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エッセイ 日記

【女優パリを旅する】180.「巴里ひとりある記」著:高峰秀子

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こんばんわ、トーコです。

今日は、高峰秀子の「巴里ひとりある記」です。

巴里ひとりある記 (河出文庫)

 

■あらすじ

1951年、高峰秀子は単身パリへ行く。

当時彼女の女優としてのキャリアは20年、押しも押されぬ人気女優でした。

そんな時期になぜパリに出かけたのでしょうか。

 

■作品を読んで

なぜ女優としての絶頂期にパリに出かけたのでしょうか。

実は本書では、パリに出かけた理由を明記していません。

ただ、デコちゃん(高峰の愛称)とか、高峰さんではなく、本名の「平山さん」で呼ばれることに解放感を感じていたようです。

当時の高峰にとって、「高峰秀子」でいることに対して窒息されそうになっていました。

どこかに逃れて普通の生活を送ってみたかったのでしょう。それでパリに出かけたのだと思います。

1人の名もなき人間に戻るために、でしょうか。

文章の書き方もとても若く、当時の人気女優が書いた文章としてはなかなかのものだな、という印象です。

とはいえ、まさかのちに何冊も本を出版する文筆家になろうとは、本人も思っていなかったことでしょう。

また、1950年代の旅は結構大変なんだな、ということがわかります。

航空機の技術的な問題もあったのでしょうか、現代だと羽田空港からパリまでは12,3時間でたどり着くものですが、1951年だと8回飛行機を乗り換えます。

一体何日かけてたどり着いてんだか。旅も大変だ。

さらに送金事情や電話など、今ならこんな苦労しないんだろうな、ということも令和の時代に生きる人間には新鮮に映るかもしれません。

さすがに電話交換手につなげて…、といったことはさすがにやったことがないので。

為替も当時は1ドル=360円の時代ですから、あっという間にお金は減ると思います。

送金するのだって、日本に電話で連絡して、口座を指定して入金をしてもらわねばなりません。

今だったらカード1枚あれば解決しますよ。それから見ればだいぶ大変です。

 

高峰秀子はのちに 145.「わたしの渡世日記」 という本を書きます。

以前ブログに書いていますので、よかったら読んでみてください。

なぜ「わたしの渡世日記」を引き合いにしたのか。

「巴里ひとりある記」は昭和28年に出版されました。主に当時の出来事を記したものです。

その一方で、「わたしの渡世日記」は高峰秀子自身を記したもので、高峰が50代になって書いたものだったはずです。

「わたしの渡世日記」の中で、このパリ暮らしのことも触れられていますが、「巴里ひとりある記」を記したころの娘時代の様子をより客観的に記しています。

それは歳月を経て当時の逃げ出したかった状況をきちんと整理し、今よりも同じ出来事があったとしてもうまくかわせることを学んだからでしょうか。

パリで高峰が風邪をひくも、家のクモの巣が気になってしまい、箒を買いに出かけた帰りの夕焼けを見て、

「いつかこの淋しさを、楽しかった思い出として懐かしむようになりたい、いやなるんだ」

と記述しています。

「巴里ひとりある記」の解説にもありますが、作家の沢木耕太郎氏とのインタビューの中で

「懐かしむように、なりましたか」と聞かれ、「なりました」と即答したそうです。

高峰秀子にとって、パリ生活は自分を取り戻すための旅でもあり、女優としてのキャリアはとりあえず置いて、自分の人生を見つめ直すのに必要な時間でもありました。

こうして何十年も経過して完璧な自信とともに回答する姿は、その後の人生が充実していたものであることを示しています。

おそらくですが、安寧を得ることができたからでしょうね。

 

■最後に

往年の人気女優によるパリ滞在記です。

1950年代の旅は結構大変なことと、今よりもパリらしい風景が良く伝わってきます。

のちの作品になる、「わたしの渡世日記」との対比を出来れば味わってください。

同じ出来事なのに、目線がだいぶ違って見えてきますよ。

 

-エッセイ, , 日記

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