こんばんわ、トーコです。
今日は、町田そのこの『ぎょらん』です。
■あらすじ
ストーリーは、引きこもりの青年の朱鷺は、地方都市の葬儀会社に勤めるようになります。なぜ彼が引きこもりになったかと言うと、友人が自殺したときに「ぎょらん」を見たから。「ぎょらん」とは、人が死ぬ際に残す珠のこと。
朱鷺はこの「ぎょらん」伝説を調べ続けていました。
ある時、妹の恋人(不倫相手)が亡くなります。その時に「ぎょらん」を一緒に見ます。同時に朱鷺は少しずつですが、社会にもどることになります。
■作品を読んで
この作品は、人が死ぬときに残す「ぎょらん」を巡った短編です。
一貫して登場する人物は、引きこもりの青年の朱鷺。朱鷺は最初は引きこもりでしたが、葬儀屋さんに就職し、そこで多くの人を見送っていきます。
同時に、この作品は、この引きこもりの青年朱鷺の再生の物語でもあります。
葬式というと、最後に死者と生者が混ざり合う場所で、どんな思いが溢れるのでしょうか?
結局の選択を迫られた高校生に対し、朱鷺はこう言います。
変化のなかった苦しみが形を変えます。結果はどうなるか分かりませんが、苦しみから解放される可能性があると思います。僕はその可能性にかけます。
なかなか決心がつかないけど、背中を押すことはできます。そしてそれを伝えられた高校生の子は、母親に伝えます。母親も少しずつ変わっていきます。
短編集の最後で、朱鷺を支え続けたお母さんが、病気になります。
その時に「ぎょらん」の伝説を作った石井と言う男性の遺族に会います。驚くほど近くにいた方でした。同時に、朱鷺にとっては、向き合いたくなかった過去とも向き合うことにもなりました。
友人の苦しみに支配され、自分の罪に責め立てられ時は動けなくなったこと、再確認するのでした。
この作品を読んでいると、葬儀屋さんの裏側もちょっと覗けます。作品の要所要所で、葬儀屋用語が出てきます。
文庫本のあとがきは壇蜜が書いています。ちなみに、この方も芸能界に入る前は葬儀学校に通っており(っていうか、そんな学校があるんか)、あとがきの末尾で当時の苦労話を語っています。
この作品を読んだ時はPDFのデータで読んでいたそうですが、いちいち登場人物のセリフのフォントを変えたり、文字を大きくさせるるなどの変化をつけていたそうです。
それはそれで楽しい電子書籍の読み方なんだろうなと思いました。というか、すごく斬新なのですが…。
死してなおわかるものもあります。けど、それはもっと早く気がつきたいと思う一方で、向き合いきれない自分の弱さもあります。
なんだか知りませんが、この作品を読んでいて、トーコの人生至上2冊目に泣きました。 登場人物の感情に思わず移入したからだと思うんですが。
とても素敵な作品です。
■最後に
「ぎょらん」をきっかけに引きこもりになった青年が、就職し、様々な変化を迎えます。
同時に死者にとっては最後のお別れである葬儀会社を舞台にしたというのはとてもミソな作品です。
とても読み応えのある、再生の物語です。