こんばんは、鈴木Booksの店主です。今回から呼び方を変えます。
今回は、小松成美の『奇跡の椅子』です。
■あらすじ
あなたはマルニ木工という会社をご存知でしょうか。マルニ木工は広島で創立された会社で、バブル崩壊後経営危機に陥りました。
しかし、ある椅子のおかげで、少しずつ立ち直っていきます。
いわゆるファミリー企業の奇跡を描いています。
■本編
この作品は、マルニ木工という広島の老舗家具メーカーの倒産危機から、ある椅子を製作、アップル本社に採用されるまでを描いたドキュメンタリー。
著者は、浜崎あゆみについて書いたあの方です。
まず、そもそもなぜ家族の誰かが書かなかったんだろうと思ったのですが、読めばわかります。
特定の誰かの視点だけでは書ききれないほど、登場人物が多岐にわたっているからです。
特に、企業として一度栄華を誇ってから、坂道を転げ落ちるとはまさにこのこと、と言わんばかりにあっという間に自主再建と資金繰りに一気に苦しみます。
これが最初の2章分です。 資金繰りに苦しみたくない社長は絶対に読んだ方がいいです。少なくとも、この2章分は。
どんどん所有の建物を売り、人員のリストラを進めるという作業は、苦痛で仕方ないでしょう。誰も人を切りたくはないですしね。
この段階になるとカリスマ社長よりも、財務に詳しい番頭タイプが動かないと再建って無理なんだな、と思いました。
社長も企業の成長段階で求められることは違います。 個人的には、4代目社長が、地元の商工会議所活動で得た地縁や県知事(当時の)のいる県庁に通っていたことでかなり救われている要素が大きいなと思いました。
店主はそこに悲観的・批判的な感情はありません。当然ですが、そういうコミュニティが世の中には存在します。
そのコミュニティにいるからこそ出会えるメンバーや考えというものがあります。
だからこそ、出会いって大切なんだなと思うのです。何かあった時に、頼ったりすることができるから。
少なくとも、今の自分に納得できない方は、自分に良さそうな刺激をいただけるコミュニティにいた方がいいです。
同時に、この人はかなり未来を見据えていました。だから若い世代(3代目の息子(いわゆる甥)、自分の息子)のすることをじっと見守っていました。
では、その若い世代は何をしたのかというと、これまでのプロダクトだけでは勝負ができない、代わりとなる製品を開発しよう、と。
これまでのプロダクトというのは、昭和40年以降の高度経済成長時代ならきっと受けるであろう、クラッシクな高級家具。
坂道を転げ落ちるかの如く業績が悪くなった頃というのは、IKEAやニトリの登場で、家具は一生ものではなく、買い替えが可能なものという時代がやってきてしまったからマルニ木工の家具が受けなくなったのです。
どうしたか?かつてネクストマルニという、12人の有名デザイナーを呼んで椅子を作るプロジェクトを行ったのですが、そのうちの1人の深澤直人というデザイナーとともに、新しい製品を開発しようと。
ちなみにですが、深澤直人の章もあります。幼少期を過ごし、美術大学に行き、セイコーエプソンで最初のキャリアを積みます。その後アメリカのデザイン会社に就職。アメリカ・ヨーロッパのデザイン界隈では有名人でした。
日本に帰国してからは、企業とのコラボ企画で、とてもデザインの良いプロダクトを開発していました。深澤もまた、家具のデザインというのはやったことのない新たな挑戦でした。
そうして開発したのが、「HIROSHIMA」という椅子でした。 何がすごいって、デザインを出すのは言い方悪いですが、そんなに難しい話ではなく、むしろ量産することができて初めて製品になるのかなと思います。
マルニ木工には、試作のプロ、木材加工のプロ、プロの技術をプログラミングするプロ、はてまた寸分違わずに正確に糊付けするプロと、家具作りに必要なプロが揃っていました。 さらに言うと、最初にミラノサローネに出展する際に、大手商社から「この家具を広めたい!」という熱意を持った人間が入社します。この人の持つノウハウによって海外でも売り込むができるようになったくらいです。
倒産寸前の頃からすでに「木工技術のマルニ」と言われていたくらいです。再生に必要な人員がある意味では揃っていました。
そして老舗メーカーですから、耐久性を含めた量産までに漕ぎ着ける力は備わっています。
これを持って、ミラノサローネの別展に出品。着実に世界からも評価を得ていきます。 現在、「HIROSHIMA」を中心とした家具は増えています。またミラノサローネでも本展と呼ばれる本会場での出展も行っています。
。こういった本を読んだ後って、絶対に気になるのですが、HPを見ると「HIROSHIMA」を中心とした椅子とテーブルの写真を見ると「うちのホームオフィスに置きたいなあ」と思うものです。
そして、アメリカのアップル本社での採用。何千もの椅子を納品しました。今では、ピーク時でも1ヶ月で800脚の椅子が作れるようになったとか。
2023年の広島サミットでは、会議室の椅子、テーブル、卓上国名プレートの発注が来ました。とはいえ、国の仕事だけあって、期間が限られている中でこれを用意したのだから、すごい‥。 8週間で製作した(デザインの期間込みか?)
ちなみに、マルニ木工は2028年には100年企業になります。
100年という歳月の中で、経営危機に陥ったり、プロダクトを変えないといけないこと、これまでのやり方ではダメだと突きつけられる時があること、様々なことを経験します。
この会社のすごいことは、きちんと現実を直視して変わることができたことでしょうか。 ファミリー企業だからこそできることってあるんだなあと思ったのでした。
■最後に
あるファミリー企業の栄枯盛衰を見ることができますが、おそらくここから衰だけに向かわないことでしょう。
これから起業したい方も、プロダクトができるまでを知り方もそうでない方もおすすめです。