こんばんわ、トーコです。
今日は、川端康成の「古都」です。
■あらすじ
千重子は問屋の娘として美しく育ちました。ただし、彼女は捨子でしたが。
ある日千重子は自分とそっくりな娘苗子と出会います。
苗子は北山杉の村で木こりのもと手伝いをしていました。
千重子は苗子から自分の出自を訊きます。2人は姉妹だったのです。
やがて1度苗子は千重子の家に泊まりに行きますが、身分の差から2度と来ないことを決心して、自分の家に帰ります。
■作品を読んで
この作品を書いているころ、川端は睡眠薬の乱用が甚だしくなったそうです。
この作品の執筆終了後、やばいと危機感を募らせた川端は睡眠薬をやめるも、禁断症状を起こして東大病院に担ぎ込まれたそうです。
睡眠薬を使いながらできた作品のせいか、川端はこの作品を「私の異常な所産」と呼んでいます。
文学的な価値はものすごく高いのですが、言い方を変えれば薬によるハイの状態の真っただ中で書かれた作品です。
みなさま素晴らしい作品を作るのにこのような手段を使うことのないよう、お願いします。
話の内容はすごく読みやすいです。
千重子は自分の出自を聞き、衝撃を受けます。
苗子は千重子との身分と置かれている状況に愕然とします。
それでも出会って間もない2人が心通わすのはさすが双子と思いました。
どんなに離れて暮らしていても、意思の強さは同じだなと思います。
例えば千重子は自分が家を継ぐと思い、家業の番頭に帳簿を見せるよう行動を起こしたり。
苗子は自分の身分の低さのために、千重子の将来のためを思い、千重子の家に2度と行かないし、杉の村にも来ないでくれと頼みます。
というか、苗子は千重子のことを名前で呼ばず、「お嬢さん」としか読んでませんが。
物語の最後の文は苗子の意思の強さがはっきりと読み取れます。
しかし、これだけのストーリーを書いておきながら、川端が本当に描きたかったのは京都の昔ながらの風景なのだと思います。
千重子と苗子の2人の娘の話はおそらく伏線というか、引き立て役のような気がします。
物語の随所に四季折々の風景や古都で行われるお祭り、祇園やお茶屋、消えゆく路面電車、着物、織物職人…。
少しずつ失われていくものをしっかり書き留めて、後世に伝えようとしたのでしょう。
この描写が作品の世界観を表現しています。
だからって、睡眠薬に頼って書くなよ、川端クン。
■最後に
作者が作品を作るのに用いた手段は眉唾ものですが、それを差し引いてもすばらしい作品です。
2人の娘が交差してまた離れる時間は、あっけなくはかないものですが、お互いの身分を思えばこその行動だなと思います。
また、古都に息づく四季折々の風景は独特の世界観を表現しています。
すごく繊細な色を放つ作品です。
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