こんにちは。鈴木Booksの店主です。
今日は、江國香織『外の世界の話を聞かせて』です。
■作品を読んで
振り替えると、この作品は意外と高校生の子でも読みやすいのかなと思う。
というのも、高校生の陽日(ひなた)の目線で語られることが多いので、なんというかスマホや今どきのワードが出てきてちょっと驚きます。
店主の勝手なイメージですが、スマホやネットフリックスユーザーなイメージがないので。
とはいえ、作中ではスマートフォンと正式名称で書かれていますが、とても現代的な印象を与えます。
それと、陽日の高校生活とその合間に家から遠いけど今でも南天文庫に通うという、動と静の場面が両方とも描かれています。
南天文庫に通うというのは、ある意味部活動をしているというか、家と学校以外の第3の場所と違う大人がいるというのもいい体験何だろうなと思います。
悩み多き高校生にとって、本が読めてというよりも、見知らぬ子供たちばかりで誰も変に干渉してこない場所というのは、必須なのかもしれない。高校生活も唯一の友達と呼べる子は不登校になり、めったに学校に来ませんし、連絡も頻繁にくる子ではない。お昼休みも、教室ではなく別な場所でご飯を食べる。
その別の場所によくわからない仲もそんなに良くない子たちが現れる。しかも、その出来事を不登校の友人に話したら、突然連絡が来なくなったり。「友達って厄介」という陽日。
そういえば、店主もそんなことあったなあと思い出します。クラスにはしゃべる子はいないけど、別なクラスには誰かしらいるからそこは助かっていたなと。
「なんでここに来るんだろう」とふと思う陽日の心の中の思いは、こう解決します。「ここは外の世界じゃないって思ってた」。
ただ、店主としては、これを書こうと思った瞬間に、「あ、陽日はこう思っていたのかもしれないな」と思いました。
きっと、学校とも家と違う場所が無意識に欲しかったんだと思います。友人関係をリセットできる場所がきっと欲しかったんだろうな。
一方の南天文庫はあやめさんと亡くなった母輝子さんの2人で運営されていました。
あやめさんが子供のころ、ピンクの家と呼んでいた古い公民館跡地にあやめさん一家、あやめさんの父親の兄一家、劇団に所属していた夫婦とその子供たちの3家族で暮らしていました。
その時の記憶が時折混ざって登場します。
さらに、劇団に所属していた一家の姉と弟は物語に登場します。特に弟功は、昼間はSEをしながら、夜はバーなどの飲食店の手伝い、更に家には拾ってきた男(姉と一時期結婚していた)がいたりと盛沢山の伏線があります。
まるで、子供のころのピンクの家を無意識に再現しているかのようですし、姉の真実子は気味悪く思います。
姉真実子は対照的に、自分の生活に他人を入れたくないという人なので、大人になったあやめさんや功が家の中に他人を入れている状況が理解できないと言います。
育った環境でいろいろな思いが入るんだなあと思うのですが、これも伏線。
つまり、南天文庫を軸に、かつての時代と今の時代、大人と高校生の今となかなかの伏線の多さよ…。
ですが、冷静に振り返った時に、「伏線がこんなにあったのか」と驚きますが、それがすべて必要なパーツであり、物語を構成する要素としてとても自然に展開しているから面白い。
私はこんな物語が好きなんだなあ、と思いました。
そして、最後にこのタイトルの「外の世界の話を聞かせて」。これはあやめさんが陽日に話しかけるために言う言葉。
外の世界と完全に切り離されている南天文庫にいるあやめさんにとって、外の世界の話は面白いもの。
物語の最後に陽日が「変化が嫌なんだと思う」と言った時、きっとあやめさんと功に理解はされないだろうと思うけど、返す2人を見て、変化についての所感を述べていたんだって言うことに気づきます。
この文庫は、今の場所を追われることになり、あやめさんの住んでいる家で再オープンするという流れを提示します。
最後はまさかですが、あやめさんの母親の章で終わります。それは、何か次の舞台に行くかのようです。
■最後に
冷静に振り返ると伏線が多くありますが、いろいろと楽しめる作品です。
高校生が影の主人公の話になっているので、とても読みやすい作品だなと思いました。