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【家族のこと】361.『家族じまい』著:桜木紫乃

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こんばんわ、トーコです。

今日は、桜木紫乃の『家族じまい』です。

 

■あらすじ

ある日突然妹から、「母親がぼけちゃったのよ」と電話が来ます。子どもたちが家を出てゆき、夫婦2人で生きていこうとした矢先の出来事でした。

そこから、介護の問題に少しずつ向き合っていきます。

 

■作品を読んで

まずは、これまで紹介した桜木作品を。

7.『裸の華』100.『砂上』144.『ふたりぐらし』258.『それを愛と呼ばず』

まあ、続々と増えています。おかげさまでです。

正直に言えば、この作品は避けていました。トーコが避けている作品の3大巨頭の1つです。(残り2つは角田光代の『私のなかの彼女』と朝井リョウの『何者』です、余談ですけど。)

これらの作品に共通するのは、あらすじ読むだけで現実をまざまざと見せつけられることが予測され、読むのがしんどくなる気がしてしまうのです。

まあ案の定この作品を読みながら、ちょっとこれはしんどいなと思った部分は読み飛ばしました。

親が老いるという問題はどこの家庭でもあると思います。

幸いトーコ家は本格的な介護が始まる前にぽっくり亡くなった人が多いので、ある意味助かっています。でも実の親が待っているので、ぞっとしてます。あと何年先送りにできるんだろう…。

さて、作品に入りましょう。

智代は美容室のパートに働きに出ていて、息子と娘が家を出てからは啓介という夫と2人で暮らしている。

啓介は公務員で、2,3年おきに北海道内を転々としている生活を送っていた。

家族生活は、妊娠を機に姑との折り合いが悪くなり、啓介が智代の側についたことから、両家の祖父母との関わりが希薄でした。とはいえ、失ったものはなく、むしろかなり気楽だったはずです。

智代は、啓介に円形脱毛症の気があるのか疑惑以外特段平穏な日々を送っていました。

しかし、ある日突然妹の乃理から連絡が来ます。母親がぼけちゃったから様子を見に行ってくれないか、と。智代は戸惑いますが、妹からは夫婦2人だけなんだから、代わりに見に行ってくれ、と言われます。

その電話を受けた智代の心の声です。

実家との付き合いを最小限、あるいはほとんどせずにやってきた。これはそのツケだった。意識的なのかどうかはわからないが、乃理本人もおかしなジャブを打って、実家のことに情の薄い姉の反応を確かめたいのだ。

おそらくですが、介護までこちらでやりたくはないという乃理の心理が見え隠れしているように思います。面倒なことは今まで出てきていない姉にやってほしいと。

とはいえ、智代は父親の理容店を継ぎ、父親が借金を作り、店を泣く泣く畳むことになります。そんなときに、店の常連の啓介から結婚を申し込まれ、駆け落ち同然で飛び込みます。だから、智代は実家に疎かったのです。

これまでの状況をこう描きます。

ふたりで守ってきたのは自分たちが両手を広げて手をつなぎ合っていられる範囲のことで、「家族」という集合体のなかにお互いの親きょうだいは入っていない。

ちょっと先ほどの引用の繰り返しっぽいですが。

正月に啓介と智代は、釧路に住む智代の両親のところに向かいます。啓介が智代に極秘にドライブに誘って、ですが。

父親が何とか母親の介護をしていますが、娘に頼らなくても何とかやっているということを言う自尊心の落ち着く先になっているようです。

帰りの道中で、啓介は56歳の弟が28歳の嫁を貰ったことを話します。当の啓介は、孫を産ませるために孫のような年の子を嫁にするのか、と言いかかったそうだが。

関係のない智代からすると物見遊山のごとく見に行きたい気がしてくるが、啓介からするとどうでもいい虚栄心のために、とあきれているのでしょう。

今日まで啓介が弟の結婚はそれだけ関係のない話でもあり、家族のことに真剣に向かわないといけない智代に啓介の実家は心配ないことを言いたかったのでしょう。

でも、家族の本質ってここなのでしょうね。

ふたりを単位にして始まった家族は、子供を産んで巣立ちを迎え、またふたりに戻る。そして、最後はひとりになって記憶も散り、家族としての役割を終える。人の世は伸びては縮む蛇腹のようだ。

ここから静かに智代の母がひとりではないが、記憶をなくし、逆を言えば誰とも共有できない物語とともに全うすることでしょう。それはそれで幸せだけど。

この後、啓介の弟の嫁、智代の妹乃理、演奏家の紀和、叔母の登美子が登場し、その断片で父親と母親が出てきます。

乃理は同居を試みますが、次第にストレスがたまったせいかアルコールに逃げるようになり、生活が崩壊します。

紀和の演奏するクルーズ船に智代の父親と母親が乗っており、演奏をきいていました。父親は紀和に娘たちには話せないことを話します。

しかしその道中で父親が自動車事故を起こし、母親を託されて紀和も巻き込まれます。幸い、智代と啓介がやってきて母親を引き取り、紀和を送ります。

母親と智代の話が微妙にかみ合っていない中で、紀和はこう思います。

老いた母親を中心にして、この家族はいったいどうなっていくのだろうと想像したところで、助手席の娘がぽつりと言った。

この後の状況は、叔母の登美子の章で明らかになります。

母親は智代と乃理の家を行き来し、父親が退院した後家に戻すも、父親も母親の面倒を見られる状況にありませんでした。

なので、母親は入院し、入院中に施設の空きを探すことを病院のケースワーカーから提案されていました。元気な叔母がいて、智代も内心ほっとしています。

紀和の章で、紀和の両親は離婚していますが、たまに父親と会っています。そんな時に父親が再婚する話を聞かされます。

これで本当の元家族になる。それはまるで仕舞いだと。終い、ではなく仕舞いと書くことでなんか明るさが出てくるのは気のせいでしょうか。

2つとも意味は一緒なのですが、どうしても仕舞いの方がポジティブにとらえられるような気がします。自発的に終えるからなのでしょうね。

ある意味、智代たちとは対照的な家族の終え方ですが。

 

■最後に

家族じまいとは終いではなく、仕舞いなんだろうな、と思います。自発的に終えられるケースばかりではないのでしょうが。

仕舞うのもそれぞれの家族の形があります。両親との関係性はなるべく良好な状態でいるのがいいのだな、と思います。

 

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