こんばんは、鈴木Booksの店主です。
今日は、江國香織『読んでばっか』です。
■あらすじ
さて、作家の方ってどんな本を読んでいるのでしょうか?
ちょっと気になる方も、そうでない方も是非手に取ってほしい本。面白い本ありますよ。
■作品を読んで
この作品は、新聞や雑誌等で発表した書評なのか、書評というよりもっと気楽な本を読んだ記録が収録されています。
出典元を見ると、文庫バージョンになった際の解説とかもあります。
本人曰く、佐野洋子さんの『嘘ばっか』にあやかって、『読んでばっか』としたのだとか。
この印象的な表紙は誰だろう‥と思ったら、山本容子さんでした。
では、本編にいきましょう。
というか、とにかくジャンルが多種多様。おそらく、小説・物語といったものはオールジャンルで読んでますね‥というレベルです。
結構外国のミステリー系作家さんのものも取り上げており、「本当にいろいろ読んでるわ、この方」というラインナップです。
まず最初に、アンケートと評して、どうやって本を読んでいるのかについてを語っています。
1番面白い答えは、「紙の本はどのように収蔵していますか?」という質問に、「どうすればいいか教えてほしい。家じゅう本だらけです。でも、わたしはそれが嫌ではありません」と回答。
うん、これは究極の本好きですね。
というか、このアンケート結果だけでこの方はマジで本が好きなんだなあと思いましたが。
第1章にあたる「なつかしい読書」は、江國さんが出会った読書について。
『絵本を抱えて部屋のすみへ』という作品では、江國さんがこれまでに出会った絵本について書いているので、絵本についてはかなり抜かれて(近年発表していない?)いますが、それでもそれぞれの作家さんとの出会いについてまとめられています。
例えば石井桃子さんについて。この方がいなかったら、日本の児童文学の世界は変わっていたであろう方(個人的にはもっとフォーカスしてもいいのかなと思いますが)。
江國さんも同様の感想を持っていて、「石井桃子さん出現以前と以後があると私は思っていて、自分が以後に生れたことに、とても感謝している。」とエッセイの中で述べており、「うんうん」と激しく同意。
それに児童文学にまつわる様々な仕事をしながら、児童文学の普及に努めていたので、いろいろと頭が下がります。
江國さん的には、ピーター・ラビットシリーズなら、モペットちゃんの絵本が完璧で、どの家に引越しても手元にしっかりと置いているのだとか。
どんな作品かいまいち理解していないので、読んでみよう。
アリソン・アトリーの『時の旅人』が出てきて、「あ、すごくなつかしい」と思いました。
小学校の頃教科書に載っており、続きが気になって図書館で本を借りて読んだこと。なんでちゃんと行きつくことができたのかかなり不思議でした。
まさかこんな形で再会するとは思わなかった。
書評のような作品のいいところは、次の読書リストを見つけることができること。
個人的には、庄野潤三という作家を初めて知り、ひっそりと在り続ける感じの作品って珍しいなあと思う。
紹介しているエッセイの第1文目が、「新型ウイルスのせいで営業自粛していた本屋さんがひさしぶりにあいた日、講談社文芸文庫の新刊として『庭の山の木』が積まれているのを発見した私は、飛びあがるほど嬉しかった」という出だし。
なんだかこっちまで嬉しくなるような出だしです。
この時点で、この方が飛びあがるほど嬉しかった本ってどんな本なんだ?と思う方もいることでしょう。
その先の第3章にも、庄野潤三作品は紹介されていますが、ちょっと気になります。
第2章は、ある作品を読んでの書評です。
ここで読んだことのある作品、そうでない作品が登場しますが、読んだことのある作品なら「うんうん、そうそう」というポイントや「あれ?そうだっけ?」と違う意味での確認ができそう。
読んだことのない作品なら、読んでみたい作品リストに加えて、ついでに積読本にするのもおすすめです。
積読に関しての主義主張はみなさまにお任せしますが、店主はアリだと思う。
佐野洋子作品が結構取り上げられていますが、これは江國さん自身佐野洋子作品の影響も受けていますし、なんかの企画でどうやら一緒に旅もしたらしい。
個人的に別な方の紹介で、佐野洋子作品は気になっていたのですが、早く読んでみたいなあと思うのでした。
他にも金原ひとみさんや川上未映子さんの人物評があったり、須賀敦子さん評(正確には、『霧の向こうに住みたい』というエッセイの解説)や朝吹真理子『TIMELESS』の解説文もあります。
須賀さんと朝吹さんの作品は読んでいたので、「そういえばこれは読んだぞ」と思いました。
■最後に
思った以上に多彩なジャンルがあるなあと思う、本の紹介でした。
これはとても素敵な作品です。さて、次何を読もうかなの参考になること間違いなしです。