こんばんわ、鈴木Booksの店主です。
今回は、G.ガルシア=マルケスの『エレンディラ』の紹介です。
■あらすじ
この作品は、ガルシア=マルケスの短篇集となっており、あらすじには、「大人のための残酷な童話」と書かれています。
『百年の孤独』と『族長の秋』の間の時期の短編集で、なかなかシュールな笑いを誘います。
■作品を読んで
ガルシア=マルケスの中短編はちくま文庫と河出文庫の2つから出ており、内容も若干ラップしています。
ラップしているって言えるのは、2冊とも手元にあったからです。
個人的には、「この世でいちばん美しい水死体」という作品が好きですね。これは河出文庫版でも収録されています。
お話としてはわずか10頁ですが、なんというか奇想天外なにおいがプンプンします。
ストーリーは、ある海の近くの村に、大きな男の水死体が出現します。男たちは村の人間かを確かめている間に、女たちはその水死体を見て「あの人はエステーバンよ」と噂をしだします。
というのも、男たちが村中を捜索している間に、エステーバンの死体を洗ったり世話しているうちに、ずいぶん大きく、立派な体つきの男であることに気づきます。さらに、想像力たくましく、「きっとあの男は、おとなしく従順で、痛ましい人間なのだ」と言い出します。
そうこうしているうちに、葬儀の時間がやってきて、「この村の人間じゃないなら」と誰かがエステーバンの父親、母親、親せきを引き受けます。そうして、死体は海に流されていきました。
きっと、村が明るく変わるのではないか?という予兆を残して。
この作品については解説がほぼないのですが、あっという間に終わるストーリーと、まだ後味の良い余韻を残して終わってくれます。
ただ、とても幻想的な作品の部類にも入るし、きっとガルシア=マルケスが幼いころに祖母から聞いた昔話のひとつなのだと思います。
同時にそれは、民衆の記憶としての物語という面もあります。この2つが実はこの短編集の特徴でもあります。
ガルシア=マルケスって、物語を書く時に意識していたのが、「そうか、幼い時におばあちゃんが話してくれたように書けばいいんだ」という感じで書いていたようなので。
身も蓋もないの代表は、「無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語」でしょうか。あ、「エレンディラ」の本当の名前は、こちらです。
これは80ページくらいのまあまあ文量の多い作品です。というか、この短編集の中では1番長い。
でっぷり太ったおばあちゃんと、美しいけど結構召使い度高い状態でおばあちゃんの世話をするエレンディラの物語です。
何がすごいって、でっぷり太って超強欲なおばあちゃんは、エレンディラを売ってお金を稼ぎます。無垢なエレンディラを無垢じゃなくさせるってすごい話ですが。
そんな日々の中、ウリセスという青年に出会い、2人は淡い初恋のような状態になります。しかし、最後は「へ?」っとなるような結末になります。なんというか、身も蓋もないとはこのこと…。
これは確かに映画化すると面白そうなストーリーではあります。何回も見たいとは思わないけど…。(そうじゃない方もいる事でしょう。)
何というか、このストーリー展開と題材は日本人の感覚としては不思議なものに見えます。幻想的だけど、ラテンアメリカの世界ってこうなんだ…というのが、驚きとともにあります。だから、魔術的だの、マジックリアリズムだの言われる所以なのでしょう。
ですが、この長くて80ページの身も蓋もないエレンディラのお話で、短いと10ページ足らずのお話というこのギャップ感が良かったりします。
ガルシア=マルケスに挑戦したい、けどあんな長いもの読めません、という方におすすめの短篇集です。