こんばんわ、トーコです。
今日は、レティシア・コロンバニの『三つ編み』です。
■あらすじ
インドでは、不可触民のスミタが娘を学校に通わせようと努力をしている。
イタリアでは、家業のかつら作りを手伝うジュリアが父親が倒れたことでかつら工場が倒産の危機にあることを知る。
カナダでは、サラは弁護士として、シングルマザーとして働いていました。
■作品を読んで
最初はこの3人は一体どこでどうつながるのか、まったく見えてきませんでした。
生きている世界も、置かれた境遇も全く違う3人が見せる世界は凄まじいです。
特に、インドに生きるスミタ。
日本人の私たちからすると、ここまで不便な生き方をしなければならない人がいるということに愕然とします。
スミタはダリットと呼ばれる不可触民で、インドの身分制度(バラモン、クシャトリヤ、ヴァイシャ、シュードラ)に含まれていない、シュードラよりもさらに低い身分の人間です。
どうやって生計を立てているのかといえば、スミタはトイレの汲み取りを行うのが仕事。それも素手で。夫はネズミ捕り。
でも身分の低い2人は、身分の高い人には逆らえない。
そんな運命の中、スミタは娘のラリータを学校に通わせようと行動します。
しかし、ラリータは学校で上の身分の人の命令に逆らい、鞭で打たれたことを告白します。
スミタは悟ります。身分の低い人間に読み書きを知る権利がないのか、害を与えやしないのに。
スミタは娘の将来を守るため、娘とともに家を出て遠いところへ行くことを決心します。
娘には絶対にトイレの汲み取りの仕事はさせない、その一心です。
日本ではありえないし、というかインドって今でもこうなのかと愕然とします。
女性の地位があまりにも低いです。旦那が死んだら残された妻は出て行けだし、年金ももらえない。男性に絶対的に依存しなければならない状況です。
ちなみにですが、2019年の日本はインドよりもジェンダーギャップ指数が低かったはずです。
確か、日本の順位は121位でアラブ首長国連邦とクェートの間です。
政治、経済の面での女性の参加が低すぎるせい(他にも要因はありますが)で、ジェンダーギャップレベルはまさかの中東レベルです。
他の登場人物のジュリア、サラも複雑な事情を抱えています。
実は、ネット記事にもあるように、ジェンダーギャップ指数からこの物語を読むことができてしまいます。
とはいえ、1番順位の高いのは著者の住む国フランスですがね。
イタリアも実は家長夫制が色濃く残る国ですし、サラの住むカナダも出世レースのためには家族を犠牲にしなければならない面も残っています。
そして、日本人のトーコから言わせれば、日本はジュリアとサラの抱える事情が分からなくもないのです。
日本だってそんな面があるからです。なんてったって日本のジェンダーギャップ指数は中東レベルですからね。中東レベルということは実際のところ全然平等ではないんですから。
どこでつながるのか。それはサラががんになったことで判明します。
かつらの原材料の髪を提供し、かつらに加工し、抗がん剤治療で髪の抜けたサラの手に渡る。
それがタイトルである、「三つ編み」の正体なのです。
それにしても、物語の最後はそれぞれの登場人物が希望を持って終わることができて若干ほっとします。
■最後に
生きる世界が違い過ぎる3人の女性を描いた作品です。どこでつながるかちょっと見えてこないですが、読み進めると見えてきます。
最後は将来へ希望が満ちています。
見方を変えるとジェンダーな見方もできるちょっと面白い作品です。