こんばんわ、トーコです。
今日は、阿川佐和子の『残るは食欲』です。
■あらすじ
食べることが小さい頃から大好きな著者。今日もあらゆるものを作っては食べ、いただいては食べております。
なんだか笑いが止まらないエッセイです。
■作品を読んで
阿川佐和子と言えば、「聞く力」でしょうか。新書の割にかなり売れ、インタビュアーとしての顔も覗かせております。とはいえ、その番組も今年の3月で終わってしまいましたが。
でも、爆笑問題のラジオを聞く限り、この人静かに面白いです。なので、どんなものを書いているのかすごく気になっていました。
それにしても、面白いです。このエッセイ。食に関することを綴っているのですが、まあ面白い。
のっけからなかなかすごい感想が書かれてますよ。
お腹がじゅうぶんに空っぽな状態で食卓につき、さあ、これからおいしいものを食べるぞと期待に胃袋を膨らませる瞬間の喜びは、お腹を叩いて、ああ、もう入りきらない!と叫ぶときよりもずっとシアワセだと、私は、食事の一口目を味わうたび、あるいは「いただきます」と手を合わせるたびに、断固として、そう思う。
この人は絶対に食べることに関しては筋金入りだぞ…。食べる瞬間って、おいおい。
しかも、こののっけのエッセイのタイトルは「一丁の至福」。一丁と数えるものと言えば、豆腐です。
阿川さんが冷蔵庫を見たら豆腐がおりました。2日前にたまたま通りかかった商店街の豆腐屋さんで買った木綿と絹の豆腐。
豆腐屋さんになかなか遭遇できないので、スーパーの安いパックの豆腐ばかりのトーコからするとうらやましい限り。
何にして食べようかと考える描写も、読んでいるこっちまでほっこりしたり、くすくす笑ったりと結構読むのが楽しいです。
そして何よりその食べ物を前にして冷静に実況するアガワさんも読者からすると可笑しかったりします。
豆腐を湯豆腐として食べ終わった後の豆腐の後味はすごく素敵なもので、それ以来豆腐屋さんの豆腐に限るのだとか。さて、その時の感想です。
空腹ゆえか、こんなおいしい湯豆腐には久しくめぐり逢っていなかったと思うほどに感動した。
さてと。終わってしまった。
すげー。食べ物1つでここまで書きますか。なんか、すごく昼休みが終わって仕事に戻らにゃならないサラリーマンの心情。本当にたべるの好きなんだな、この人と思ってしまいます。
暫く読み進めると、タイトルが「ギュイーン料理」。はあ、何でしょう。すぐに正体が分かります。しばらく眠っていたフードプロセッサーのことのようでした。
フードプロセッサーってそこまで使わないでしょうね、きっと。トーコもブレンダーを持ってますが(父親が出席した結婚式の引き出物カタログよりいただく)、なかなか使いません。これを混ぜるときはきっとブレンダーの方がいい、という時にしか使いません。
ご多分にも漏れず、アガワさん家もそんな感じのようでした。レシピを聞いたら結構速いスピードで作ってみるアガワさん。
香菜とタマネギ、生姜、レモン、粉末のココナッツミルク、タバスコ、シェリービネガーを準備したら、フードプロセッサーに入れるだけ。
ギュイーンという音を立てて混ぜたら、はい出来上がり。コリアンダーチャツネの出来上がり。
思いのほかうまくできたようで、絶賛フードプロセッサー活用中。トマトジュースやじゃがいものスープを作ったそうです。
この人の場合は、食べることも好きなのでしょうが、作ることも好きなタイプのようです。まあ、アガワさん曰く、
私は情報整理能力には欠けるが、こと料理に関して実行力があるほうだと自負している。実行力というより、いわば食欲に対する脳の指令系統が単純直結型なのだろう。料理本を見て、あるいは料理番組を途中からでも目にするや、即、作りたくなる。…だいたいを把握し、改めて買い物へ走らずにすむ範囲内で、とにかく今、作ってしまおうと思い立つ。
まあ、正確に言えば、食べたいから作る、なのでしょう。それにしても、なんかすごい執念。
食べること=作ることなのでしょうね。そういえば、食べる前の工程も必ずエッセイで描かれているっけ。
ちゃんと作っているのも個人的にはいい。有名人なんて作ってないでしょ、特にこの方は作家のお嬢さんなんだから、なおのこと。という先入観を払拭させます。
「カブと風邪」というタイトルもすごい。
カブと小松菜を松山空港の出発ロビーで買い、そのまま機内に持ち込み、家に帰ったら何を作ろうかと考えていたら、風邪がぶり返したらしく、そのまま寝込む。
小松菜はゆがいて冷凍庫へ。カブはどうしたかというと、薬味のネギと生姜を煮立たせてスープにし、そこにカブを6等分に切って放りこむ。葉は塩もみにして保存する。
なんと、風邪で寝込んでいた期間はこれで生きのびたのだとか。本人曰く120円で5日生きたそうです。節約コンテスト出られそう、とか言いながら。ただし、おいしいけど、飽きました、カブにも風邪にもというオチです。くすっと笑うしかないです。
タマネギについて書かれたエッセイも面白いです。ちょうど読み返してみたら、今タマネギが結構あるので、オニオングラタンスープ作ってみたくなりました。とはいえ、飴色に変わるまでの道のり長そう…。
そこから小さいころのクリームコロッケの思い出や(かなり謎の趣味をお持ちです。幼き頃から)、大学時代の片想い君のために一生懸命作ったサンドイッチに及びます。大学時代の思い出で若干感傷に浸ります。
でも、締めは手元のタマネギで何作るかというのですから、ふふふと笑うしかない。なんつー、切り替えの早さ。
と、このように食べ物の話がたくさん詰まっています。
■最後に
食べものを目にすると、どうやって調理しようか、味つけようかと結構速いスピードで考えてしまう著者が綴るおいしそうな食べものエッセイです。
そして、その間のエピソードがまた面白くてくすくす笑ってしまいます。楽しいエッセイです。
[…] 307.「残るは食欲」 […]
[…] 307.『残るは食欲』、328.『アガワ流生きるピント』 […]