こんばんわ、トーコです。
今日は、武田砂鉄の『べつに怒ってない』です。
■あらすじ
武田砂鉄さんと言えば、世の中の出来事を何気ない言葉で鋭く切っていく方でもおなじみですが、このエッセイはそのイメージがひっくり返るかもしれません。
考えすぎのプロから見た日常のエッセイが綴られています。
■作品を読んで
まず、この表紙に描かれているゆるいウサギの絵が超かわいいかつシュールです。キャラグッズができそう。
ですが、著者はこのウサギのイメージとは違う方ですけどね。
とはいえ、このほかの作品と違って、世の中のことをぶった切るエッセイ・コラムというよりは、著者の周りの日常をちょっと考えすぎているエッセイが揃っています。
それはそれで、かなりくすっと笑えてとても楽しいですし、久しぶりに気合の入らなすぎないものを読めたからでしょうか、なおのこと思いました。
それでは、中身に入りましょう。
のっけから、「三角コーナーの現状」というタイトル。へ…、あの三角コーナーですかと言いたくなるタイトル。
しかも、「あ、砂鉄さんもゴミの日が近くなると三角コーナーの掃除するんだー。」という若干親近感の沸きそうなエピソードもあります。
言われてみると、確かに三角コーナーの存在感が薄れているような気がします。100均に売ってなかったんですよね、三角コーナー…。未だに買えないでいます。
砂鉄さんは、どうやら三角コーナーいらずのものを導入することにしたそうです。確かにコンビニでも売ってましたね…。
というか、導入時のコメントが凄いです。
三角コーナーへの嫌悪感が力強く注がれており、これまで散々お世話になってきた三角コーナーへの感謝というものがないのか、いじめってこうやって発生するのではないしょうかと軽めの忠告を漏らしそうになるのだが、いざ導入してみたら、これがものすごく便利なのだ。
謎の深さ…。流石、考えすぎの天才…。読者は静かに察します。ああ、負けたんだな…。
他にも、タイトルを読むだけで『??』となるようなエッセイがまだまだあります。
たとえば、「恋が生まれない瞬間」。生まれないんだ…。
一体どんなエッセイかと言いますと、オジさんの生態系を描いた?もの。オジさんはキレやすいと言いますが、本当のところどうなのか。
1番本性の出る、電車が止まった時のこと。1人のオジさんの後をつけて見ると、喫茶店に入ります。著者も同じことを考え、喫茶店に入ります。
なんとまあ、びっくりなことにそのオジさんと隣になります。そして、メニューを取ろうとすると同じタイミングで手に取ります。
若い男女なら、恋が生まれる瞬間ですが、オジさんとオジさん手前の著者だと恋は生まれない。そんなタイトルの意味に爆笑します。
これがトーコは1番吹き出しました。マスクしててよかった、と心の底から思いました。
他にも、最近の扇風機は進化しすぎていて羽のない扇風機も多い中、子どもはちゃんと羽のある扇風機に向かって「あーあー」叫んでいるのを家電量販店で見ます。
四半世紀も前に自分でやっていたことが懐かしいというより、生々しく思い出すことができるあの夏の日の光景。
なんか、わかります。誰もが1回は通る道。扇風機の羽によって「あーあー」言って、親に「危ないからやめなさい」という光景は、勝手に受け継がれている。不思議です。
「自分に無理をさせる」というエッセイは、きっと人によって感じ方が変わるんだろうなあ、と思って読みました。
何かが終ったあとは、きっと爽快感が待っていると思っても、著者はちがうようで、原稿を書いたらまた次の原稿が待っているので、そんなに爽快感はない。
なんとなく著者のテンションだとそれは納得できますが、トーコは結構そう思う方です。
トーコの場合は、きっと得るものが何かある、という感じですが。ご褒美も与えましょう。
熱血系の経営者の本には、「自分にウソをつくな!」と書いているが、そう粋がっている経営者は面倒な仕事を誰かに押し付けているではないか。偏見だが、筋のいい意見だと著者は思っています。
まあ、あながち間違いではない。現職の会社がそれに近いから。面倒な仕事は、外の外注さんに任せて、自分たちはちがうことに集中な状態だから。
自分を自分で観察しています、ってことは語ってくれるものの、自分にウソをついて気分を高めています、とは語ってくれない。自分で自分を無理やり洗脳するようにして物事を無理矢理前に進めるのって、個々人が明かさないルーティーンなのでは、と踏んでいる。
そうですね。自分にウソをついて気分を高めることって、人によっては薬物と言い出す方もいるかもしれませんし。
まあ、個々人が明かさないルーティーンというのはあたりで、そうしてもらうには仲良くなるか、何か可能性を感じさせるかのどちらかでしょうね。
他にも、見開きページで文量的には短く読みやすいサイズで、ゆるいけど、そんなに考えてしまうか、と言いたくなるようなエッセイが収録されています。
■最後に
分量的に読みやすく、あっという間に読むことができます。
著者の正確でしょうか。考えすぎているんですけど、なんかちょっとくすっと笑える、かなりの脱力系エッセイです。