こんばんわ、トーコです。
今回は、ヤマザキマリの『仕事にしばられない生き方』です。
■あらすじ
チリ紙交換から、絵描き、大学教師、テレビレポーター、普通の勤め人など。漫画家になるまでたくさんの職業を経験しました。
好きだからどこまで頑張ってもいいのか。好きなことだからこそ苦しんだ経験を持つ著者の仕事とお金の話です。
■作品を読んで
のっけからまた母リョウコさんの登場です。リョウコさんについては、250.「ヴィオラ母さん」で書かれていますので、よかったらどうぞ。
著者の母、つまりあのリョウコさんです。お金や仕事にまつわる話がとんでもないのは火を見るよりも明らかです。
まず、「将来絵描きになりたい」といった幼い著者にフランダースの犬の絵本を見せて、「絵描きになるというのは、下手をすると野垂れ死にすることよ。それでもやりたい?」ということを真剣に突きつけるのです。
音楽をやり続けたあなたが言いますか、と著者は突っ込みます。けど、それは好きなことをし続けてきたリョウコさんだからこそいえる言葉。
頭ごなしに否定するのではなく、つらい運命が待っているかもしれないけど、どうしてもやらずにはいられない人がいる、そして意味があることを伝えたかったのかもしれません。
著者の中では、好きなことと、お金になることを両立する覚悟はあるのか、ということを人生を通じて考え続けているそうです。
高校生になって、初めてバイトをします。チリ紙交換です。
朝から晩まで働いて得られたお金は500円。しかも移動して回収するという体力的につらいので、長く働くことはできなかった。
それでも著者にとっては、いい物差しになったようです。500円あればくいっぱぐれることはない。仕事で行き詰まったときの最後の砦としての判断基準を得たようです。
トーコにもそんなアルバイト経験があります。正直なことを言えば、これよりつらい仕事はないし、全国チェーンなので全国津々浦々で仕事にありつける。振り出しに戻らないといけないときはそれでもいいのかもしれない、と。
それから、著者は17歳からフィレンツェで油絵の勉強をします。フィレンツェから帰国する前は壮絶です。
恋人が作った借金返済に追われ、しかもその最中に子供を身ごもります。
子供を出産してから考えが変わります。子供の母親として生きなければならないのですから。
そこで、油絵で生きるには難しいので、漫画をやりたいと思ったことはないが、日本に帰るには漫画のほうが可能性があるのではないか、と。
その読みは大正解で、無事に漫画雑誌の新人賞に応募し、見事に入選し、賞金を獲得することができました。賞金は日本帰国のためのチケットになったそうです。
潮目が変わる瞬間がある。それはこれ以上同じことを続けても、どうにもならない。それをいやでもわかる瞬間がある。
確かに、そんな瞬間がありました。同じことを続けても、もうだめだって思った瞬間が。就職を考えていた時にあったな。
そして、その時選んだことを今も続けているっていう、不思議な話。これは、トーコの話。
最後は、テルマエ・ロマエがヒットしていたころの話。
ちょうどそのころ、著者一家はシカゴにいました。シカゴは世界中からエリートが集まる街で、夫も大学で教鞭をとっていました。著者もやっとやりたいことができるととんでもない仕事量をこなしていました。息子は高校で出される宿題の量の多さと、学校の順番は低空飛行になってしまい、家族で苦しんでいました。
著者の過労状態を解消させるまでが大変な戦いだったようです。というか、著者なのに映画化や試写会のこと等作者を置き去りに進んでいました。
さらにマネージャーを置くことにしたようです。マネージャーさんが窓口に立って仕事をうまく捌いてくれれば、言われるがまま引き受けていた状況を改善するだろう、と。事実、それは大正解でした。
客観的に状況を見てくれる助言者のおかげで、やっと過労状態から抜け出せることができたのです。
このように、仕事の抱えすぎも問題なのです。
体からSOSを出しても休むことができず、無理をする生活がいつまでもできないということはわかっていても、しまいには体を壊してしまいました。人気漫画家でもこうなります。
最後にお金のこと。ここでも母リョウコさんのエピソードを。カツラを買わされた時も、「わかった、騙されたことにしておくわ」と。
もともとお金なんてなくてナンボと思っていたようです。だから、お金の使い方なんて本人の心の持ちようで変わるもの。
お金を生きた使い方にするか、しないかはあなた次第。
お金はもともとどんなものでも等価交換できるようにするために開発されました。
お金を得るために仕事を得、はてには命を差し出していた。そんなことがないように考えないといけないですね。
すごく説得力がある。わからなくなったら、自分を見つめる時間を取り戻すこと。これ大事。
■最後に
幼き頃見た母の姿から、チリ紙交換から絵描きなどの様々な仕事、漫画家になり売れる一方の様々なトラブルから立ち直るまで。
著者をめぐる様々な出来事から得た仕事とお金の話です。
潮目が変わる瞬間があるし、好きだからと言って体を壊してまで仕事をするものではないのです。
すごく説得力があります。