こんばんわ、トーコです。
今日は、頭木弘樹の『絶望読書』です。
■あらすじ
突然ですが、絶望した時に読みたい本は何ですか。辛い時に本なんて、と思う方もいるかもしれませんが、辛いときこそ本を読むのが1番。
心にささる物語による共感によって、自分の物語を書き直すことができます。
■作品を読んで
まずは、これまでに紹介した絶望シリーズです。88.『絶望名人カフカの人生論』
これはカフカというスーパー絶望することに関しては名人についてまとめられています。絶望を通り越してかなり笑えます。
まず、はじめにで絶望との付き合い方を指南しています。
絶望した時って、瞬間ではなく下手をするとずっと続きます。すぐに立ち直ることができることもあるかもしれませんが、そうじゃないこともままあります。
絶望してそのまま倒れたままでいる時期もそらあります。「倒れたままでいるのが得意」といったのが、カフカです。しかも求婚の時だった気が…。
そんな非常事態に陥った時にどうすればいいのかを、非常時じゃないときに読むというのがこの作品のコンセプト。って、なんだか災害やコロナになったらどうしようと備えているようなものですなあ。
まあ、そんな非常事態のための本というのがこの作品の位置付けです。
作品は2部構成でお送りします。第一部は絶望の期間をどう過ごせばいいのか、第二部は絶望した時に寄り添ってくれる映画や本の紹介です。
それでは、見ていきましょう。
まずは、このカフカの引用から。
いいかい、必要な本とは、
苦しくてつらい不幸のように、
自分よりも愛していた人の死のように、
すべての人から引き離されて森に追放されたように、
自殺のように、
ぼくらに作用する本のことだ。
えっと、なんつーネガティブ。まあ、前作でも紹介したとおりのネガティブさなんですが。
というか、自分が幸せな時ってこれは感じない気がする。通り過ぎるというか。今不幸な人はこれ凄く食らいつくと思いますが。
それから、オリヴァー・サックスの物語を引用します。それは、知的障害を持ったレベッカという女の子の話でした。
彼女は知的障害により現実をうまく生きられないですが、物語を通して現実世界を見ることである程度うまく生きられるようになります。
これって、知的障害者に限った話ではない気がします。
物語を通して感情を整理できたり、現実世界で見切れていないこと、理解できないことがかえってわかったこと、トーコにはあります。
さらに言えば、388.『人生で大切なことは、すべて「書店」で買える。』 の著者もそんなこと言ってた気がします。人生に起こることは本と一緒だった、と。
それに、その人の持つ同じ物語をずっと生きているとは限りません。時折「転機」がやってきます。いいことも悪いことも両方来ますね。
絶望的な「転機」が運悪く来てしまった時、無理やりにでも自分の人生の脚本を書き換えないといけないときに1番物語が必要になるのでしょうね。
新しい人生にするために、人生を上書きしたいときに絶望の物語を読む。古典がバッドエンドが多いのは、絶望した時に読まれるからなのではないか。これはTwitter発の苦情らしいのですが。
だからこそ、絶望の時には絶望の書、なのです。
で、絶望した時はまずはとことん絶望した方がいいです。
失恋と一緒です。失恋したらとことん中島みゆきを聞いて落ち込んだら、いつの間にか這い上がってくるみたいなイメージ。
ポイントではないですが、
これは自分だと思える本との出会い、「この本だけが、今の自分の気持ちを理解してくれている」あるいは「今の自分だけが、この本を本当に理解できる」と思える本との出会いが、絶望しているときには、とても救いになります。
共感することで救われる。寄る辺が見つかると人はうれしいものです。
また、絶望によって孤独が襲い掛かって来る場合もあります。これがダブルパンチで来てしまったらと思うと、辛すぎると思う方もいると思います。
絶望に休みがないように、孤独にも休みがありません。ちなみに、UCLAでの研究によると、ストレスが高い状況にさらされたときに、「それを表現する言葉がある」と、ストレスホルモンの放出が抑制され、ストレスが鎮まるそうです。
そんな時に本を読んで、状況にぴったりと寄り添う表現に出会えるだけでも救われますし、ストレスが軽減されます。公式にそんな研究結果があるんか、とちょっと嬉しいですが。
とまあ、このように物語はどんな時でも支えてくれます。しかも本を読んだことのない人でも大丈夫なのだから、まあ驚く。
懐中電灯のように、寄り添ってくれる物語が時には必要です。そんなときが人にはあるんだ、ということを覚えておくといいでしょう。
ここからは、第二部で紹介されている絶望の書を見ていきます。
まずは太宰治の『待つ』という3ページしかない作品を取り上げています。また、すごいニッチな作品が来ましたね…。
どうも著者が中学生の時にひどく感銘を受けた小説で、夏休みの宿題の読書感想文を物語以上の分量で書くも、なぜか古文の先生にえらく気に入られたという作品だったようです。
なぜ中学生の著者が感銘を受けたかと言えば、「いったい、私は、誰を待っているのだろう。はっきりした形のものは何もない。ただ、もやもやしている。けれども、私は待っている。」
これはその人の気の持ちよう次第では変わりそうな文な気がします。けれども、待ちの人間にとっては目からうろこだったと著者は振り返ります。
正体の分からない何かを待っている人にはお勧めな作品です。
他にも、カフカ(『絶望名人カフカ』で取り上げているので割愛)、ドストエフスキー(なんか定番な気がする)、金子みすず、桂米朝、向田邦子、山田太一、あと映画2本が取り上げられています。
金子みすずは、「私と小鳥と鈴と」ではないです。「さびしいとき」という詩を取り上げています。
それにしても、金子みすずの詩って、不思議な静かさが漂っている詩だなと小学生の頃から思ってるんですよね。あれはいったいどこから出てるんだ、と。
おそらく、絶望しているときに読むと心にしみるんだと思います。なんかこれを機に読もうかな、金子みすず。
向田邦子と山田太一はドラマを取り上げています。家族についてのドラマですね。特に山田太一のドラマは絶望からの回復期に見た方がいいと書かれています。
もちろん、さらに読むとさらに気が滅入る本も紹介しています。うん、絶望しているときにさらに追い打ちをかけるような本には出合いたくない…。
最後に繰り返すようですが、絶望によって人生のシナリオを変えないといけないときは、想像力を高めることで、辛い経験を乗り越えることができます。
想像力を高めるためには読書が1番です。自分を責めなくていいんですよ。
■最後に
転機のなかで、時に絶望にあたって人生のシナリオを塗り替えないといけないときもあるかもしれません。
そんな時は、すぐに立ち直ろうとせずに絶望と共に過ごし、本を読んで状態を表す言葉や想像力を養った方がいいです。
絶望に対する心持を教えてくれます。
[…] どうも前作といい(417.『絶望読書』著:頭木弘樹、最近読書の効能についてまとめられた本を読み、紹介する機会が多いな、とつくづく思います。なんででしょう、トーコ自身が無意識にそれを求めているのでしょうね。 […]