こんばんわ、トーコです。
今日は、原田マハの『モネのあしあと』です。
■あらすじ
モネと言えば、睡蓮の絵を思い浮かべる方がきっと多いことでしょう。
この本は、モネの生涯と印象派のおかれた状況と当時の美術的な背景をわかりやすく解説した本です。
■作品を読んで
この本の凄いところは、薄くて読みやすい厚さでかなりの情報量が詰まっているところです。
モネと印象派について一通りの知識が得られます。
個人的に「あ、わかっているな」と感心したのは、アカデミーやジャポニスムなど印象派が当時は亜流であったことと、印象派の構成要素がきちんと触れられていることです。
印象派は今でこそ人気と芸術的な評価を得ています。しかし、印象派が活躍した19世紀の終り頃はアカデミーと呼ばれる権威があり、そこに所属し、官展(サロン)に出品した作品が評価され、認められるのが一流画家とみなされていました。
印象派の画家たちは一言でいうと、アカデミーに全くといいほど認められていませんでした。
アカデミーに認められる絵と印象派の絵を見れば一目瞭然です。
表現方法がそもそも違うので、アカデミーの評価基準に合致しなかったからだと推測します。
後世の人間から見れば印象派が認められ、アカデミーの方が忘れ去られてしまった事実があるので、当時の価値観は真逆だったこの話は結構面白いのですが。
価値観はこうやって変わってくのです。印象派はそれを教えてくれます。
もちろんですが、モネが生きたあしあともたどります。
モネの暮らしは結構貧しかったそうで、しかも没落したパトロンの家族まで家に転がり込まれてしまったのですから、本当に大変な暮らしでした。
そんな中で、モネの最初の妻であるカミーユが亡くなります。
死にゆくカミーユの姿を描いた作品が実は存在します。
なんというか、絵自体はそこまで写実的に描かれているわけではないのですが、写真のようにリアルです。それから人物はほとんど描かなくなったそうです。
やがて、終の棲家であるジヴェルニーに住み、庭を造りつつ、創作活動に打ち込みます。
この庭が睡蓮シリーズのモチーフになります。
終りには、「ジヴェルニーの食卓 (集英社文庫)」の創作秘話的な話と、モネをめぐる美術館ガイド、印象派のその後を記しています。
■最後に
薄い本ながら非常に内容の濃いものになっています。非常にためになります。
特にですが、モネの睡蓮が知りたくなった時におススメです。
入門解説にちょうどいい厚さになっています。
[…] 21.「旅屋おかえり」、109.「モネのあしあと」 […]