こんばんわ、トーコです。
今日は、宮本正興+松田素二の『新書アフリカ史』です。
■あらすじ
厚さ3㎝もある新書なんて、聞いたことがありますか。この作品がまさにそうです。
アフリカという日本からだいぶ遠い場所ですが、人類史全体で見れば地球上で1番歴史があります。
民族・文明の興亡をかなり壮大なスケールで描いています。
■作品を読んで
民族・文明の興亡を壮大なスケールで、壮大な厚さで書かれています。この作品は、税抜きで1800円します。なんだ、この値段…。
もう、びっくりな作品です。厚さ、値段にまず仰天です。それも出版されたのが、1997年。それから20年が経過し、増補改訂版が出版されました。それがこの作品です。
そして、この作品のおかげでタピオカの原料はキャッサバということを初めて知りました。ありがとう。
それでは、作品に行きましょう。
冒頭のはじめにで、こう言います。
まず冒頭で、石器や火を使用した原人が東アフリカの大地溝帯に姿を現した一五〇万年前の記述と出会うはずだ。しかしその次に出会うアフリカは、王国の名前だけが列挙された部分を除くと、ヨーロッパ人がアフリカを探検し、やがて植民地支配を始める一九世紀末までタイムスリップしてしまう。つまり「人類発祥の地」から「ヨーロッパ人の到来」までの間の歴史はないのである。歴史の存在を認めない人々の言い分はこうだ。まずアフリカ社会は過去を記録すべき文字を持たない。だから出来事の正確な内容と年代確定は不可能だ。さらにアフリカ社会は進歩しない無変化社会である。
人類が最初に誕生した地のアフリカが、文字を持たなかったせいで歴史がないと見なされ、ヨーロッパ人がやってくるまで歴史がないという扱いを受けるという、結構ヨーロッパ人のエゴ感マックスな文章。
確かに、言われてみればそうかもしれません。というか、そもそもアフリカに住む人に失礼じゃね、と思うのですが。
そうこうしているうちに、1960年代に植民地からの独立機運が高まる中で、アフリカの歴史の面でも、植民地から取り戻そうじゃないかという機運が高まります。
こうして、アフリカ人たちによって、歴史が少しずつ発掘されるようになります。発掘されるところまで、歴史がある…。
さらに、出版してから20年が経過し、増補改訂版が出版されます。21刷まで版を重ねることができたようで、つまり毎年コンスタントに売れ続けていました。
21世紀の現代アフリカ社会のダイナミズムを提示し、アフリカ史を考える思想にかかわること。以上の2点が改訂版でまとめています。
社会が見事に進化しましたね。
さて、肝心の目次です。
- 第Ⅰ部 アフリカと歴史
- 第一章 アフリカ史の舞台
- 第二章 アフリカ文明の曙
- 第Ⅱ部 川世界の歴史形成
- 第三章 コンゴ川世界
- 第四章 ザンベジ・リンポポ川世界
- 第五章 ニジェール川世界
- 第六章 ナイル川世界
- 第Ⅲ部 外世界交渉のダイナミズム
- 第七章 トランス・サハラ交渉史
- 第八章 インド洋交渉史
- 第九章 大西洋交渉史
- 第Ⅳ部 ヨーロッパ近代とアフリカ
- 第一〇章 ヨーロッパの来襲
- 第一一章 植民地支配の方程式
- 第一二章 南アフリカの経験
- 第Ⅴ部 抵抗と独立
- 第一三章 アフリカ人の主体性と抵抗
- 第一四章 パン・アフリカニズムのとナショナリズム
- 第一五章 独立の光と影
- 第Ⅵ部 現代史を生きる
- 第一六章 苦悩と絶望:二〇世紀末のアフリカ
- 第一七章 二一世紀のアフリカ
- 第一八章 アフリカの未来
こうしてみると、厚さ3㎝のなかに、スタートは約2000万年前からです。壮大すぎます…。
第Ⅰ部は、原人からホモ・サピエンスに発展し、アフリカの各地域で地域形成や各地との交流の歴史がちゃんとあります。
当然ですが、農耕や鉄器の制作など、4大文明のようなことはちゃんとありました。
第Ⅰ部は紀元前から1000年くらいを描いています。とはいえ、西洋人たちの思い込みでいろいろと歴史から抹消されている部分がいささか多い気がしますが。
第Ⅱ部は、ナイル川、ニジェール川、ザイール川、ザンベジ・リンポポ川というアフリカを代表する五大河川の流域に注目し、それぞれに固有の地域形成の論理と特質の説明しています。
川があれば水がある、ということは人は飲み水を確保でき、農耕だってできます。そして、川を行き来すれば上流域と下流域で交流もできます。
大体、紀元前から1800年代くらいを描いています。かなり長いスパンを描いています。
アフリカ人たちの手で、独自の地域ネットワークと複合文化を形成しながら発展した歴史がまとめられています。
第Ⅲ部は、主に様々な世界との海を越えた交易等の歴史を描いています。
交易だけでなく、イスラム教やキリスト教などの宗教の伝来、イスラム教国家が生まれたり。
中世において、サハラ砂漠より北にイスラム教を中心とした国家が誕生したことは、確かに高校の世界史でやったなあ。王朝の変遷の年表を見ると混乱しながら覚えたなあ、と思い出します。
それから、インド洋、つまりアラブ世界との交易も行われました。まあ、奴隷貿易の舞台でもあったので、いい歴史ばかりとは言えませんが。
15世紀になると、ポルトガルなどの西洋ヨーロッパによる大航海時代が始まります。インドまでの中継地だけでなく、奴隷貿易を含めた三角貿易やヨーロッパ産の布や工芸品を奴隷や、砂糖、香辛料、金などに交換されます。
これによって、ヨーロッパ産の安価な金属製品や織物のために地元産業や工芸が衰退し、技術は停滞しました。この期間にアフリカの低開発化が進み、人種差別が深く根を下ろしました。
ヨーロッパ人が来る前のアフリカは大部分の地域で伝統的な自給自足生活でした。しかし、ヨーロッパ人が来たあとは、技術の開発や機械の利用、工業生産の面で後れを取ることになってしまいました。
なんだか、日本でもありますね。地方の産業が衰退する話。うーやだっすね、歴史は形を変え、繰り返される。
とはいえ、なんだかこの歴史観もヨーロッパ人側から押し付けられたものなのかもしれないですね。
第Ⅳ部は、ヨーロッパ人の来襲を主に描いています。
15世紀末からヨーロッパ人が来襲し、やがて奴隷としてアフリカ人がヨーロッパに連れていかれ、労働に従事していきます。
ヨーロッパ人たちは、自由と平等を求めていく一方で、奴隷を使うことを正当化するために、アフリカ人を文明から徹底的に遠ざけるような言説を意図的に作り上げます。こうして、支配を正当化していきます。
後世から見れば、そんなこと誤りなんですけどね。まあ、とんでもない話です。
でも、これ江戸時代の日本でもあった話だったような。これはえた・ひにんと一緒だよね、しかも時期が一緒。
こうしてみると、なんやかんやで江戸時代ってすごいんだなあ。脱線してきたから戻りますか。
1880年から1910年の30年の間に、アフリカはヨーロッパ列強によってどんどん征服されます。おそらく、この時点で独立していた国は数えるほどしかなかったはず。
第Ⅴ部は、抵抗と独立です。まあ、中身はそのまんま、アフリカ人たちが自分たちの国を持つまでの戦いの歴史です。
しかし、1960年代に独立するも、1970年代には次第に経済状態が悪化します。
経済開発によって植民地経済からの脱却を進めようとするも、ここに来て政変などが発生し、経済状態が悪くなります。
第Ⅵ部は、現代史を生きるです。やっと現代に近づいてきました。20世紀末から現在を描いています。
ヨーロッパ人から劣った存在呼ばわりされるも無事に独立するも、独立してからも更なる紆余曲折がありました。
特にカギとなるのは、紛争解決と統一言語でしょうか。まあ、統一言語にこだわる必要はないような気がしますけど。
それにしても、ずいぶん長かった…。700ページって、超大作ですけど。まあ、700ぺージのなかに2000万年前からの歴史が詰まってるのか…。
■最後に
厚さ3㎝、ページでいうところ700ページのなかには、2000万年前からの歴史が書かれています。これでコンパクトになります。
壮大でただただ感心するしかないのですが、道具を操り、独自の地域間ネットワークもあります。
一方でヨーロッパ人の来襲によってそれまであったものが破壊されたこともあります。
アフリカ史を知りたい方にはお勧めの作品です。