こんばんわ、トーコです。
今日は、内田洋子の「対岸のヴェネツィア」です。
■あらすじ
著者は、ひょんなことからミラノからヴェネツィアに移り住むことになりました。
世界の多くの人が憧れる街での暮らしは一体全体どんなものなのでしょうかね。
■作品を読んで
ヴェネツィアと言えば観光都市でもありますが、正直住むのには不便なところかもしれません。
トーコもずいぶん前に行きましたが、2月のカーニバル前の超閑散としたシーズンに行ったせいか、まあ寒い、雨ばかりで天気が悪い。
しかも、冠水するので木の板の上を本当にあるかないといけないし、スーパーはガイドブックを見る限りおそらくヴェネツィア本島におそらく1軒だけで、地元の人が結構利用していました。
そんなわけで、冬シーズンに家探しに出かけた著者の情景がトーコの旅行の記憶とラップしました。大変だろうな、家探し。というか、そんな中なんで住もうと思っているんだか、って思ったでしょうな。
1日探しても見つからず途方に暮れながら入った美術館でまさかの情報をもらいます。著者がことのいきさつを話すと、売店の人が奥の部屋にいた職員を連れてきます。
職員さんは、美術館に来る研修生のための住居リストを渡し、3月になったら店子の入れ替えがあるからその時をめがけて連絡してね、と言います。偶然って、すげー。
3月になり、美術館の担当者に連絡したら、ここが1番いいよ、と案内します。
そこは、ヴェネツィア本島から南のジュゼッカ島の家でした。管理人からも言われましたが、確かにサン・マルコの鐘楼がよく見える、それも毎日。
ヴェネツィア本島の景色を見るのって意外と離れた場所からの方がよく見えたりします。google mapでも確かに良く見えるので、実際はもっとでしょうね、楽しそう。
しかも、ヴェネツィア本島と比べても人の歩き方とかがゆったりしているなんて、住むのには最適な場所な気がします。
そんなわけで著者はヴェネツィアに住むことになります。
住み始めた当初、近所の男性が歌のコンサートを開くのに誘われ、ヴェネツィア本島にあるフラーリ教会に向かいます。
それにしても、ヴェネツィア本島は本当に迷路です。フラーリ教会の場所を地図に書き込み、大丈夫でしょ、と安心するだけではだめなのです。
フラーリ教会に行く途中、アーティチョークを売る屋台を見つけ、買い物に来る人を観察していました。
買い物に来ていたのは中年の女性。一家の台所をつかさどっているのでしょう。どうも、ヴェネツィアではアーティチョークを食べる習慣があるらしく、日本でいうところの初ガツオみたいなポジションなのでしょうか。
店にはほかにも野菜や果物が赤、黄、緑など色鮮やかなものが並んでいます。おそらく季節は春なのでしょうか、知らんけど。
確かに、冬に行ったときに冬のどんよりとした曇り空の下、野菜売り場だけはトマトやナス、キュウリ、かぼちゃなど色鮮やか過ぎてびっくりしました。
結局、著者は見事に迷子になり、途方に暮れながらも路地裏を楽しみます。
途中で1軒のレストランに入ります。アーティチョークのリゾットと「本日のおすすめ」をいただきながら。
出てきたアーティチョークのリゾットの描写がすごーくおいしそうです。アーティチョークが一体どんなものか調べましたよ、ええ。
なかなか食べるのが大変な、ざく切りにして、パセリとニンニクで炒める、という屋台のおじさんが言ったメニューの方がシンプルな気がします。
お腹がいっぱいになったところで、フラーリ教会を捜索する。そこで道を知っていそうな人を発見し聞いてみたところ、「そこですけど」と目の前を指しました。
なんだか、こんなシュチュエーションあった気がします、前に旅した時にも。道に迷ってたのに、いつの間にやら到着していたの。
著者は無事に友人のコンサートに間に合うことができました。
教会の中の描写も実際にいるようです。教会のひんやりとした空気感がよく伝わります。コンサートで歌われていた「戦争のレクイエム」も妙に心に残ります。
ジュデッカ島には、国立公文書館の分館があります。たまたまその日は扉が開いていたので、著者は入ってみることにしました。
分館というのは、ここは19世紀以降の公文書が置かれており、それ以前(ヴェネツィア共和国のころからなので、1000年分)は本島にあります。
ちなみに、ヴェネツィアには書棚にして70キロメートルの公文書があるそうです。わー、すげー量。
ここで、資料の電子化プロジェクトが動いているようです。その名も「タイムマシン・ヴェニス」。ヴェネツィアの地元大学とスイスの大学との合同プロジェクトで動いているようです。
なんと、ある住所へのクリックだけで、建物の時代ごとの外観や内部、人々の暮らし、周囲の様子を知ることができるようになるのだとか。
うん、全世界でやってほしいですわ、これ。
ヴェネツィアがなんで選ばれたかというと、1000年もの間きちんと固定資産の情報を更新し続けていたからです。言われてみれば、簿記の始まりがヴェネツィアなのだから、固定資産や不動産登記の情報はきちんとしてますわね。
不動産登記はもはや土地の歴史そのものですからね。
でも、ちゃんと静かで寂しい感じも描写されています。建物のひんやり感は描写されています。
それにしても、ヴェネツィアってひんやりとした建物が多いですね。でも、実際にそうだった気がする。中に入っても寒かったっけ。
■最後に
トーコのヴェネツィアの記憶も投影しまくっている気がしますが、ヴェネツィアで暮らすことを静かに描いています。
本島の向こう側のジュゼッカ島で暮らす著者だからこその絶妙な距離感での暮らしを描いたエッセイです。