こんばんは、トーコです。
今日は、A・A・ミルンの『ウィニー・ザ・プー』です。
■あらすじ
突然ですが、みなさんはプーさんの原作を読んだことはありますか?ディズニーでおなじみの、あの黄色のクマです。
でも、プーさんの姿が意外と間抜けで、ちょっと憎めないキャラだったらどうでしょう。それはそれで印象が変わってきますよ。
■作品を読んで
何がすごいって、この訳まさかの阿川佐和子。一体何故引き受けたのか、ということは、あとがきに書かれていました。
この作品は石井桃子さんという、児童文学の大家の方が訳されており、それはそれで名作です。
翻訳エピソードは、125.『プーとわたし』 に記載されているので、よかったらみてください。
とはいえ、この有名なエピソードはあとがきでも引用されていますので、ダイジェストで読むことは可能です。
それだけ黄色いクマの物語は多くの著名人たちに影響を与えたのですね…。
そろそろ作品の中身に行きましょう。
実はこの作品の挿絵は、100%ORANGEというアーティスト(昔の新潮文庫のキャンペーンのデザインを手掛けていた方←知らん人のほうが多い…)さんが手掛けています。
おかげで、石井桃子訳の絵よりも全然怖くないです。というか、岩波少年文庫版の表紙、クリストファー・ロビンの扱いが雑すぎてプーさん引きずられてる…。このシーンはのちのちどこかを伝えます。
ディズニーのイメージで石井桃子訳を読み始めるとイメージとのギャップにぎょっとしますが、これはまだ抵抗なく読めそうです。
ちなみに、コブタンというコブタはピグレットのことです。こいつだけは、なぜか名前が違うので注意です。
この作品はもともと、著者A・A・ミルンの息子クリストファーと1歳の誕生日に家にやってきたくまのぬいぐるみを買ってきたことから端を発します。クリストファー・ロビン君の実際の遊び友達だったのが、くまのプーさんの話の始まりです。
第1章の冒頭を読むと、岩波少年文庫版の表紙の絵(ネットで調べてください。)の謎が解けます。テディベア(くまのプーさん)の後頭部を会談にぶつけながら降りてきます。プーさん、痛そう…。これがまさかのくまのプーさん初登場シーンなのです。違う意味で伝説。
改めて読むと、プーさんがあまりにも間抜けすぎて、笑えます。
例えば、第2章の話。ウサギの家に遊びに行きたらふくご飯を食べたら、ウサギの家のドアに挟まって出られなくなります。
ウサギがクリストファー・ロビンを呼び出しに言ったら、クリストファー・ロビンは「ばかなクマちん。おなかを引っ込ませるしかないね」といい、脱出のために1週間かけて減量します。
最後は、ウサギの一族がプーを引っこ抜いて一件落着。コルクの栓が抜けたような音がして、スポっと抜けます。
このクリストファー・ロビンの発言からクスクス笑いだすことこの上ないです。ちょっとどころかかなり笑えます。
スポッと抜けたには腰を抜かします。本当に面白いです。
あと、更に間抜けな話がありまして。
それは、ある日プーさんが、「これ何の足跡に見える?」と結構真顔でコブタのコブタンに聞きます。
「わかんないよ」コブタンはそらいいます。もともとプーさんが勝手に足跡の観察を勝手に始めたのですから。
観察を始めると最初は1つだった足跡がいつの間にか増えているではありませんか。プーさんが「これはイタズラッチが増えたね」と考察。
コブタンは恐れをなしたのか、クリストファー・ロビンの姿を確認後プーさんから離れます。
クリストファー・ロビンはプーさんの足跡捜索を見て、こういいます。「茂みの周りを2周して、それからコブタンと一緒にもう1周して、それからさらにもう1周したんだよ」
おーい、そんな落ちかよ。自作自演感MAX、けどプーさん全く気が付いていないのがまあ持ち味というか、さすがです。
そんな事実を知ったプーさんは落ち込みます。クリストファー・ロビンは一生懸命慰めますが。
A・A・ミルンはもともと戯曲作家でしたが、息子クリストファー・ロビンが誕生してから書いた児童書のほうがベストセラーになり、かなり皮肉にもプーさんに乗っ取られた人生を送った1人でした。
それは、息子クリストファー・ロビンも同じでした。
生まれながらにして既に有名人となってしまい、幼少期はそれはそれで楽しんでいましたが、寄宿学校以降はいろいろと苦労が絶えず、大学卒業後作家を目指すもあきらめ、従妹と結婚し、本屋を開きます。のちに娘が障害を持って生まれたそうなので、作家として父への思いを語る本を書いたそうです。
この親子の葛藤はなんと、映画化されていました。どこまでが事実なのかはわかりませんが、寄宿学校以降クリストファー・ロビンはそれが原因でいじめに遭ったこと、戦争に行く下りは、本人が大学を休学して軍に入隊したと解説に書かれているので、ちょっと違う気がしますが。
なんとも複雑な思いがある作品ではありますが、それでもプーさんはほっこりした笑いを提供してくれます。
■最後に
黄色いクマも案外間抜けで、でもちょっと憎めないとても愛らしいキャラクターです。
もちろん、このキャラクターのおかげで人生が狂った方もいらっしゃいますが。
笑える要素が詰まった新訳とともに楽しめます。