こんばんわ、トーコです。
今日は、長田弘の『食卓一期一会』です。
■あらすじ
詩人である長田弘の作品の中から、食べものの詩を集めている本。
すごくおいしそうな料理と寄り添う言葉がたくさん並んでいます。
食事がもっと楽しくなるし、大切にしたいなと思わせる本です。
■作品を読んで
詩を読めばおいしそうな食卓のにおいと、食卓の風景が目に浮かんできます。
ダシ、ジャム、オムレツの匂い。包丁でリズムよく切る音。
本を読みながら視覚と嗅覚、聴覚、味覚でいろいろと感じることができます。
正直、本を読んでここまで感覚を思い起こす本はないです。
初めて出会う新感覚の本です。
隠し味はなんといっても食べものから連想されることばたちです。
例えば、「言葉のダシのとりかた」という詩では、ダシのとりかたとなぞらえて言葉の抽出法を語っています。
これにもやられます。ちなみにこの詩、本の1番最初です。
ダシを取る作業って本当に時間と手間がかかります。
小学生か中学生か忘れましたが、調理実習でダシを取った記憶があります。
それっきりダシを取っていません。味噌汁を作るときはもっぱらだしの素です。
本当にだしの素様様です。
言葉も同じです。言葉を削って、意味を選んで、鍋に火をかけて余分なアクを取って、沸騰したら火を止めて、漉し撮ります。澄んだだしが言葉のだしとなりました。
この過程を経た言葉はきっときれいで澄んだ、奥行きのある言葉になっています。
本当にだしをとる過程は大変だ。それは言葉も一緒。
それから、様々な国に旅に出ることもできます。
日本だけじゃなく、フランス、イタリア、アメリカ、メキシコ。
なんだか楽しい気分になります。
最後の方になると、古今東西の文学作品から食事の場面が登場します。
ハックルベリー・フィンにセルバンデス、ミケランジェロも出てきます。
あとがきにある作者の言葉は、作者なりの食卓観が書かれています。
タイトルの食卓一期一会の意味は、ひとが一期一会をともにする場所という意味を込めているそうです。
誰かとともに食卓を囲むということは、誰とともに人生を送るかということと同意義なのだそうだ。うむ深い。
そして料理は、いまここという時間だと語っています。確かに、料理はいまここで作っています。
同じものを前回と同じように作るってある意味難しいことです。
そして、作った後はおいしく平らげます。
■最後に
読めばわかる、とにかく本からは食卓のにおいと風景、食事の味など五感を使って楽しめる本です。
読後は、食べることがすごく楽しく、大切ですごくいとおしいものに変わります。
すごく新しくて、大切なことに気づかせてくれる本です。
[…] 99.「食卓一期一会」 […]