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【考えさせられる本】56.『破戒』 著:島崎藤村

投稿日:4月 9, 2017 更新日:

こんばんわ、ト―コです。

今日は島崎藤村の『破戒』です。

破戒 (新潮文庫)

 

■あらすじ

昔の身分で最下層であるえた出身の主人公の男は自分の身分を隠したまま学校の教師をしていました。

しかし職務に従事する中で、だんだん自分の出自がばれてしまうのではないかと考え込み、苦しんでいき、やがて自分はえただと告白し、学校を去ることにしました。

そんな中で同僚の友人や師と仰いでいたえた出身の活動家、弁護士、下宿にいた生徒の姉は彼の味方でした。

友人もはじめはえたをばかにしたような発言がありましたが、最後は主人公を助けます。

弁護士は物語の最後で主人公にこれからの道筋を教えてくれました。

活動家は物語の最後で死にますが、その妻(未亡人)が下宿にいた生徒の姉を引き取ります。

■作品を読んで

この話の中で、下宿にいた生徒の姉は主人公が好きで、主人公もまた好きでした。

主人公が自分の身分を告白した後、この女の人は主人公の友人にこう言います。

主人公のライバルの同僚に主人公がえただということを聞かされた。

さらに自分の親戚に町で偉い人がいることを延々と話した。

そんな男より、えたであったために自分の地位をすべて捨てなければならない主人公の方がよっぽどいい人ではないか。

とても爽快な気分になるセリフです。

そういう方が多くいれば、いじめや差別は起こらないでしょうね。

 

また、差別することはいいことではありません。それに社会的損失も多いかと思います。

たとえ身分が低くても、素晴らしい能力や人格を持っているのに身分を聞いた瞬間に門戸を閉ざすようなことはあってはならないな、と思います。

これは昔の日本ではよくあったこと。戦争に負けたことによって身分制度がほぼ崩壊したからまだいいもの。

世界ではまだまだこの状況から抜け出せない国、地域がたくさんありますので。

底辺にあるのは部落差別問題ですが、旧士族の没落や町の有力者が団結していたりなどの描かれている当時の社会問題も書かれています。

今の日本がこんな風潮がなくて本当に良かったです。

ただ、今の世の中がこの作品の時代までに戻りそうで若干怖いのですが…。

■最後に

とてもいい本だと思います。

文章は硬くないし、考えさせられることはたくさんあります。非常にとっつきやすいです。

現代においても少しずつですが、差別とは似た側面を持つ問題(サクッといえば格差問題とか)が増えてきたように思います。

差別やそれと似たような問題など、考えるいいきっかけになると思います。

 

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