こんばんわ、トーコです。
今日は、村上世彰の『いま君に伝えたいお金の話』です。
■あらすじ
2022年度から、高校の家庭科の授業で金融教育が必須になります。それくらいお金の話は若いうちから必要だという認識が高まっています。
そんな状況を知ってか知らずかの、ありがたいくらいにお金についてまとめられています。
■作品を読んで
まずは、著者についての紹介を。
この人どこかで聞いたことがあるなあと思われた方がおおくいらっしゃると思いますが、2000年代にモノ言う株主で一躍有名になり、その後インサイダー取引の疑いで逮捕された村上ファンドの元主です。
初めてニュースで見たときは、へー、と思ったのですが、今思えばこの人の登場によって株主提案と価値向上へ舵を切るようになったのではないか、と思います。
もともと経産省の官僚で、そこでコーポレートガバナンスの普及に努めており、官僚を辞めてファンドを作り自ら実践していたようです。
現在はシンガポール在住で200億の資産をバックに個人投資家として活動しています。さらに村上財団も組織し、長女が財団のトップにいるのだとか。
現在のお顔の写真を見ると、2000年代の表情からだいぶ柔和な感じになっています。一体何の心境の変化があったのでしょうかね。
さて、本題に戻りましょう。
この作品は、子ども向けの「お金の授業」で語られている内容をまとめています。
すごく平易なことばで語られているので、とっつきにくいなあ、と思っている人でも読みやすい作品でもあります。
まず、「はじめに」で子どもがおかねのことについて考えなくてもいいという状況を憂いています。
実際に、時代が大きく変わっているのにおかねのことを考えなくてもいいというのは、トーコ1個人としてはすごく危険な状況な気がします。
著者も投資家だった父親の影響で、小さなころからおかねについてかなり学んでいます。というか、大好きって言ってるんだからある意味正直な人ですわ。
おかねは自分を助けたり、何より生きるための道具でもあります。
そこで、この作品はでは著者曰く、
「お金ってなんだろう」というところから、お金を稼ぐ方法、使い方といった、お金との付き合い方、そしてお金の持つ力について話をします。
ということで、本編に行きます。
第1章で「おかねってなんだろう」ということで、まさかの3機能についてから話します。
その3機能というのは、
- 何かと交換できる
- 価値をはかることができる
- 貯めることができる
とまあ、意外と見落としがちなポイントから解説していきます。基本的におかねは3機能を満たす道具でしかないことです。
しかし日本では、まだまだ「お金=汚いもの」という意識が根強いです。
著者自身も村上ファンドがバッシングされたときに、「日本はこれほどまでにイメージが悪いのか」とかなり違和感を持ったほどです。
ということは、20年近くイメージが全く変わっていません。高校生にやっと金融教育を入れたということは、流石の文科省も危機感を持ったのでしょうね。
そこから、上手におかねと付き合っていく上での前提を語ります。
- 自立して生きていくには、お金は絶対に必要である
- やりたいことをやるには、余分なお金があったほうがいい
- 困ったときに、お金は君を助けてくれる
- 君がお金を持っていれば、人を助けることができる
の4つです。何を当たり前を、ということ勿れ。これらを人は平然と忘れるのですからね。
上手にお金を使えるようになるための著者からのアドバイスはこうです。
「お金に強くなってください」ということ。お金に強くなるには、数字に強くなればいいともいえます。「物事を数字でとらえる」ということです。お金はその最たるもので、常に数字で始まり、数字で終わります。
そうですね、その通りです。本を読み進めると、著者の家で行われている数字のゲームもあります。というか、家庭内でゴチになりますゲームもやってましたよ。
そして、おかねは稼いで貯めて、回して増やす。増えたらまた回す、のサイクルです。たいていの日本人は稼いで貯めて、で止まっていますけど。
第3章、第4章では稼ぎ方について語ります。第3章では、好きな仕事をするという選択肢もあります。
第4章は、会社員も気楽な稼業ではなくなるということから始まります。今後の流れをこういいます。
会社員というのは、これまでのように、同じ年代の人はみんな同じ給与をもらって、よほどのことがない限り毎年給料はみんなと一緒に上がり続ける…という「気楽な稼業」ではもはやありません。日本の会社も欧米のように、能力や成果によって給料を決める方向にシフトしています。
逆に今までが普通じゃなかった、というか冷静に考えればみんな一緒に上がったら成果主義じゃないじゃんという話なんですが…。
この作品が出版されたのは2018年なので当時から見ればまあだいぶ先をいった感じがしますが、コロナ渦によって大手企業を中心に能力や成果で評価する方向に舵を切っています。今後もそういった流れが加速することでしょう。
第5章では、「稼いだお金を貯めて増やす」です。この章では、投資家だった父親の口癖からスタートです。
ひとつは、「お金は寂しがりや」、もう1つは「お金がないと何もできない」。まあ、その通り。
ここで注意してほしいことがあります。「貯める」と「貯め込む」は意味合いが違ってきます。
「貯める」というのは目的を持ってお金を増やすことで、「貯め込む」というのは目的なく、ただただお金を手元に抱え込んでいる状態です。
そこで2割貯金し、お金がお金を産むような仕組みを作ることをアドバイスします。株とかだとリスクがあることもきちんと説明しています。
そんな時に目安となる数値を示しています。
第6章では、「お金を借りて使う」ということについてです。これは正しく理解して付き合わないとたいへんなことになります。借金は返さなければならないものですからね。
最後の第7章は村上ファンド事件を知っているものからすると、意外な展開を見せます。
なんと、今現在村上財団では寄付活動等も行っています。おそらくですが、村上ファンド事件のころは株以外興味はなかったのだと思います。
けれども、クリスチャンの奥さんの影響で少しずつ寄付活動にも興味を持ったのだとか。同時に必要なところにお金が流れていないことも知りました。
著者は、今チャリティのことをこう思っています。
しかし社会貢献の勉強をはじめると、考えが変わりました。国がすべての問題を解決することはできないし、国を頼るのではなく、自分たちでやれることもあるだろう。自分たちにしかできないこともある。そしてその活動を支援していくことは、僕の「日本におけるお金のめぐりを良くする」というミッション達成のためにも欠かせないと思うようになったのです。
(だいぶ中略)…。自分が誰かのために何かできているかもしれないという気持ちを持てる時間は、人生の豊かさの一部になっています。
人生いろいろだなあ、と思います。この人本当にいろいろあったんだなあ。
最後に、著者は寄付自体を推奨しているわけではありません。
自分の生活を整え楽しみ、不測の事態に備えてある程度の貯金をする。ゆとりができたら、人のため、世のために使ってみることを推奨しています。
自分の心が豊かになるようなお金の使い方をすることで、上手にお金に振り回されず、上手に付き合っていく秘訣のようです。
一般論かもしれませんが、これが1番重要なことですからね。
■最後に
お金の使い方について平易な文章で解説しています。かなり大切なことが詰まっています。
金融教育とは、おそらくここからスタートした方がいいとトーコは勝手に思ったりもします。