こんばんわ、トーコです。
今日は、田辺聖子の『田辺聖子の人生あまから川柳』です。
■あらすじ
今の日本人に足りないのは、笑いなのではないか。
笑いなら、川柳にあるで、なんていう声が聞こえてきます。
川柳は五・七・五の最小の単語で人間心理をさらりと突いて爆笑させます。
そんな奥の深く、世界へいざないます。
■作品を読んで
著者の田辺聖子さんは、先日お亡くなりになり、つい最近お別れの会をやったそうです。
田辺聖子さん自身はたくさんの作品を書きましたし、このブログでも何作か書きました。
さらに言えば、訃報のニュースを流したときに、マスコミ各社が田辺聖子さんの代表作として挙げた作品がバラバラだったとか。
ある新聞は「ジョゼと虎と魚たち」と挙げたり、別な新聞では「新訳 源氏物語」を挙げたりと忙しい。
それだけ作品の幅が広いことを表しています。
トーコブログでたとえれば、55は恋愛小説で、63は古典です。うん、極端だ。
作品の冒頭に書いてありますが、著者は川柳がかなり好きなようで、一愛好者としてこの作品を書いたとか。
まあ、でも言葉の端々から想いは伝わってきます。
川柳が好きなんだろうな。好きだから率直に感想書くし、愛のある批評を書けるのでしょう。
ちょっとクスっと来たのはこの一句。
いじめ甲斐ある人を待つ胡瓜もみ
いじめ甲斐のある人ってどんな人だよ、とツッコミたくなります。
なんというか、このさじ加減を間違えると職場だとパワハラ、セクハラ、モラハラと適当な理由を言われ、何の気ないのに言った人は絞められます。
今の世知がない世の中ではなかなかいじめ甲斐のある人って少なくなったようにも思います。
撰者である著者のいじめ甲斐のある人の解釈は、いじめたら向こうも同じように、その半分でも返すっていう精神の働きがある人のことです。
で、末の句の「きゅうりもみ」。この句が女性が詠んでいるんだろうと予想が付きます。
きゅうりをもむなんて女性が普段台所でやることですからね。
きゅうりをもみながら、さーてどういじめてやろうかと考えている。
これって、夫婦の様子を描いた一コマだということが見えてきました。
こうして分析すると川柳もなかなかです。たった31音の中にこれだけの情報が詰まっているのですから。
人間観察のレベルが高いです。
また、著者は上手い川柳を詠む人は、薄情な人ではないということもおっしゃっています。
確かに読んでいると、情が分かる人がうまく詠めているようにも思います。
和歌だとなんだか雅な雰囲気を醸し出していますが、川柳は日常の言葉で綴られているので情けがにじみ出てくるのだと思います。
川柳ってこうしてみると面白いものです。
■終わりに
様々な川柳を田辺聖子さんの解説付きで読めるという非常に豪華な作品です。
こうして読むと川柳の魅力やほかの五・七・五で表現しているものとの違いも分かってきます。
日常もこうして観察するといろいろな面白さが出てきます。
[…] 55.「女の日時計」、63.「おちくぼ姫」、185.「田辺聖子の人生あまから川柳」。 […]