こんばんわ、トーコです。
今日は、金原瑞人の「翻訳家じゃなくてカレー屋になるはずだった」です。
■あらすじ
著者の金原瑞人さんは、翻訳家として年間かなりのペースで翻訳本を出版する一方で、刊行当時法政大学の社会学部で教鞭をとっていました。
タイトルの通り、カレー屋をやるはずが、いつの間にやら翻訳家になっていた話、翻訳のよもやま話、江國香織さんや教え子たちと対話など盛りだくさんな内容となっています。
■作品を読んで
この本に出会ったのは、雑誌のインタビュー記事です。
代官山蔦屋書店の旅の棚にある雑誌に著者のインタビュー記事があり、その中でこの本が著者のクレジットに記載されていました。
へんなタイトルだったので、結構気になったので読んでみました。
なんというか、のっけから笑えます。
なぜ、翻訳家になったのかといえば、指導教授の犬飼先生が「カレー屋なんてあとからできるから大学院に来ないか」と誘われたかららしい。
大学院の存在を知らなかった著者は、大学院はどんなところかと聞くと、「学部の授業に毛が生えたような授業を週2日受けて、あとは本を読めばいい。奨学金ももらえるよ」
おお、オイルショックの時代はこんなだったのね…。まあ、あながち間違いではないけど。
それから、初めての翻訳本もこの犬飼先生経由してやってきたそうだ。
スタートのこのユルさは一体何なんだろう。翻訳家になったきっかけがまさかの偶然だったとは。
また、この作品を通して翻訳家の仕事を垣間見ることができます。
他の翻訳家のインタビューかなんかで聞いたのですが、著者も翻訳本の寿命はせいぜい20年だとはっきり明言しています。
2,30年もすれば使われていない言葉もたくさん出てきて、すでにある翻訳本が古くなってしまうからです。
確かに、「不思議の国のアリス」の主人公が山の手言葉で話しているというのも、違和感がありすぎる…。なんか、イメージとしては、普通の現代の口調で話していてほしい。
あとは、収入面。著者も若いころは相当貧しい生活だったらしく、なんでも子どもを区立の保育園に入れたら収入がなさ過ぎて一銭も払っていなかったとか。金原ひとみさんってそんな状態で育ったのでしょうね…。
その下のランクは生活保護世帯だったそうで、本当に最低所得だったようです。
今は超のつく売れっ子+大学教授(多分)なので、収入は結構ある方だと思います。
ですが、作品にも記載していますが収入に関してはとてもいいとは言えない職業のようです。
経済的に安定した道の傍らで翻訳するか、貧乏に耐えるか、文学翻訳ではなくビジネス翻訳等の別の翻訳をするか、がおススメの道のようです。
会社員の方が生活的にはいいみたいです。
まあ、こうした作品を通して他の人の人生を垣間見るのは結構面白いし、なるほどなと思います。
■最後に
このエッセイを通して翻訳家の仕事を垣間見ることができます。
翻訳にも寿命があったり、アイを訳すのは結構難しかったり、様々な事情があるようです。
他の人の人生を垣間見ることができるのが本だな、本のよさを再確認できます。