ある読書好きの女子が綴るブック記録

このサイトは年間100冊の本を読む本の虫の女子がこれから読書をしたい人向けに役に立つ情報を提供できればなと思い、発信しているブログです。

小説 青春

【元気の出る本】40.『カラフル』著:森絵都

投稿日:5月 6, 2017 更新日:

こんばんわ、トーコです。

今日は森絵都の『カラフル』です。

カラフル (文春文庫)

 

■あらすじ

ぼくの魂は運よく(?)再チャレンジに当選してしまい、自殺を図った少年の体にホームステイすることになった。

その少年の名は小林真といい、しばらくの間小林真として生き、家族のこと、学校のことに向き合う羽目になる。

そのおかげか、少しずつ人生に対し気づきが出てくる。

 

■作品を読んで

初めて読んだときが約10年前だと思います。物語の結末はよく覚えていました。

結末はネタばれになってしまうので言えませんが…。

読み終わった後すごくすっとして、元気が出たことはよく覚えています。

はて、物語の中盤でこんな場面がありました。

きれいなものがほしいし、見たい。けれどその一方でこれを壊したくなる、残酷なまでに。

でも主人公のぼくがいう。みんな頭おかしくて、狂っている。

この世があまりにもカラフルだから、ぼくらは迷うんだ。

この年代の子たちって危ういよ、でも、わかるよ、と10年前高校生だった当時は思ったような気がします。

でもよく考えると、人ってどんな年齢になっても今あるものをあえて壊したくなる瞬間があると思います。

特に順調に動いているときほどそう思います。トーコの謎の経験からの感想ですけど。

だからよく考えずに仕事をやめたり、人を傷つけたり、最悪犯罪を犯したり…、実際にこういう人がいるかもしれません。

多くの人は、個人の感情で壊すだなんてたまったものではない、と思うかもしれません。

でも現実にはそんな場面がたくさんあって、実行している方もいます。

じぶんの色がわからなくなるときだってあります。

私たちはそんな危うい感覚を心に秘めながら、それを出さぬよう必死にかくして生きているんだなと思ってしまいます。

それは、幽霊になり小林真として生きていく中で、幽霊を通して私たちに多くの気づきをもたらします。

この作品のターゲット層はおそらく中高生ですが、正直に言えば大人になってから読んでも得られるものはたくさんあります。

「ぼく」はどんどん人生にきちんと向かい合おうとします。それは、読者も一緒です。

それにしても、物語の最後でびっくりしますよ。きっと読み終わった後、話のオチはそこか、とツッコミたくなるでしょう。

 

■最後に

私たちは「ぼく」の言葉を借りれば、極彩色の渦の中で生きています。

私たちも帰る場所があって、この世界をしぶとく生きていきます。

生きていくのは困難が多いですが、悪くないなと思わせてくれる本です。

 

-小説, , 青春

執筆者:


comment

関連記事

【一体何者?】380.『シンクタンクとは何か』著:船橋洋一

こんばんわ、トーコです。 今日は、船橋洋一の『シンクタンクとは何か』です。   ■あらすじ 日本には独立系のシンクタンクがほぼない。ひとえに、政策コミュニティのなさもある。 ですが、今後政策 …

【禁断の恋】213.『ゆらやみ』著:あさのあつこ

こんばんわ、トーコです。 今日は、あさのあつこの『ゆらやみ』です。 ゆらやみ (新潮文庫)   ■あらすじ 女人禁制の間歩と呼ばれる石見銀山の坑道で生まれたお登枝は、育ての親とともに置屋で生 …

【どこに行くか分からない】244.『逃亡者』著:中村文則

こんばんわ、トーコです。 今日は、中村文則の『逃亡者』です。 逃亡者   ■あらすじ ジャーナリストの男は、第二次世界大戦下で”悪魔の楽器”と呼ばれたトランペットを入手し、それを持って逃亡し …

no image

【知識を得る・歴史編】5.『最後の努力』 著:塩野七生

こんばんわ、ト―コです。 今日は、塩野七生作のローマ人の物語の1つ『最後の努力』です。 この本は上、中、下の3つにわかれています。   ■あらすじ 古代ローマは紀元前700年から400年まで …

【生きることと料理】302.『料理と利他』著土井善晴 中島岳志

こんばんわ、トーコです。 今日は、土井善晴と中島岳志の『料理と利他』です。 料理と利他   ■あらすじ きっかけは、「利他プロジェクト」が発足した時にさかのぼる。「利他」の本質は、ひょっとし …