こんばんわ、トーコです。
今日は、中藤玲の『安いニッポン』です。
■あらすじ
日本のディズニーランドの価格は世界最安で100円ショップだって100円で手に入るのは日本だけ。そういえば、物価は下がり続けていて、給与だって上がっていない…。
気が付けばいつの間にやら「安い国」となりつつある日本に、脱却するための糸口はどこにあるのやら。
■作品を読んで
日経新聞の連載を再編集し、新書化した本作品。図書館で借りたのですが、意外や意外、これリクエストで何人か待ちでした。
それだけ多くの人が意外と興味を持っており、危機感を持っている人は多いのだと思います。とはいえ、全体で見ればまだ少ないのでしょうが。
さて、本題に戻りましょう。
この作品は、多くの人がきっと日本人って貧しくなっているんだろうな、という予感が的中している事実をまざまざと示しています。
まずは、ディズニーランド。実は、世界中にあるディズニーランドの中で1番入場料が安いのが東京ディズニーリゾート。
トーコ1個人の感想ですが、8,200円払って、あの混み具合で全くアトラクションに乗れない、カメラでパーク内の建物の写真を撮ることを楽しみにする以外何も楽しみがないので、正直ディズニーランド行きたくないです。
かれこれ、干支1周分するくらい行ってません。20代のころ1度も行きませんでした(笑)。なので、値段が上がって人が減って混まなくなったら行こうかなと考えているくらいです。
あと、個人的にはパーク内の飲食も楽しめる程度の経済力がないと若干むなしくなる気がします。気持ちがいいのやら…。
でも、入場料が高いし、お土産代はどうしても飛んでいくから、飲み物は買わずに家から水筒を持ってきたってスゲーわ。
なのですが、実はアメリカのディズニーリゾートの入場料は日本の2倍の約16,000円で、上海やパリなどのほかの国のディズニーランドの入場料も1万円は超えています。
えーっと、おそらくパリや上海のディズニーランドってそんなに人気はないような気がしますが、それでも日本の安さは突出しています。
もう1つ例を挙げます。100円ショップです。
日本では100円ショップ行けばいろいろなものが売られています。ですが、タイや台湾では同じものでも為替レートでいうところの180円から210円相当で売られています。
確かに100円ショップに行けば様々なものが売られています。ときどきこれも100円なの、とこっちが驚くようなものも売られています。
さらに言えば、店員さんの対応もいい。はっきり言って100円のものを売っているのにこんなに親切に対応してくれるとは…、とこっちが感謝したくなるくらいです。
タイや台湾でなぜ100円ショップの商品が売れるようになったかと言えば、人件費、物価、賃料、所得が向上し、人々の購買力が上がったためである。
では、日本はどういう状況かと言えば、専門家はこう指摘する。
「日本は長いデフレによって、企業が価格転嫁するメカニズムが破壊されたからだ。」と指摘する。
製品の値上げができないと企業がもうからず、企業がもうからないと賃金が上がらず、賃金が上がらないと消費が増えず結果的に物価が上がらないーという悪循環が続いているというわけだ。そうして日本の「購買力」が弱まっていった。
安くていい品質のものがいいのだ、というのがずーっと続いていますが、それのおかげで犠牲になっていることは多々あります。
というか、賃金が上がってないのです。今の日本の状況って、物価はすごく静かに上がっています。
トーコもえらくショックだったのが、安いと思って買ったキットカットの長さが短くなっていたことです。5㎝くらいあったのに、3,4㎝くらいになってました。あの、短くするなら発表して、それか値上げしてもいいからそのままをキープして、と思いました。
とまあ、こんな感じにお菓子はステルス値上げが横行しています。企業も発表できないからという苦肉の策なのでしょうが。
あの、本当に負けてるんです。稼いでも稼いでも豊かになれないのはそもそもこんな事情があるからです。
というか、モノやサービスに詳しい東大の教授も指摘していますが、100円ショップの値段が40年も据え置きの方が異常です。そもそも経済学的に見れば、その間物価はどうなったのよ、と突っ込まれるはずなのですが…。
さらに言えば、所得1400万円は安いのです。…、はい⁉と思った方も多いと思います。
とはいえ、アメリカの公式の指標ではサンフランシスコで家族4人が年収1400万円で暮らすには低所得者に該当するというものです。
それくらいサンフランシスコでは家賃や物価が高騰しています。というか、昼食ラーメン、餃子、お茶を頼んだら約3,700円って、おいとツッコミたくなるくらいの物価です。
ワンコインで食べられる日本ってすごい。しかも味がおいしいのですから。おそらく、サンフランシスコに赴任することになった商社マンとかは最悪でしょうね。物価分の差額を支給されない限りお金が全くたまらない、それどころか結構持ち出す羽目になりそうですね。
この所得がえらく低いぞ問題の問題点は、優秀な人材を呼ぶことも雇うことも難しくなるということでしょうか。
まず、日本の年功序列賃金だと新卒の時点での優秀な人材が獲得できません。日本の初任給が安すぎてグローバルでは全く戦えないのです。
そりゃ人間ですから、賃金が高い会社に就職はしたいでしょう。ふつうは。
ちなみにですが、NTTでは研究開発人材は35歳までに3割はGAFAなどに引き抜かれます。新卒を大切に育てても、もはや供給源。
繋ぎ止めのためには若手に給料を大幅アップさせないといけないのですが、年寄たちの反発は大きいというジレンマに苦しみます。
日本の年功序列制度はそろそろ限界(経団連会長はもう言った)なのです。
加えて、賃金の満足度も低ければ、住居、住まいの周辺環境、レジャー・余暇の満足度も低いのです。
企業が発展して個人に還元されていればいいのですが、賃金が低く、個人が幸せになれないなら、企業は行き詰まります。
極端ですが、トーコの会社で今起こっていることですが、できる社員からどんどん見切りをつけ、残された人はますます苦しむという悪循環を迎えます。そこまでくると企業が立ち上がるきっかけが見つかりません。
そして、スキーリゾートでおなじみのニセコや技術力のある中小企業がどんどん外国に買われています。
なんだか前々回の「ローマ人の物語」を彷彿させます。306.「ローマ世界の終焉」。
ローマ帝国内でできる指導者がいなくなった瞬間蛮族に襲われるっていう構図です。1回目はローマは焼け野原になりました。
それは大袈裟なと思うかもしれません。
でも、外国人に買われ、外国人旅行者に外国からの出稼ぎのガイドばかり(極端な話)になってしまえば、ラーメンだって観光地価格になってしまい(ニセコではラーメンは2000円)、地元の人が買えなくなったり、出稼ぎガイドの金の使い道はシーズンオフに母国に帰って使うなら街にお金は落ちません。
トータルで見ると町に入るお金よりも町外に入るお金の方が大きい状況です。どこかで是正しないと大変なことになります。
しかも、ニセコになぜスキーしに来るかと言えば、滞在費が安いから。おったまげー、な理由ですが、世界標準から見れば間違いなく安い国。
そして、外国人が来ることで街にお金が思った以上に落ちないだけでなく、家賃が高くなりとても若者が住めなくなる人が続発しています。
また、スキーをしに来た人も居酒屋のラーメンが3000円と高すぎて何回もこれないと嘆く年収1100万円の日本人もいます。
年収1100万の人でさえ高いといいます。日本標準だとこの人は高所得者です。
1番衝撃だったのは、アニメも中国企業に買われ始めています。というか、アニメーターの処遇があまりにも違い過ぎるので、日本側も早急に改善しないとまわりまわって質の低下が起こりえます。
というか、アニメーターってかなりクリエイティブなことをしているにもかかわらず、新人だと年収100万円で休みが5.4日です。それなりのポジションになっても平均年収は440万円です。
一方、中国企業だと年収は日本の軽く3倍は出しますし、これだけ質のいい労働者をちょっと高く(でも企業側は余裕で出せる)賃金で雇用すればお互いがwin-winになります。
では、どうすればいいのか。答えは見えています。インフレ率以上の賃金上昇をすることです。
ネットフリックスなどのグローバル企業は容赦なくグローバル標準で値上げすることでしょう。今は100円くらいでしょうが、長い目で見れば大きく値上げすると思いますよ。
それくらい日本はいろいろと岐路に立っているのです。これを読んでも安いこと、コスパがいいこと=よいことでしょうかね。
■最後に
人々が薄々感じていた雑感が現実のデータとなって示されている本です。思っていた以上の現実にショックを受ける方もいると思います。
コロナが明けたらきっと今以上に海外旅行に行く人や財を買う人は減ると思います。そこが分かれ目のような気がするのですが。