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【アフガニスタンの現実】442.『わたしのペンは鳥の翼』訳:古屋美登里

投稿日:12月 18, 2022 更新日:

こんばんわ、トーコです。

今日は、古屋美登里訳の『わたしのペンは鳥の翼』です。

 

■あらすじ

現在もタリバンの抑圧の元におかれているアフガニスタンで、女性たちがペンをとりました。

そこには、現代の日本に住む私たちから見れば凄惨なアフガニスタンの現実が精一杯表現されています。

23の短編には一体どんな物語があるのでしょうか。

 

■作品を読んで

現代日本に生きるトーコの眼からですが、アフガニスタンで女で生きるというのは、こんなにも大変なことが多いんだ…、と愕然としてしまいます。

まだまだ女性が生きるのが大変な国があるとは…、と現実を目の当たりにしました。

しかし、それでもあきらめず希望を持って生きている人もいることもまた事実です。

序文にも記されていますが、アフガンの女性たちが創造する小さくてときには息苦しい世界には、壮大な物語があり、心を掻き乱される問題もあります。

女性嫌悪、家父長制、家庭内暴力、公使双方の場で行われているおぞましい抑圧等…。

時には残酷すぎて目をそらしたい、と思うストーリーもあります。これが現実です。

この作品は、アフガンの女性たちが話すダリー語とパシュート語から英語に訳し、その英語から日本語に翻訳されています。重訳というやつです。

彼女たちの内面で起こっている世界での出来事が描かれています。過酷な現実とともに。

特に、2021年にタリバンが全土を征服してから、さらに女性たちの立場が危うくなります。何人かの作家はアフガンから脱出し、第3国に亡命しています。

そんな残酷な現実があることを踏まえて作品に移ります。

この作品は、23の短編から構成されています。

1番最初の作品は、子どもたちを全員外国に逃し、母親1人だけアフガニスタンで生きている女性の話です。

タリバン政権によって身近な人たちが殺されることなく過ごすことができています。そんな危ない国で生きるより、第三国で子どもたちは生きており、ほっとはしています。

しかし滅多に家に集まることはなく、オンラインでしかつながれず、孫たちと会えない状況が続いています。

テクノロジーのありがたさが身に染みますね。都市部はスマホがそりゃ使えますからね。

個人的に読んでて辛かったのは、「八番目の娘」という作品。なんせ、まさか8人目の女の子を産んだそばから、夫が2人目の妻を娶ってたという衝撃の展開。

え、ショック過ぎません?。男の子がいくらほしいとはいえ、それやりますか…。しかも、21世紀に。

しかも、夫が結婚すると知り、8人目の女の子を産んだ方の妻が抗議したら殴られるんですよ…。いやー、そんな国に生まれなくてマジでよかったって思いますわ。

なんだか、読んでいるとアフガンの女性の現実ってすごいなあ、と思いました。正直、読むのが辛すぎて参りました。

しかし、「アジャ」という作品から女性たちのささやかな抵抗が始まっていくのが感じられます。

アジャという女性は、とても賢い人です。

幼いころに親をはやり病で亡くし、唯一手を差し伸べて親代わりとなって育ててくれた人とも14歳くらいで死に分かれます。その時に自分の土地に果樹を植えます。

その後村長の元に引き取られたら、村長の3人の妻から家事を押し付けられ、結婚するも夫に問題があって子供を授かることができませんでした。

義理の父親が亡くなってから自分の土地に戻り、果樹を育てていました。そんな時に、村に洪水が来るかもしれないと思い、溝を掘り始めます。

溝は水路のことですね。水道を創り出します。村の村長は、そんなことあるわけなく、第一女に何ができるんだという姿勢の人でした。

しかし、実際に洪水がやってきて村に被害は出たものの、アジャの果樹園は無事でした。

その光景を目の当たりにした村の女性たちは、アジャに協力するようになりました。あるものは溝堀りに参加したり、ある者は参加者の分までの他の仕事に入ったり。あるものはアジャの家の家事をしたり。

男がいなくても村を守るために、女性だけでもできるってことを証明するために。

こうして協力していく光景を見ると、すごく感動的です。ここまでの話がかなり絶望感を抱えそうになる作品が多かったので。

なんだか、希望が持ててきます。なお、この作品の舞台は第二次世界大戦の頃だったと思います。

男たちが帰ってきたときに驚きます。水路が完成し、洪水を幾度となく回避することができたのですから。

他にも、お菓子を売り始める女性の話もあります。この作品も私は好きです。最後は見事に自立することができるようになります。

この作品は、抑圧された世界に生きるアフガンの女性たちの物語が綴られています。

あとがきにも書かれていますが、平成生まれのトーコはこの日本の状況はまだまだだよなー、と思っています。

が、それ以前の日本人、特に戦前くらいの女性たちも相当抑圧されて生きていました。働くことが当たり前ではなく、教育もそこそこだけ受けて、早く結婚して跡継の男の子を産むのが幸せ、という時代があったように思います。

確か、林真理子の『本を読む女』もそのちょうど生きづらい時代を映し出しています。

帯に書かれているように、ひょっとしたらそんな過酷な状況を映し出しすのに、物語の方がより切迫感が出るのかもしれません。

いずれにしても、筆者たちはペンを持った瞬間自由の翼を持つことができ、読み手は過酷な状況の羽を拾うことができます。

心の中に留めておきたいところです。

 

■最後に

女性たちがアフガニスタンで置かれている過酷な状況を、ペンの翼を借りて自由に描いています。

21世紀の世の中でこんなことが起こっているんだ、と驚きを隠せません。

この一瞬でも大変な状況に置かれている女性たちがたくさんいることに胸が痛みます。

 

■関連記事

日本の女性たちも過酷な時代がありました。本文の中で紹介した 42.『本を読む女』著:林真理子 です。

 

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