ある読書好きの女子が綴るブック記録

このサイトは年間100冊の本を読む本の虫の女子がこれから読書をしたい人向けに役に立つ情報を提供できればなと思い、発信しているブログです。

古典 哲学 宗教 新書

【最後は捨てる】123.『『臨済録』を読む』著:有馬頼底

投稿日:11月 3, 2018 更新日:

こんばんわ、トーコです。

今日は、有馬頼底の『『臨済録』を読む』です。

『臨済録』を読む (講談社現代新書)

 

■あらすじ

「臨済録」とは、中国の唐の時代の臨済義玄という僧の言行録です。現在のものは宋時代に編纂されたものです。

「臨済録」はべらんめえ口調で書かれ、非常に臨場感のある書物です。とても読みやすいせいか、日本の仏典にも採用されています。

この作品は著者との対談によってどんどん掘り下げる形式を採っており、非常にとっつきやすいです。

 

■作品を読んで

まず最初に著者の生い立ちからスタートします。

何が驚いたって、著者の経歴。お金持ちの子供に生まれながら、父親が事業に失敗し、両親は離婚。

小学校3年生のときに学習院(平成天皇の遊び相手だったとか)から九州の公立校に編入します。理由は寺で修行を始めるため。それから寺で修行の日々です。今まで世話をされる側だったのが、世話をする側に回ります。

さぞかし辛かったことでしょうね、とインタビュアーが言うと、著者は「いや、好奇心の塊だから…」と返します。

人生好奇心を持って楽しんだ者勝ちとはまさにこのことを言うのだな、とつくづく思います。

寺の修行は本当につらいと思います。これって今でいうところの虐待に近いぞ…、と感じた点も多々あったので。好奇心が逆境に勝るというのは本当にすごい。

この著者と「臨済録」について対談します。結構ガチです。

著者曰く、臨済録を一言で言うと「執着心を捨てよ」だとか。

とはいえ、これは現実には実行が難しいです。なんでかといえば、人間は「求めて」しまうから。

ではどうするのか。著者はこう説きます。

執着してこだわると、逆にすべてが見えなくなる。だから、やはり執着するな、こだわるな、なんです。そしてそのためには、捨てるのです。

なかなか深い。ちなみに著者は「捨てる」というインタビュアーの疑問に対し、意識するのではなく普通にすることと伝えます。「分明ならず」とは意識したとたんに盲目になってしまうという意味です。

生に執着しないことを述べましたが、死に対しても執着しないことも読み進めると明らかになります。ちなみに自殺は「死」に執着している、と著者は言います。

作品の最後で、「生死」に自由に入ったり、出たりする。当たり前の”日常”の中に「生死にこだわらない」という”自由”と定義します。

いつも通りの日常でも日々を確かに生き、自分を救うこと。そんな日常を送ることができるから、こだわらなくもっと自由にできるのだと思いました。

こうして臨済録の教えを自分のものにすることができれば、臨済録を捨てることもできてしまうのだなと感じました。

 

■最後に

臨済録の一部を紹介しました。著者との対談を重ね、少しずつですがゴールに近づきます。

テーマとしてはとても難しく、実行するにはハードルが高いですが、なるほどと思います。

こだわりを捨てることで生死を越えた自由を手にできます。

深いですが、何かを考えさせられます。

 

-古典, 哲学, 宗教, 新書,

執筆者:


comment

関連記事

【普通とかけ離れた話】240.「変愛小説集」編訳:岸本佐知子

こんばんわ、トーコです。 今日は、岸本佐知子編訳の「変愛小説集」です。 変愛小説集 (講談社文庫)   ■あらすじ 愛を極めるとどうなるか。答えは、限りなく変に近づきます。 変な愛ながらも純 …

【基礎基本】410.『「あたりまえ」からはじめなさい』著:千田琢哉

こんばんわ、トーコです。 今日は、千田琢哉の『「あたりまえ」からはじめなさい』です。   ■あらすじ 成功する人の違いって、一体何なのでしょうか。それは、「あたりまえ」を誰よりもきちんとやっ …

no image

【時代の先駆け】323.『社会的共通資本』著:宇沢弘文

こんばんわ、トーコです。 今日は、宇沢弘文の『社会的共通資本』です。 社会的共通資本 (岩波新書)   ■あらすじ ゆたかな経済生活を営み、すぐれた文化を展開し、人間的に魅力ある社会を安定的 …

【働くことについて】379.『私たちはどう働くべきか』著:池上彰

こんばんわ、トーコです。 今日は、池上彰の『私たちはどう働くべきか』です。らしいです。 ■あらすじ 新型コロナウイルスの感染拡大は、私たちの生活にも影響を与えました。これから先の自分の仕事にも不安を覚 …

【きらめく出会い】147.『二十五年後の読書』著:乙川優三郎

こんばんは、トーコです。 今日は、乙川優三郎の『二十五年後の読書』です。 二十五年後の読書   ■あらすじ 響子は1人で生きている。たまに谷郷という作家との逢瀬を重ねてはいるが。 ある日ひょ …