こんばんわ、トーコです。
今日は、あさのあつこの『ゆらやみ』です。
■あらすじ
女人禁制の間歩と呼ばれる石見銀山の坑道で生まれたお登枝は、育ての親とともに置屋で生活をしていた。
そんなある日、お登枝はいよいよ客をとることになる。そんな現実を前に想い人である伊夫のもとへ行く。
そしてある事件に巻き込まれる。
■作品を読んで
あっという間に読めました。そして、最後を先に読まない方が純粋に楽しめます。
途中を読みながら、ラストはこうなるのにな、と頭を何かがよぎるので。
冒頭はお登枝の語りからスタートします。
自分の生い立ち、つまり間歩と呼ばれる鉱山の坑道で生まれ、育ての親である六蔵爺と暮らしていました。
が、六蔵爺が病気になり暮らしに困ったタイミングで、「かぐら」という石見のふもとの街で1番大きい置屋に引き取られます。
おそのという女将がお登枝の美貌と将来性を考えての引き取りです。このおそのというオーナーはお登枝の将来性を見事に当てましたけどね。
やがて六蔵爺がなくなりしばらくして、お登枝もいよいよおそのに言われるがままに遊女として客をとらなければならなくなります。
とはいえ、お登枝もさすがに女です。遊女として客をとる前日に想い人である伊夫のもとに走ります。
そこでお登枝は男に襲われます。そこを助けたのは伊夫でした。伊夫はお登枝を襲った男を殺します。
お登枝は、男を始末した後の伊夫に抱かれます。
お登枝は処女を売りにしようとしているのに、いきなり自分の商品価値をなくす行動をとります。
しかし、お登枝の美貌と頭の良さによって、うまく有力者たちに愛されます。
なかなか遊女としては稼ぎよく、順風満帆のようでした。
でも、お登枝が心から愛した男は伊夫だけでした。たとえどんな客が来ようとも、です。
逢えなくても伊夫がいればそれで大丈夫。伊夫の存在がお登枝の支えでもありました。
そんな恋や想いが持てる瞬間が一生のうちに一度でもあればきっと幸せなんだろうな、と最近トーコはつくづく思います。
本当に人間って強くなるんだな、支えがあるっていいんだな、と。
なんかうらやましいけど、自分にはきっと現実として訪れることのない話ですがね。
お登枝にもやがて商人の馬蔵から身請話が出てきました。
身請とは置屋にいくらか払って女郎を引き取ること。お登枝の場合は、なんと馬蔵の妻になることです。
はっきり言って遊女から正妻に鳴るなんてあまり例がありません。大体は妾でしょうね。
そんなラッキーな話があっても、お登枝は石見に残ると言います。伊夫と離れたくないからです。
しかし、そのころ伊夫は鉱山の男特有の病にかかっていました。死期が近づいていました。
さらに言えばお登枝はまた男に襲われ、伊夫は再びその男を始末しに消えます。
伊夫はこれっきり姿を見せませんでした。
お登枝と伊夫の恋愛劇は決して結ばれないこと、結ばれないからこそ燃えるものがあります。矛盾していますが、よくある設定。
女は菩薩にも夜叉にもなれるという強さというか、ある種の恐ろしさを秘めた生き物であることを感じさせます。
また、用意されている伏線も様々な仕掛けがあり、それがまた2人の官能の世界をうまく引き出してもいます。
■最後に
美しく儚い物語です。決して結ばれることのない2人ですが、向かっていく方向は一緒です。
また、その想いは一生のものとなっています。
物語の深みと女の美しさと強さが静かに出ています。