こんばんわ、トーコです。
今日は、畠中恵の『ちんぷんかん』です。
■あらすじ
薬問屋の若だんなこと一太郎は、薬種問屋の跡取りにして、超が付くほどの病弱です。
そんな若だんなを守る仁吉と佐助と妖たちが繰り広げる愉快な物語です。
本書は、「しゃばけ」シリーズの第6弾です。
■作品を読んで
この主人公、多分今まで読んだ本の中で1,2位を争うくらい弱い主人公です。
働こうと表に出たら、すぐに倒れるので、裏手で寝ててくださいと手代に言われる始末。
手代の仁吉と佐助は若だんなを守ることに命を懸けています。親もそんな若だんなには大甘です。
ある話では、手代の2人が若だんなをどうやって守るかでけんかになる瞬間があります。
このけんかのレベルが江戸の町を半分破壊しそうな勢いです。やめてくれと若だんなは当然叫びますが。
若だんなの周囲はそんな感じです。すごい甘やかされよう…。
ちなみに、若だんなの祖母は妖です。なので、妖の血を引く若だんなも妖が見えます。
それがゆえに若だんなの周りにはいつも妖がやってきて、おやつを取ったり、話し相手になったりします。
この本では、若だんなの住む通町一帯が火事になり、若だんながいきなり冥土に飛ばされるところから始まり、兄の松之助の縁談から事件に巻き込まれ、母おたえの若かりし頃の話や切ない別れの話など、様々な話が詰まっています。
最後の別れの話ですが、季節がやってきては現れては消える運命にある妖の命を延ばそうとする若だんな。
けれども、妖はわかっていました。時期が来たら消えてしまう自分の運命を。妖はあらがうことなく、去っていきました。
2度と会えないというのは、去っていく者も哀しくて哀れかもしれないけど、残される者もつらいということを。しかも、相手への思いが深ければ深いほど、探してしまうのかもしれない。
それから若だんな自身の運命に重ねます。自分もいつかこうしてみんなを置いてあの世へ行く日がやってくる。
終わりには、若だんなに様々な感情があふれ、整理できなくなってしまいます。
すごく、不思議な余韻を残して本書は終わります。
■最後に
この本に出てくる妖は民俗学的なものではなく、すごくかわいらしい妖です。
毎回若だんなの日常を彩る妖たちです。
時折切なくてしんみりする話もありますが、さまざまな事件を解決する話もありますので、くすくす笑えたり、しんみりしたりと楽しいシリーズです。
[…] 畠中作品はひとつだけ紹介していますので、良かったらどうぞ。111.「ちんぷんかん」 […]