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【初恋の行方】456.『天に焦がれて』著:パオロ・ジョルダーノ

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こんばんは、トーコです。

今日は、パオロ・ジョルダーノの『天に焦がれて』です。

 

■あらすじ

夏になるとトリノから祖母のいるスペツィアーレという南部の街で過ごす14歳のテレーザ。

そんな時、祖母の家のプールに3人の少年たちが忍び込む。テレーザはそのうちのベルンという少年に恋をします…。

 

■作品を読んで

まずは、著者のパオロ・ジョルダーノについて。

この方はいち早く『コロナ時代の僕ら』という作品を出版し、なんとなくこれで有名になった感はあるのですが、本当はイタリアで早くから評価されていた科学のわかる作家です。素粒子物理学で博士号を持っているのだとか。

この作品は、著者にとっての4作目の長編小説ですが、1作目が余りにも売れすぎてその時の評価が離れずにいたが、この作品はやっとそこから離れることができたとか。

それでは、作品に行きましょう。

14歳のテレーザは、南部のスペツィアーレという街に父親と祖母の家にバカンスに行きます。ある日、祖母の家のプールに侵入する3人の少年たちをみます。

少年たちは、ニコラ、トンマーゾ、ベルンといい、テレーザの1つ年上で、近所のマッセリアに住んでいました。

テレーザはベルンに恋します。ベルンも同様でした。やがて、テレーザも3人の住むマッセリアに行くようになり、チェーザレとフロリアーナとも知り合います。

このお宅はかなり複雑な事情を抱えており、チェーザレとフロリアーナの実子はニコラ、ベルンはチェーザレの実の妹の子、トンマーゾの父は刑務所に入っています。

テレーザが17歳、ベルンが18歳の時には完全に2人は恋人同士になっています。まあ、ませたことしてますね(笑)。

しかし、テレーザがトリノに戻った後、ベルンは他の女の子を妊娠させるという事件を起こします。失意のどん底のテレーザは、夏休みに2度とスペツィアーレに行かないと言います。

それから月日が経ち、30歳を超えたテレーザとトンマーゾの2人の場面になります。なんともいえない微妙な距離感をこう描きます。

わたしはまだ彼(トンマーゾ)との関係を友人とみなしていたのか、その正反対とみなしたのかわからずにいた。いずれにしてもわたしたちふたりが人生の長い時間をーそれも恐らくは一番大切な時間をーともに過ごしたのは確かであり、多くの思い出を共有しているという事実も、本人たちが認めたであろう以上にふたりの距離を縮め、似た者同士としていた。

この場面でテレーザは、トンマーゾに18歳の時のヴィオラリベラの妊娠事件について、真相を聞きます。

この2人は序盤の86ページの段階では、彼らの10代を回想し、ヴィオラリベラの妊娠事件の真相を聞きます。まさかの3人の秘密だったということに驚きます。その後、チェーザレとフロリアーナはマッセリアから引っ越しし、売りに出されることになります。

第2部は、テレーザの祖母が死んだ23歳の時からスタートします。祖母の葬式のために久しぶりにスペツィアーレに行きます。

そこで、ベルンに再会します。ベルンはなんと無人のマッセリアに住んでいました。しかも、ダンコとその恋人のジュリアーナ、トンマーゾとその恋人のコリンもいました。

5人は共同体として、ダンコの指導の元、何もしない農業を実践していました。テレーザは葬式ののち、5人の共同体に住み着くことになります。

何とか暮らしてはいましたが、トンマーゾとコリンの間に子供が生まれることになり、コリンは共同体から出ていきたいと言い出します。

最終的に残ったのは、ベルンとテレーザだけになります。しかし、子どもがほしいと不妊治療をしますが、あらゆる治療法を試しても失敗します。

テレーザはこの状況がいやになり、ベルンにあたり、けんかをします。ここで初めて、テレーザからベルンに別れを告げます。ここにきて立場が逆転します。

しかも、テレーザが家に帰らずにいたら、ベルンが出ていくことになっていました。トンマーゾの元にいるようです。テレーザはトリノに帰らず、マッセリアに残ります。

それから1年後、マッセリアに警察がやってきます。なんとベルンはニコラを殺した殺人犯となっていました。

そこでまた、テレーザとトンマーゾの2人の場面に戻されます。なんつー、展開よ…。いいとこなのに。

トンマーゾが知りうる限りの状況を話します。ニコラは警察官となったが、地味にマッセリアやベルン、トンマーゾを監視していたこと。

マッセリアの電気を供給していた太陽光発電を壊したのはニコラだったこと…。さらに、テレーザと別れた後、ベルンはダンコの元に戻り、オリーブの木の伐採反対運動に参加し、そこで非番のはずのニコラと同僚が運動を止めにきて、結果的に殺すころになってしまったこと。

また、トンマーゾはコリンとの関係をセックス抜きなら愛を受け入れられたと言います。それは、ベルンとテレーザのように幸せで完璧な相思相愛を目のあたりにしていたからでしょう。

ベルンとテレーザの関係は、ニコラとトンマーゾに確実に影響を与えていました。2人の関係は周囲から見て、他の2人から見れば羨ましいほど完璧だったから。というか、チェーザレにも見られていたことも判明します。

それはそれで、気持ち悪い部分になるかもしれません。まあ、そういう描き方ではないので、気持ち悪さを感じさせませんが。

テレーザと回想していた当時、トンマーゾは見事に酒におぼれていましたが。

第三部はロフトへトリルという名前ですが、アイスランドの都市の名前です。一体何だろう、と思いながら読んだら解決しました。

ベルンを追い、テレーザはアイスランドに行きます。殺人犯になった後、ベルンはダンコの恋人のジュリアーナと共にアイスランドに行ったのでした。

そこで、ベルンは誰も入ることのできない洞窟に閉じこもっていました。まるで自死を選んだかのように。そこで永遠の別れになります。

それから、テレーザはチェーザレに遭います。ベルンの状況を知り、葬式をしようといいますが、テレーザは踏ん切りがつきません。

チェーザレに会った直後にトンマーゾに会いに行きます。封印していたベルンの妊娠事件を知るために。ここまでくれば、一体どの場面につながって来るかわかってきます。トーコも試しに戻ってみました。あー、なるほど、となります。

エピローグの章に、テレーザの祖母の言葉が出てきます。

他人の人生はいつまで経ってもわからないことだらけと言われたことがあった。

(中略)”きりがないのよ、テレーザ。むしろ、なんにも知らないほうがよかったってこともあるわ”

祖母の言葉は本当かもしれません。出会ってから約20年近く、1人の男に翻弄されて生きるのですから。

その一方で、テレーザは冷めたものを持っています。それは、ひとの真の姿なんてものは、それが誰であれ、そもそも存在しないのだから。

そう信じていたからこそ、このラブストーリーは成り立っていたのかもしれない。

訳者あとがきで、この物語は「思春期の夏に出会い、ひと目で恋に落ちた男女の神話のような愛の行方」のほか、2,3示しています。

トーコは「神話のような愛」ではないと思っています。どちらかというと、破滅の要素もある気がしてなりません。美談だけでは済まされない何かが。

 

■最後に

思春期に出会った男女の、神話というよりも破滅に行きそうな恋の行方を描いています。

純度の高い純粋さによって、周囲の人間はいろいろと巻き込まれます。恋焦がれた少女は幸せだったのでしょうか。

 

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