕はラジオをつけてみたら、音楽家の追悼番組が流れていた。
その音楽を聴いた瞬間、祖父と一緒に歩いていたときの足音にそっくりだった。
祖父を思い出し、僕は歩いた。
すごく静かで、この物語の中にしかないリズムが聞こえてきて、それが物語の世界観を作っているすごーくうまい作品だなと思いました。
■最後に
作品の中に流れているリズムや世界が本当に独特です。こんな作品なかなかないような気がします。
本当に書き手の実力がすごくわかる本です。この幻想的な世界を壊さず、静かにまとめ上げるのは本当にすごいです。
時間があるときにゆっくり読むといいでしょう。
[…] 73.『不時着する流星たち』、269.『あとは切手を、一枚貼るだけ』著:小川洋子、堀江敏幸 […]