こんばんわ、トーコです。
今日は、山本耀司の『服を作る』です。
■あらすじ
デザイナーであるヨウジヤマモトのこれまでの軌跡をインタビュー形式で描いた作品です。
ファッションやパリコレへの想いを語っています。
■作品を読んで
ファッションについては、きちんと計算されたデザインの服を着る人とファストファッションで十分という人の二極化が進んでいます。
なんというか、いろいろ人間の考え方が出るなと思ったのと同時になんかもったいないなあと思っていました。
男性のデザイナーの場合、一体何をきっかけにしてデザインの道に進むんだろうと思ってました。
ヨウジヤマモトの場合は、母親が洋装を習って洋装店を営んでいたことが大きかったようです。
戦争中に夫(父親)を亡くしたようで、子供と共に身を立てないといけないと考えたときに、文化服装学院に入学し、洋装店を開いたそうです、
かなり身近に服があったのですね。
それから、大学4年になって一般企業へ入るのがいやだと感じたヨウジヤマモトは、母親に店を手伝いたいと伝えます。
母親としては落胆モノでしたが、世界のファッション史的には万々歳な出来事でした。
母親はお針子さんに馬鹿にされるのもあれなので、ヨウジヤマモトに文化服装学院に入学し、デザインを学びます。
卒業後洋装店を手伝いながら、会社を設立し、自らデザインした服を日本中で売り、やがてパリコレを目指します。
それからの話は割愛します。紆余曲折を得ながらも成功したのですから。
1番びっくりしたのは、服のつくり方です。
まず、パタンナーがパソコンを使わずに、手で引いているのですから。今時珍しや。アクセサリー作りですらCADを使うのですから。
布とはさみとミシン、五感があれば作れるとのこと。おお。
どんな優秀な洋裁学校を出ていても、ヨウジヤマモトの会社に入ればほぼやり直しになる。それくらい教科書とは違うやり方で叩き込まれるのだそう。
驚いたのは、虫ピン2本でスカートを作ったとのこと。布をどう使うかが分かるからこそなせる業。
実演することで、ヨウジヤマモトなりに経験した服つくりの難しさを示し、手で作ることを叩き込む。そして、こういいます。
そこから何かを感じ取ってくれる人が5%でもいればいい。そして、それを感じられる人は幸せなんだと思います。
さらに驚きました。わかってくれる人は相当少ないことを前提としています。
おそらく、服飾をしている学生の間ではきっと教科書と違うやり方で叩き込まれることはわかっているはず。それでも覚悟の上入社しているのに、感じ取れる人が少ないと言い放っているのですから。
まあ、気持ちはわかります。トーコも会社で後輩たちに言うけど、今すぐわかることを前提に話しているわけではないので。
トーコも上長との面談の時に「教えたことがどう役に立っているかを知りたいものだよ」と言われたときに結構衝撃を受けました。
今すぐ役に立つことを前提としていない人間なので、真逆すぎてびっくりでした。
「あー、そう考える人もいるんだ…、ふーん」と思っていたので、マスクで口元を覆っていてよかったと心の底から思いました。
たとえがどーでもよいのですが、わかる人の前提条件がちょっと似ていて驚いたというか。似ているが非常におこがましいですが。
あと、一流は一流を呼ぶのでしょうか。映画監督のヴィム・ヴェンダースとの逸話を。
彼は教材用ビデオの撮影のためヨウジヤマモトのオフィスで撮影を始めました。彼の持ってきたカメラはフィルムカメラでした。
撮影を始めると、パタンナーが静かに仕事している様子を見て、秋葉原でビデオカメラを買ってきました。ビデオカメラの実力を軽視していたにもかかわらず。急遽ビデオカメラを買ってきた訳は、
「撮影機の音が、彼女たちの邪魔をして迷惑なんじゃないか」
この行動を目の当たりにしたとき、スタッフに対する深い敬意を感じると同時に、小さな会社のスタッフにまで気を遣う人だから本物だと思ったそうです。
トーコも残念ながら人によって態度や口調を変えてしまいそうな時がありますが、それはやめようと思いました。こうして人は見ているのです。
もちろん、この映画監督さん、ヨウジヤマモトの服を着ているそうですよ。
作品の合間にヨウジヤマモトの服の写真があります。個人的にはこういう服が好きなのですが、
本人曰く、「間のある服」なのだそうです。体と服の間に微妙に空気を入れるようデザインしているそうです。
「間のある服」を作るためには、後ろ姿を重視すること。そのためにはシルエットと布地の動きが大切なのだそうです。
「間のある」という言葉はなんというか、非常に日本的です。西洋にはない概念な気がします。
そういったこだわりのある服=ブランド、なのかなと思っています。ファストファッションにこういうものは求められないです。
違いは着てみるとわかります。素材はもちろん、シルエットや見え方が全然違います。トーコはそういう服の方が好きなのですが。
とはいえ、今若者にウケているようです。写真を見ると確かに…と思うことがあります。
もともと西洋っぽい服を作ったから成功したのではなく、根っこは日本人なんだなというものがあるからこその成功なのかもしれません。
なんとなくですが、ヨウジヤマモトのファッションに対する思いがおぼろげながら分かりました。
■最後に
ヨウジヤマモトの生い立ちからパリコレで成功するまでの自叙伝的要素と、ファッションへの想いが語られています。
服は時に人を動かします。その秘密がこの本にはあるのかもしれないです。